第7話

 一心はひとり千葉市内のアパートの玄関前に立っている。

 優の出身大学に行って、学生名簿から安達淳が都内に住むことを掴んだ。行ってみると、そこは安達の実家で本人は学校を卒業すると、まもなく一人暮らしを始めたという。現住所を聞くと千葉だと告げられた。

 昔のアルバムを見せて欲しいとお願いすると、2階の部屋に案内され、当時のままの本棚にアルバムがあった。開くと優と一緒の写真のほかに、優と別の男とツーショット写真もある。聞いても誰だかわからないというのでその写真を借りることにした。安達と優と他に2人の女性が一緒に写っている写真もあった。それも誰だか分からないと言うので借りる事にした。優と女性は販売店の制服のようだ。


 辞去してから事務所により、数馬に写真の人物を調べるようにいって、ここまで電車で来た。

郵便受けにチラシが溜まっていて、ノックしても返事はなく、隣の人に聞くと、最近、渋谷で酒の上での喧嘩で、相手に怪我をさせ刑務所にいるらしいとの事だった。


 仕方なく事務所に戻ると、数馬が目を輝かせている。

「わかったぞ〜、写真の女2人の内、1人はJR浅草橋駅近くだわ。もう1人は所在不明だ。」

 一心は静に声をかけ、浅草橋駅まで歩く。

そろそろ夕食の支度で忙しくなる午後4時を回っている。話を聞けるかどうか。そんな話を静としながら15分ほど歩く。アパートの前まで辿り着いた。

「じゃ、待ってる」静の背中を押す。

2階を見上げていると、静がドアをノックする、一呼吸おいてドアが開く、静が何かを喋っている。そして室内へ。作戦成功だ。玄関前まで行って、通り過ぎるとき耳をそばだてると、中から、ギャハハと強烈な笑い声。話ができているのか心配になる程笑い続けている。1時間余りが過ぎて、ようやくドアが開いた。

「それじゃ、おおきに、また、きまっさ」と丁寧にお辞儀をして出てくる。

 事務所への帰り道、静が言うには、優は勤めて直ぐ、吉井遼(よしい・りょう)という居酒屋で働いていた男と付き合っていたという。が、富埋鷗州と知合い別れた。男は未練たらたらで店にも何回も来ていた。裏口から優に叩き出されていたこともあったらしい。

また、別の男も優に会いに来たことがある。静が大学時代の写真を見せると、安達淳を指で差し示しこの男だと言った。会話はよく聞こえなかったが、金の話をしていたようだ。

2人とも優の結婚が決まってからは、姿を見せなくなった。10年ほどして、テレビで吉井が殺されたって、びっくりしてたら、犯人は安達って人だっていうから2度ビックリ。なんでも、飲み屋街で喧嘩になって、刺されて死んだってテレビで言ってた。世間は狭いと思った。優の付き合った彼氏の1人が殺され、もう1人がその犯人だなんてねえ。と語ってくれたそうだ。

 一心は、聞きながら、ただの喧嘩?疑問を持った。


 大学時代の友人林香は既に結婚していて九州に住んでいた。一心が電話で優について訊ねると、自分も優に彼氏を紹介してとしつこくいわれ、紹介したら翌月には彼にモーションを掛けてきたらしい。彼は友達の男に声を掛けるのは良くないとはっきり断った。その話を彼から聞いて優との付き合いは止めた。と語ってくれた。


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