第45話⁂最終話⁂


 ハチャトゥリアン🏰「仮面舞踏会」🎭.:*:・☆💃より”ワルツ”管弦楽曲がホテル『龍宮の間』に響き渡る。



 ♪ズンチャッチャッ♬ ♪ズンチャッチャッ♬ ♪ズンチャッチャッ♬

 ♪ズンチャッチャッ♬.。*・゚゚♪♪♪。・゚・。 



 その時、煌びやかな*💃。.:💍*:・'°☆

 宝石や衣装に身をまとった美しい女性が、仮面を付けてホテルの豪華な大理石のらせん階段を、軽やかにワルツを踊りながら舞い降りて来た.:*:・☆


 この絢爛豪華な席に、婦人警官もスタンバイして招待客の中に潜入していた。

 翔や施設の皆、また夏美と葵たち更には〔OUGI探偵事務所〕の直樹と三咲、事件の全貌を耳にして裏も取れていた警察関係者によって、全部仕組まれていた仮面舞踏会だった。


 それでは、らせん階段をワルツの旋律に乗せて、優雅に降り立った美女夏美の目的は一体何だったのか?


 それは柳田組幹部達を、この美貌と美酒とワルツで酔わせ油断させるため。

 

 麗奈と名乗り、男を惑わす何とも大胆にカットされた胸元を強調した真っ赤なドレスと、高級感あふれるシャネル№5、あのマリリンモンロ―愛用の香水の香りを漂わせて、組員達とワルツを踊る夏美。

 

 更には、長く伸びた脚線美に、大胆なスリットの入ったドレス。

 その美しい脚を惜しげもなく晒して…お酌をして回る夏美に、組員たちも、もうデレデレ。

 

 ▲▽

 ベンチャー企業BEST〔アプリケーションの企画・開発・運営〕を展開するする若き起業家“田所社長(葵)が経営していると言えども、仮面舞踏会『マスカレード・パーティー』の実質上の経営者は柳田組なのだ。


 それでは医師の葵が、何故こんな他業種の経営に携わらなくては行けなかったのか?親友の翔に頼まれたのもあるが………。

 

 それはこの話を紐解くには2022年現在から20年ほど前に遡らなくてはいけない。


 どういう事かと言うと、当時22歳に成長していた辰也は、医学生の葵の元に時々遊びに行っていた。


 電車で行けば、さほど遠くないのもあるが、親の過干渉にうんざりしての事だ。


「余り出歩くな。レ-ザ―治療だ」と口うるさい。


 それは一にも二にも冷凍食品大手〔ヤマタニフ-ズ社長〕の一人娘で、尚且つ副社長の妻である事から、そんな世にも珍しい子供がいる事が、世間様に知れ渡ったらそれこそ商品のイメ-ジダウンにも繋がる。


 また、それよりも何よりも世間の目、世間体を何よりも気にして、息子の気持ちに寄り添う余裕が無いのだ。


 学校に通う以外は、あの障害児・者施設〔レインボ―🌈〕に行く事にだけは寛大で許してくれた。

 その為、3日間の猶予を貰って「〔レインボ―🌈〕に行く」と噓を付き、葵の家に遊びに来ていた。

 まさか葵の家に遊びに行くなど、口が腐っても言えない。

 それは母光代の最大のライバル愛人宅だからである。


 また別宅に行くと、至れり尽くせりで、本当に大切にして貰えるのもあるのだが、それに何より、姉夏美と葵3人で食事に連れ出してもらったり、海や山にと夢のような時間が待っているのだ。

 そんなひと時の幸せに浸っていた辰也だったが、ある日忽然と姿を消した。


 こうして大切な兄弟を失った夏美と葵の結束は、鉄の結束となり障害児・者施設〔レインボ―🌈〕での事件と、両方の事件を警察や探偵事務所、更には施設の同僚達一丸となって調べ出した。


 ▲▽

 仮面舞踏会のあの日、招待客の女性達は、招待客の男性達の車に乗せられて、ある一室に運び込まれた。

 それは、大切なお金のなる木の女性たちなので、柳田組長に促されて翔が男性招待客に運ばせた。

 といってもミュージシャンの矢口健太や菊地淳等だが?


 そこにスタンバイしていた警察官が駆け込んで来た。

 そして…柳田組幹部達数名が、警察に連行された。


 お金の為、とは言え一番やってはいけない女性達や障害者と言う弱者を食い物にするなど、不届き千万。


 翔は警察の手助けをしていたので、おとがめなし。


 だが、これに異を唱えたのは誰有ろう姐さん。


「よくもまあ、いけしゃあしゃあと両方に良い顔をして騙してくれたわね。黙っちゃ要られない!大切な琢磨が姉妹2人の犯罪者にされているが?………フン!とんでもない話だ。あの姉妹殺しの後、匿ってやっていた恩を仇で返すとは何て奴だ!それは仮面舞踏会の日が押し迫っていたから、匿ってやったんだ。琢磨はあの日私たちと一緒だったが、たまたま一卵性双生児という事でDNAが一緒?判別しにくいので?琢磨が捕まったが………過去の母親殺しだって本当は翔だという事を私は知っていた。あの時は可愛い翔を守るために口をつぐんでいたが……あんな私達に反旗を翻す危険人物は死刑にしてくれるわ!クッソ————ッ!凶暴な犯罪者を野放しにして置いたら、どんなとばっちりを食らうかもしれない?死ね————ッ!翔!」


 こうして怒り狂った姐さんの通報により、翔は33歳で死刑執行となりこの世を去った。

 跡継ぎである自分に忠実な琢磨を守る為、柳田組を守る為に姐さんの通報で翔は亡くなってしまった。

 全くもって酷い話だ。

 

 

 あっ!そういえば仮面舞踏会に紛れ込んでいた〔オオカミ怪人〕は一体誰だったのか?

 それは翔を〔オオカミ怪人〕と見間違えての誤報だったのだ。

 

 それでは、どうして〔オオカミ怪人〕と思われたかと言うと、仮面舞踏会なので招待客は仮面をつけてお出ましなのだが、 翔も仮面をつけて、その日は裏方として出席していた。


 その時に翔の横顔だけが妙に茶色の毛だらけで〔オオカミ怪人〕そのものだったので、専属の司会者が実際に見たまんまの言葉を吐いたのだが、興味本位も手伝って、ついつい場内を盛り上げるために〔オオカミ怪人〕が居ると口走った。

 ▲▽


 それから……真夜中に幻想的に響き渡るなんとも美しい、あのバイオリンの音色は仮面舞踏会の為に、夏美と葵が名曲カノンの旋律にのせて、お互いに情報交換していた。

 姉夏美の大好きなバイオリンの音色、特に葵の奏でるバイオリンの音色が何より好きだった。

 同じ旋律を異なる時点からそれぞれ開始する(同じメロディ―を重ねて演奏している)夏美と葵は、まだ人員が集まっていない時は、同じメロディ―を重ねての演奏をそこでストップして合図にしていた。


 そして、重ねての演奏を突破して奏で続けたら全員集まった合図にしていた。

 といってもカノンは結構長い曲目なので、途中で終了という事にしていたが———


 ▲▽


 葵は交通事故の影響で眼球破裂と診断されていたが、 2022年6月現在、運よく回復して顔面もほぼ復元されていた。

 

 それから……施設もあれだけの悪事の数々が行われていたが、今現在は経営者が変わり、やっと施設の皆も平穏な日々を取り戻している。


 嗚呼?そう言えば琢磨はどうなったのか?

 仲の良かった翔の死は、受け入れ難いものが有るが、柳田組次期組長として結婚して、豪邸柳田組長夫婦の別棟に豪邸を立てて貰い、次期組長としての責務に尽力している。


 ▲▽

 それでは、肝心かなめの椿辰也はどうなったのか?


 実は…幼い日に椿辰也は、いつの間にか大好きな姉が居なくなるので寂しくて、ある日跡を付けた。

 すると奥多摩駅近くの立派な邸宅に消えた。


 インターホンを押そうか迷っていると近所の人が通りかかった。


「あ~ら葵君じゃないの?お家に入りなさい」


 それでも…もたもたして一向に家の中に入る様子が無い。

 思い余った近所の奥さんが、門を開けて家の中へと導いてくれた。


「真理さん葵君が、外でうろうろしていたわよ?」


 すると奥の部屋から綺麗なおばさんが出て来た。


「エエ————————ッ!アッ葵が2人も?一体どういう事?ともかく上がって!」


 最初はこのような出会いでは有ったが、異母兄弟なので似ていて当たり前、いつの間にか姉と連れ立って、この邸宅に顔を出す事も増えて行った。

 

 辰也は親の虚栄心のせいで、この長く伸びた多毛症を剃られるのが、すごいストレスになっていた。


 確かに学校では珍しいので、虐めの標的にされるだろうから、心配しての事だと思うのだが、虐め以上に辛いレーザ—治療と顔剃り、その為顔はただれて真っ赤っか。

 それは一にも二にも世間体を気にするあまりの、母光代の行為なのだ。


 度々のレーザ—治療と顔剃りに、苦痛を通り越して死にたい思いになっている辰也。


 要は想像以上に苦痛で痛いのだ。

 それを際限なくやらされて、もう耐えられないと思っている。


 そんな時に奥多摩湖近くの民家に住む悪徳業者に声を掛けられた。

 何とも優しそうなおじさんに笑顔で声を掛けられた辰也。


「海外旅行しないかい」


 世間体を気にし過ぎるが余りに、息子に無理強いをさせている親に、辟易していた辰也はふっと思った。


「苦痛から逃れる為ならなんだって良い」


 22歳で優しいおじさんに付いて行った辰也では有ったが、お金が無いので両親の元に帰った。


「どこに行って居たの?心配したのよ。言いなさい」と口うるさい。


 実は奥多摩湖の民家に連れて行かれたのだが、同じ様な普通の人間とは違うが、そこは辰也にとっては居心地の良い場所だった。


 俗世では悪い事をしている訳でも無いのに、小さくなり隠れて生活しなくてはならなかった。

 だが、ここでは堂々と奥多摩湖周辺を掛けづり回ることが出来る。

 

 まぁ~?観光客も多いので、まるで珍しい怪獣でも見るような好奇の目で見られるのと、この民家のおじさんに人目に付く所には、絶対に行くなと言われているので、人気の少ない野原をみんなと一緒に掛けづり回っていた。

 

 それだけでも精神的に、物凄くゆとりが出来ている辰也なのだが、もう1つ楽しみな事がある。

 それはいつの頃からか、1人の優しいお兄さんに親切にして貰い仲良くなった。

 そして…よく連れ出してくれた。


 何と、そこは胡散臭い法律で禁止されている賭博場。

 そこで賭博を覚えた。


 こうして、法外な借金を背負わされた辰也は、悪徳業者から脅されている。


「法外な借金がある。命が惜しかったら親からお金をふんだくって来い!もし変な事をチクったら即刻命はないぞ。分かったな!」


 本当は束縛する鬱陶しい親の元には絶対に帰りたくない辰也。

 それはそうだろう。

 ここでは好き勝手に生きることが出来る。親の過干渉から解放された天国。

 只先立つ物が無い。


 こうして、発達障害(ADHD)が陥りやすいギャンブル依存症になった辰也は、金を渡さないと親に酷い暴力、暴言を吐くようになって行った。

 またお金を渡さないと、恐喝や詐欺などを繰り返し金品を手に入れようとする。


 そこで困り果てた両親が、ギャンブル依存回復施設に入所させたが、余りにも嫌がるので致し方なく退院させてしまった。

 

 困り果てた光代は悪徳業者に、ギャンブル依存症を更生させて働かせる企業があると聞いて、藁をもつかむ思いで引き渡してしまった。

 


 ▲▽

 …2015年の〔オオカミ怪人〕騒動は、辰也だったのかも知れない。


 実は…最近この街には、ある都市伝説がまことしやかに囁かれている。

 真夜中に度々目撃する、それはそれは恐ろしい、身体中オオカミのように毛むくじゃらの人間なのか、妖怪なのか、更には真夜中に響き渡る美しいバイオリンの音色。


 それはひょっとしたら悪徳業者に脅されていたので、姉と葵にお金をたかりに来た辰也だったのかもしれない。

 中国に売り飛ばす前に、医者の姉と葵のお金を目当てに、お金をたかれるだけたからせようとしたのかも知れない。


 こうして中国のサーカス団の一員として売り飛ばされた可能性が出て来た。 

  

 ▲▽

 そういえば2022年愛人真理は、別宅から消えていたが、一体どこに消えたのか?

何らかの理由でもう殺されているのか?

 いえいえ———もう愛人関係に終止符を打ち、息子で医師の葵と家族水入らずの生活している。


 ▲▽

 2022年5月そろそろコロナ事情も落ち着いてきた昨今、〔DREAMエンタープライズ〕のホームぺ-ジに、日本での中国サ-カス団公演に当たっての窓口として、幾つかのサ-カス団の情報が送信されていた。


 当然団員たちのプロフィール写真なども載せられていた。

 何と、その中の某サ-カス団に辰也の写真が写っていた。


 それは髪の毛が異様に伸びた、まるでオオカミのような風貌になった辰也が、写っていたのだ。

 それでも…何故分かったのか?


 月日が経ったとはいえ、真ん丸な特徴的な目と、家でも学校に通わない長期休暇の時は、顔は剃っていなかったので、その時のまんまの辰也だったので直ぐに分かった。


 こうして早速中国の上海に引き渡してもらう為に出掛けた。

 親の許可なしに勝手に中国に連れてい行った誘拐の罪は重いが、日本と中国とは、犯罪人引渡し条約を結んでおらず、中国の法律で裁いてもらうしかない。


 それでも…奥多摩の悪徳業者が、中国のサ-カス団に売ったのだから悪徳業者が最も重い刑になる。


 実はこの悪徳業者も柳田組の傘下なのだ。

 悪徳業者もこの事件で捕まった。

 各国に売られた障害者達の安否は、今もって分かっていない。

 

 

 所で最後にもう一つ埒が明かない事が?

 夏美と葵は〔OUGI探偵事務所〕に最近巷を賑わせている〔オオカミ怪人〕を是非とも探し出して欲しいと依頼してきたが、何故葵は〔オオカミ怪人〕張本人椿辰也と名乗ったのか?


 椿辰也は実は、本名は山谷辰也なのだ。

 顔を剃っていたからと言っても、うっそうとした毛が所々に生えている為に、小学校時代多毛症のせいで、虐めに遭っていた。


 だが、こんな辰也に救いの手が、なんと同じクラスの椿ちゃんが助けてくれた。

 

「あなた達弱い者虐めは一番やってはいけない事ヨ!」

 こう言って辰也を救ってくれたのだ。


 だが、残念な事にお父さんの転勤で椿ちゃんは転校してしまった。

 椿ちゃんが在校中は虐めがピタリと治まっていたのだが、またしても心無い暴言の数々に辛い思いをしていた。


 そこで考えあぐねた結果、縁起をかつぐ意味でも椿辰也と姉弟の間で名乗っていた。

 それが常態化していた。


 プライバシーに立ち入って欲しくなかった夏美と葵は、母親同士の争いなどが有る為、2人の経歴を知られたくない。


 〔オオカミ怪人〕等そうそういるものではない。

 今まで50人ほどしか確認されていないので、そんな珍しいものならすぐ見つかると思って「最近巷を賑わせている〔オオカミ怪人〕を探して欲しい」とだけ伝えた。

 

 そして…有名人田所社長(葵)を名乗る訳にも行かないので椿辰也と名乗った。



 ▲▽

 最近では母光代も辰也がそれ程嫌がっているのなら、もう隠し立てしないでおこうと強く思う今日この頃。


 所で夏美と葵は人の為に身をすり減らして自分たちの幸せを置き去りにしているのでは?

 夏美と葵も、もう良い年だが彼氏彼女はいないのか?

 


 そうそう葵は母真理と妻の3人家族

 現在42歳の葵は結婚して幸せを掴んでいた。


 そして…現在47歳の夏美は優秀な医師なので、結婚より人を救う道を選んだ。

 


 一方の〔OUGI探偵事務所〕の直樹と美咲もひと段落ついて一安心。

  

「私たちが、悪徳業者に辿り着けなかったら話は進展していなかった。直樹のお陰よ!」


「エッヘンそうだろう(^-^)」


だが、またしても難事件が待っていた。


 おわり


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

🏰仮面舞踏会🎭.:*:・☆💃 あのね! @tsukc55384

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ