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想い出図書館への行きかたはこうだ。
道なりに千歩進み、角に行き当たったら右と左へ交互に四度ずつ曲がる。その手順どおり進むと鳥居だったり門だったり、何かしらの境界が現れ、そのまま進むと想い出図書館のある世界へ行けるのだという。
上手くいかなかったら図書館へ行きたいと強く念じながらやり直せば行けるかもしれない、とサイトの管理人は無味乾燥な文面で告げていた。「図書館は人を選ぶので、必ずしも行けるとは限らない」、「好奇心だけで行こうとは思わないでほしい」、「どうしても想い出したい記憶がある、そんな人だけが図書館へ行ける」……どれもその管理人がメールに記載していたものだ。
いかにも呪術的でオカルトみがあってぞくぞくする。
ネットを介して拍子抜けするほど簡単に行く方法を聞けてしまったし、こんなので本当に辿り着けるとは露程にも思っていないが、やってみたことをこうやって世に配信するだけでも面白いとおれは思ったのだ。それで本当に行くことができれば儲けものだ。
唯史がその手順を実行しているのを撮影しながら後ろから追ってゆく。今のシーンはあきらかにダレるので、あとで編集で早送りにしようと考えつつ進んだ。
「おお、団地の廃墟が見えてきましたよ。ここ、入ってみてもいいんでしょうか」
唯史が許可を乞うように視線をおれへ向ける。おれは「そのまま進んでくれ」と念をこめ頷いた。唯史がそれを受け、敷地内へ進んでいく。おれはそれを逃さずカメラで追った。
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