第17話
十勝産のあずきと宮城産のもち米を使う老舗「喜久屋」の団子を手土産に、丘頭警部が事務所に姿を見せた。
「こんちわ〜」
奥からぞろぞろと一心と静と子供ら。
「まいど、おおきに」京都弁でお出迎えする。そしてサッとお茶入れをする静。
「警察の方は、どうだ、調子は?」
「友人関係は何もでないなあ。そちらは?」
「こっちもその線は無いな。会社と相続に絞って良いんじゃ無いかなあ」
「あちこち当たったの?」
「大学の友人、元彼女、社内の友達、釧路まで行ってきたし」
「そう、こっちも周りから埋めてったら、本丸だけ残った感じなのよ」警部は胸を張っている。
「次男の嫁の優が十和の母親との事故のとこで、嘘ついてるな。それに、会社は相続に絡んで実権争いがありそうだ。澪が貿易で出してる利益は自分の実績だと強調していた。」
「足の引っ張り合いに、滝上さんが巻き込まれた可能性も捨てきれないわね。そうそう、誘拐事件の実行犯なんだけど、澪さんにボディーガードがいるわよ。今、彼らの行動の裏を取ってるけど、3月1日も澪との契約期間内なのよ」
「そうか、兄弟妹でボディーガード契約あるの澪だけだからか」
「それで、頼みが有ってきたのよ。可愛い美紗ちゃん」
「何だあ〜気持ちの悪いばばあだ」
「美紗ちゃんそんな事言わないで、(株)富埋貿易と、孫の弾(はずむ)の富埋商事と紫雀(すじゃく)の富埋宝石と3社の財務関係ハッキングして。お願い!」
「そんな可愛く言ったって、可愛く無いんだよ!いい年こいて。ここ2、3年分くらいで良いのか?」
「は〜い、結構ですう」
「いつまでやってんだ!あほか」
「おう、それとな、数馬、一助。家族全員に盗聴器付けれや自宅と会社には警部と静が仕掛けてくれたけど、人に付けないと情報量少ない。やれるか?」
2人は顔を見合わせて自慢げに頷く。
「あたりきよ、できない筈がない。任せな。美紗!糸とシールと幾つある?」
「10位ずつはあるから、持ってきな」
「おっ、サンキュー、じゃ、行くわ。早い方がいいんだろ」
「頼むぞ、勝負が掛かってる。で、怪しげな会話あったら、静かから電話入れるから、尾行してくれ」
「おー、わかった」
「ほれ、団子持ってき」
串4本差し出す。
「ほい、警部サンキュー」
ジャンパーを手に口をモグモグさせながら2人は出て行った。
「警部、捜査本部はどう考えてるんだ?」
「会社絡みと睨んでるわ。殺人事件だけを対象にしてるからね。相続は本部からしたら無関係なのよ」
「確かになあ。滝上が会社絡みで、十和ちゃんは相続絡みってか?それにしては時期が重なりすぎじゃねえか?」
「そこよ〜悩ませるのは。それと、相続絡みで十和ちゃんを誘拐って、早すぎない?」
「じゃあ、十和ちゃんも会社絡みって?」
「ありえるしょ?例えば、サスペンスドラマであるじゃない。やばい話を男が盗聴して、気付いて男を殺すんだけど、録音装置がない。で、親兄弟から彼女まで探すって」
「じゃあ、滝上の親は?襲われた?」
「いや・・」
「警部、テレビ見過ぎだって」
「ははは、素人に言われちゃしょうがないなあ・・」
「プロだぜ、俺ら」
「あっ、そうだった。失敬」
「いずれにしても、情報足りない。盗聴器の活躍を願うか」
「内緒でね」
「滝上くんは、大学4年生の時にラーメン屋で十和ちゃん知って、それまで付き合っていた彼女と別れて、それからアタックが始まったらしいぞ。今時、二股してるやつごまんといるのに、純な奴だよ」
「そう、一直線だったのね。幸せね。そんなに思われたら。可哀想。」
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