Prologue・2
2040年 5月17日 とあるプレイヤー
一人の青年が真っ暗な空間に現れた。
彼は初回の抽選に当選することができた幸運な日本人である。
「ここは?まさかキャラクリは無しでリアルのまま進んだりしないよな?」
キョロキョロと暗い空間を見回す。
数秒後に目の前に半透明のモニターが現れる。
それと同時にモニターの傍らにこの世のものとは思えないほど美しい女性が現れた。
「あんたがチュートリアルキャラってことでいいのね?」
「その感じだと詳しい説明は不要かしらね?」
「あんた応答可能なのか。AIでも組み込まれてんのか?」
「いえ、私はゼノンワルツの社員よ。あなたは最初のプレイヤーだからね。ト・ク・ベ・ツ♡」
「へぇ、社員。まぁ、今の技術ならプレイヤーに介入することもできるか……ってか俺が一番乗りなんだ」
「そうなのよ。でも別におかしいことじゃないじゃない?ゲームが配達されたのは世界中で全く同じ時間なのだから時差を考慮したら日本が時間的には一番ちょうどいいもの」
「そこ、おかしくないか?世界中で全く同じ時間に配達されるとかどんなカラクリなわけ?まさか家の前で時間まで待機してるわけじゃああるまいし」
「そのまさか……だったりしてね」
「こっわ」
「それよりこんな話してないでさっさとキャラクリ始めちゃいなさいな」
「話広げたのそっちじゃん「うるさい」ハイハイ、ところどころ解説はしてくれよ?」
「それは当然よ。そのためにいるんだもの」
青年はモニターに向き直し、ゲームを開始するための準備を進める。
モニターにある項目は上から
キャラクターネーム
性別
種族
外見
職業(メイン・サブ)
初期装備
初期技能
初期パラメータ
初期所有アイテム
初期所有マニル(通貨)の9つだった。
通常のRPGには見覚えのない項目があり、多少理解に時間はかかったが、開いていくととても興味深い項目だった。
キャラクターネーム、性別、種族、外見、職業は今までのRPGでもよくみるが、初期装備は基本職業と一緒に決まっているものだし、パラメータもその通り。
それを好きに設定可能だということだろうか?
技能などは俗に言うスキルなどと同じものだろう。これはほかのゲームでも選ぶことができるものは多くある。
初期所有アイテムは……好きに選べるのだろうか?最初から全快アイテムなどを持つことができれば最強じゃないか!なとと考えてしまう。だがさすがにそれは無理だろう。できたとしても対価はかなり大きいものになるだろう。初期所有通貨は選んだアイテムなどを差し引いて決定されるのだろう。あまり高価なものを選べばマイナススタートなんかもあり得るかもしれない。
青年はじっくりと項目を眺めると上から順に入力を始めた。
種族は作った外見に種族ごとの特徴が追加されるだけなので後から変更しても大丈夫そうだったので後に変更することにする。
外見はリアルの外見を元に、多少筋肉質に見えるように。髪は白に近い灰色、目は碧眼に性別はリアルのまま男に設定した。
外見が決まったので、種族の項目を選択し、表示される種族を選ぶ。
人間、エルフ、ドワーフといったよくある人型の種族をはじめ、
ピクシー、シルフィード、サラマンダー、ウンディーネ、ノームのような妖精をベースにした種族、
バステト《猫》、コボルト《犬》、エレフ《象》、ミノタウロス《牛》、ケンタウロス《馬》、ガルダ《鳥》、人魚、リザードマン《蜥蜴》、ドラゴニュート《龍》、デーモン《悪魔》、エンジェル《天使》、バトルロイド《ロボット》などのモンスターがベースの種族に加え、
ゾンビ、スケルトン、リッチなんかのアンデットまでもが選べるようになっていた。
種族によってレベルアップの際に伸びるパラメータに違いがあるらしく、レベルが低ければ伸びが悪いが、レベルが高くなれば高くなるほど伸びがよくなっていく種族なんかもあるようだ。
青年はしばし悩み、ドラゴニュートを選択。
アバターの額に二本の角が生え、首から胸元にかけて鱗が生える。それに加え腰のあたりに尻尾までもが生えた。
鱗や尻尾、角の色が変更できるようなので暗い紫で統一した。
職業は前衛職、中衛職、後衛職、生産職のカテゴリに別れて表示されており、
前衛職として、
中衛職として、
後衛職として、
生産職として、鍛冶師、調合師、裁縫師、料理人の4つ
合計25種類である。
ほかの項目に比べれば多少自由度が低いように感じられるが、サブ職業と組み合わせると考えると600通りになる。
そう考えれば他の項目に負けないほどの自由度があるように思える。
青年は職業ごとの解説を読み、2分ほどでメイン職業を『処刑人』、サブ職業を『錬金術師』に決定した。
「職業は開始したら変更できないけどいいのかしら?」
「そうなのか?例外なく?」
「そうね。このゲーム課金要素とかは用意してないし」
「ほぉ?今時珍しい」
「社長が『お金で差が生まれるようなゲームに作る気はねぇ!』って頑なでね」
「ふーん……まぁ、いっか」
決定を押すと、初期装備と初期パラメータ、初期技能のプリセットが変更される。
処刑者と錬金術師は主要パラメータが似ているようで、DEX《技術》とSPD《速度》に偏っているようだった。
「ま、どうとでもなるっしょ」
ほとんど初期パラメータは変更せずに決定した。
装備に関しては元々片手直剣と投げ短剣、錬金用のフラスコがセットになっていが、片手直剣を片手大剣に変更した。
スピードがもともと高いのであれば多少重さで動きが鈍っても問題ないだろうという考えのようだ。
初期技能に関しては職業用であろう『処刑技能』と『錬金技能』。武器の技能であろう、『片手剣技能』、『投擲技能』が初めから設定されていたので、下手に弄るよりはこのままの方が良いだろうと判断した為、変更はしなかった。
初期アイテムは小回復ポーションなるアイテムと攻撃力を一時的に上昇させるアイテムを所持通貨が減りすぎない程度に選択した。
「へぇ、そういう選び方するんだぁ……あんたもしかしてだいぶゲーム慣れしてる?」
「まぁ、そこそこの数のゲームはやったかな」
「へぇ~、そういえば名前決めてないけど忘れてない?」
「名前は最後に決める派なんだよ」
「そう。じゃあさっさと決定しなさいな」
「へいへい」
キャラクターネームの欄に青年は
『赤月』
と入力した。
「じゃあ、もう送り出してしまって大丈夫かしら?」
「あぁ、尻尾とかのもともとない器官は始めたら体に馴染むのか?」
「えぇ、違和感のないように調整されてるわ。安心しなさい」
「了解、案内ありがとうございました」
「楽しんでね」
暗い空間に突如白い扉が現れ、ゆっくりと開いていく。
風が吹き込み、頬を撫でる。
ゲームとは思えない感覚に驚愕と共に高揚感が胸の中にあふれる。
赤月はBLOOD-CODEの世界に足を踏み入れた。
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