2-2
からんからんからん。
いつもより激しくドアベルが来訪者を知らせる。
「ここどこ!」
子どもだ。まだ幼稚園にあがったかあがらないかくらいの。幼い少女だった。
今まで寒いところにいたのだろう、鼻の頭と頬っぺたが林檎のように真っ赤に染まっていた。もこもことしたダウンコート、マフラーの先についたぽんぽんとスカートが、きょろきょろと辺りを見回すたびに揺れる。色素が少し薄い緩くウェーブがかかった髪を、頭の高い位置に二つに結わえていた。
「ようこそいらっしゃいました。ここは想い出図書館と言って、世界中の人の記憶が本の形になって置いてある所です」
頼鷹は子どものほうへ歩み寄ると、しゃがみこんで目線を合わせ、少し易しい言葉で説明する。子どもの表情が固まった。警戒されているのだろうか。
「よ……」
「よ、ですか?」
「頼坊……?頼坊なのか?」
今度は頼鷹が固まる番だった。
その呼び名はつい最近、頼鷹さんのむかしばなしで耳にしたな、と汐世が勘づく。
「…………その呼び名を、どこで?」
「やっぱり!大きくなったなあ。けど、子どもの頃と全然変わんないんだな。ちゃんと面影がある」
子どもは質問に答えず破顔して、無遠慮にも頼鷹の頬をぺたぺたと触りまくっている。
「ええと……」
「おれだよ、
頼鷹が困惑しながらも笑みを浮かべると、子どもはようやく質問に対する答えを口にした。その答えに頼鷹が緊張したのが背中からも伝わる。
「十一……?その名は存じておりますが……失礼ですが、お嬢さんは」
「だからあ、おれが十一なんだって!いやあ、それがね、信じらんねえかもしれないが、これが俗に言う生まれ変わりってやつみたいでなあ。んん?ところで何で頼坊は見た感じ三十路前ぐらいなんだ?今年は平成三十年らしいから、生きてりゃとっくに爺さんになってるはず……こりゃ、如何いうこった?」
頼鷹が再び固まり、十一の生まれ変わりだという子どもは腕組みして唸っている。汐世はこの収集がつかない状況をただ静観していた。
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