第4話『これまでの情報をまとめてみた』

 赤髪ちゃんから様々な話を聞いた後、俺は豪華な大浴場で女子風呂覗けないか調べつつ入浴を済ませた。


 残念ながら男子風呂と女子風呂はどこも繋がっておらず、その間の壁も向こうの声が一切聞こえないくらい厚いので、ちょっと胸揉ませてよ〜、きゃっ、ちょっと〜どこ触ってるのよ〜と言ったキャッキャウフフな尊いやり取りを聞くことすらできない。


 くそっ……誰か俺に……俺に壁の向こうを透視する魔法を教えてくれ……頼むからさああああああああああああ!!!


 まあ叫んだところでそんな願いは叶うわけもない。己の無力さを痛感しながらも、いつか透視魔法を習得できる日を信じて、明日に向けて就寝することにしたのだが……。


『ベッドはふかふかで、寝心地は良いけど眠れるわけないよな』


 寝ようにも、色々考えることが多過ぎて眠れない……。


 なので、今日召喚されてから起きた出来事や赤髪ちゃんから聞いたこと等を、今一度整理してみよう。


 もあるしな。


 まず、この魔王城にいる人……赤髪ちゃんは、そのあだ名の通り、赤髪でロングヘアーの美女だ。最初に見たときは、黒いローブを被ってたから分からなかったが、どうやら、ここではメイドという役職らしい。今は掛けてないが絶対メガネ似合いそう。


『メガネ掛けてください! って土下座してでも懇願してこようかな』


 なんて冗談だが、メガネは掛けてほしい、いや、マジで。


 あと、あんなに真面目な性格なのに、何でこの魔王城にいるか……それは赤髪ちゃんが話してくれたが、かつて、正義教団という王国と対立し、絶体絶命のピンチに、あの魔王が助けに来て、この魔王城に匿ってもらってるらしい。


 次にゴールドちゃん、シルバーちゃん、ブロンズちゃんという超絶可愛い3姉妹についてだが……赤髪ちゃんと同じく、かつては家族と正義教団の王国に住んでいたらしいが、何らかの理由があって、逃げてきたらしい。その理由までは話してくれなかった。


 赤髪ちゃんもこの話をする時に、悲しそうな顔をしていたし、きっと悲しい過去があったんだろうな。


 気にならなかったと言えば嘘になるが、無理強いしても仕方ない。それに俺が聞いても解決できるわけもないし。


 次にあおいちゃん……については、いつか自分の事は直接話してくれるとのことで、赤髪ちゃんからは少しだけしか情報を貰わなかった。


 最後に魔王だが……赤髪ちゃんも魔王の詳しい経歴が分からず、前に魔王に聞いてみたことがあったが、『そのうち教えるねー』と話を強制的に終わらせたようだ。詮索してほしくないと暗に伝えているということらしい。


 あの魔王は普段はふざけたジジイだが、謎が多い。


 現状魔王について、判明していることは魔王が正義教団にとって脅威とされていること。脅威であるということは魔王には、とんでもない力があるという事だ。やっぱり魔王なだけあって、その名に相応しい強さを持っているようだ。


 一方で、魔王も正義教団を嫌っている。だが、何故か未だに正義教団を襲撃しには行ってないらしい。ということは……現状では、襲撃できない理由があるかもしれない。


 いや、もしくはもう一生正義教団とは関わらないようにしてる可能性もある? 一応赤髪ちゃん達の故郷でもあるし、どこか遠慮してるのかもな。


 俺が今のところこの世界で会った人物については以上だ。次はこの魔王城についてだが、ここに召喚されてから、俺はやはりここに来たことがある……という既視感が止まらない。記憶には無いはずだが、懐かしさはある。


 それだけだ。


 ただ単に前に夢で似たようなのを見たことがあるとかかもしれないがな。


 とりあえずこの件は保留にしよう。これ以上考えてもわからん。


 他に気になる事といえば、この魔王城でことか……。


 具体的にいつ視線を感じたかというと、まず、赤髪ちゃんに魔王城を案内をしてもらった時から、俺が自分の部屋に入るときまで、次に、夕飯食べおわってから入浴するまで、更にそのあと入浴が終わってから、部屋に戻るまでと、実は結構な頻度で視線を感じていた。

 

 もしかして、あの魔王が魔法か何かで監視してる?


 もしくは複数人で監視してる可能性もあるが、そのわりに途切れ途切れなのは変だ。


 複数人ならもっと安定して監視し続ける事ができるはず。


 ……ということは、魔王の決定とかではなく誰かが1人で個人的に俺を監視してる可能性が高いということか……。


 一体誰がそんなことを……? あの6人の中の誰かが犯人なのだろうか?


『……はぁ』


 分からないことばかりだ。いくら頭を回しても分からないものは分からない。これも保留にするしかなさそうだ。


 さて、情報の整理は以上かな。


 これまでの情報をまとめてみると――


 赤髪ちゃんは赤髪ロングヘアーの美女で役職はメイド。


 ゴールドちゃんはかわいい金髪ツインテールで役職はコック。そしてかわいい抱きしめたい。


 シルバーちゃんはかわいい銀髪ショートヘアーで役職はゴールドちゃんと同じくコックで、そして照れ屋さん。かわいい、めちゃくちゃかわいい。


 ブロンズちゃんは、かわいい銅髪ストレートパーマ。役職はこちらも同じくコック。かわいい。ロリなのに、どこか大人の色気がある。ギャルっぽいかも。


 この3姉妹は3つ子で、ゴールドちゃん、シルバーちゃん、ブロンズちゃんの順で同じ日に生まれたらしい。

 

 あおいちゃんは、青髪ストレートヘアで役職はメイド。あんまり喋らなかったけど、美少女なのは確か。それ以外は知らない。さっきも言ったが、あおいちゃんの事は、本人から直接話してくれるそうだ。一体どんな娘なんだろうな……。


 で、最後に魔王だが、白髪の悪人面でめちゃくちゃうざい。俺を守ってくれると優しい眼差しで言ってくれたが、それを差し引いてもうざい。テンション高過ぎる、そしてうざい。そのせいで、赤髪ちゃんによく怒られ、魔王としての威厳も皆無である。マジうざい、あとウインクやめてほしい。とても悪人面の魔王とは思えない振る舞いだ。もし勇者がこんな魔王を見たら、一瞬で興ざめするだろうな。少なくとも俺はその場で勇者を辞めそうだ。でも魔王なだけあってめっちゃ強い。とてもそうは見えねえが……。


 以上がこの世界で俺が現状、把握してる情報の全てだ。


『……』


 なんか頭を動かしてたら眠くなってきたな。


 俺は手を伸ばしながら、大きなあくびをした。

 

 まあ、この世界の事は明日から少しずつ調べていこう。


 俺は考えるのを放棄して、布団の温もりを感じつつ、そのまま夢の世界へ誘われた。


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