BLOOD-CODE

リズリンザ

ゲームが発売されて

prologue・1

 西暦2038年、5月17日、ゼノンワルツという企業がとある発表をした。


「わが社は世界初のフルダイブVRゲームの開発に成功いたしました。二年後の2040年に新作ゲームを販売いたします。なお販売数は10万本のみとさせていただきますので、抽選予約のみの販売とさせていただきます。皆様、こぞってご予約ください」


 今まで一切聞いたことがない企業からの衝撃発表である。他のゲーム企業はもちろん、ゲームをこよなく愛するゲーマーの人々も腰を抜かすほどに驚いた。

 ゲーム企業はハッタリかもしれないとは思いつつも、内心焦っているものが大半であった。疑う者も同じ数存在したが、販売されてみればわからぬと、喜んで抽選予約に応募した。



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 二年後の5月17日に発表通り新たなゲームが発表された。

 ゲームタイトルは『BLOOD-CODE』。

『ワルツリング』というチョーカー型ゲームハードと共に全世界で合計10万本のみ販売された。

 国を問わず販売されたため言語問題なども心配されていたが、プレイしたことでその問題は一斉に解決した。


 この作品には今までのゲームにはありえなかったシステムが多大に含まれていたのだ。

 リアルタイムでの言語翻訳、どこの回線なのかわからないが使用する独自の専用ネット回線はどんな地域でも一切のラグはなかった。

 ゲーム内の世界に存在する動物は呼吸をし、熱を持ち、自我を持ったように行動をする。風は肌をなでるように吹き、水も触れれば冷たさを感じ、飲めばのどが潤う。

 現実のように気温が変化し、昼夜で世界の雰囲気が変わる。


 すべてのゲーム制作会社がゼノンワルツがどのような企業なのか調べようとしたが、いつ設立したのか、今までどのような作品に携わってきたのか、どのような社員が在籍しているのか、一切の情報が存在しないのである。


 世界中のレビュアーがそろって絶賛の声を上げたこの作品は、ゼノンワルツが毎年10万本販売すると発表したために、世界で予約争いになった。


 転売などを考えた者もいたようだが、購入する際にワルツリングに本人の生体情報を登録するため、転売などをしようとした場合、ゼノンワルツからの警告のメールが送られる。そもそも本人以外にプレイが不可能となっているため転売は不可能だ。

 それでも転売をした場合は、罰金に加え処罰が与えられる。法には一切触れない方法で処罰を行う為、ゼノンワルツは一切の罪には問われない。


 このゲームにおいて初回の販売で入手できた者は『先駆者』『第一期勢』などと呼ばれ、2回目以降の販売で購入した者たちを先導する者として期待されているのであった。

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