第4話

 タクシーは釧路駅を通り過ぎて、平坦な道を結構走った。距離的に駅から城山行くのと同じくらいと感じるところに愛国はあった。

 着いた家は、相当年数を経過したのが一目でわかる、昭和時代に流行った建て構えだ。

 インターホンは相手の顔が見える新しい形のもの。鳴らすと腸に響くような低音で応答する。男性かと思いきや、化粧も綺麗な和服姿の美形の奥様がドアを開けてくれた。思わず静と重なる。言葉は優しく、茶の間に迎え入れてくれた。1人暮らし。

自己紹介して、「城山の柊さんから・・」というと

「話は聞きました。仁美のことね」と応じる。話の内容は大方おばと同じであった。

ただ事故の当日、優から電話があったようだ。

「久しぶりに優と会う。優がどうしても謝りたいという。仁美はもう良いの。と断ったようなんだけど、どうしてもと何回か電話寄越すんで、しょうがなく、分かった。と言ったんだって。そして、会ってら大した謝りもしないで、雑談ばかりだったらしいよ、これは優が事故後に警察にそういう風に話したと聞いたんだよねえ。それに警察には仁美が食事に誘ったって言ったらしい。だから、前後で言う事違うのさ。

それに、レストランからの帰り道、途中で旦那からの用事を急に思い出して、すぐいかないと怒られるとか言って、身重の仁美を歩道橋の手前で降ろしたって、そこから、まだ1キロもあったらしいいのよ浅草の家まで。冗談じゃないわよねえ。仁美は文句も言わずお礼を言って、歩道橋を登ったのよね。たった1キロよ!、車で5分かかる?かからないでしょう!それを、何様のつもりなんだか。私は悪意を感じる。」

「というと?」

「あんたも探偵ならわかるしょ、やる気だったのよ!そうに決まってる。あ〜、思い出したら、また腹立ってきた!」

「あっ、すみません。嫌なこと思い出させちゃって・・」何とか話を続けてほしい一心。

「そうそう、だから、そこでタクシーに乗れば良かったのよ。いまさら、だけどねえ。で、反対側の階段を降りようとして、落ちたって。今でも、信じられない。あの人慎重な性格なのよ。階段を降りるのなら、手摺に掴まりながら一歩一歩、気を付けて行ったはずよ。だから、誰かが背後から押したのよ。絶対そう。警察にも言ったんだけど」

「おばさんも、おじいちゃん、おばあちゃん皆さん同じく慎重な性格だと言ってましたね。・・後、何か気のついたこととか、娘の十和さんはご存じですか?」

「いえ、あんな亡くなり方したんで、あのおばさんのとこへも、事故前は遊びに行ったりしたことあったんだけど、ご無沙汰になっちゃって、だから全然、わからないの、ごめんなさんね」

「いえ、知らなければ良いんです」

「どうして、娘さんの事聞くの?」

「はあ、ちょっと事故に遭いまして、それで色々調べてるもんで」

「あ〜なるほど。知らなかったわねえ」

「東京に仁美さんの知り合いとか親類とかは?」

「高校までこっちで、就職で東京へ行ったからねえ、高校の同級生とかで東京に住んでる人いるかも知れないけど、私は知らないなあ。勤めた会社に独身女性が仁美と優の2人だけだったらしくて、所帯持とか子供いたりしたら話合わないでしょう。だから、いなかったんじゃ無いかなあ」


 

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