第25話⁂何故、寺内琢磨が母殺害犯にさせられたのか?⁂
2015年6月某日の仮面舞踏会から遡る事一週間前の事である。
同居生活を送っていた仲の良い姉妹が、仕事帰りに帰宅したところを、立て続けに襲われたあの凶悪事件である。
恐怖のあまり逃げ惑う25歳と23歳の姉妹を、立て続けに時間差で強姦しながら次々に刃物で突き刺し殺害した稀代の大殺人鬼が、実は…あの日の仮面舞踏会の日に、〔スカイブルーホテル〕に紛れ込んでいたらしい。
{エエエエ————————ッ!これは一大事!}
華やかな仮面舞踏会に、何故、凶悪犯が紛れ込まなければならなかったのか?
その正体は実は…寺内琢磨ではなく一卵性双生児の翔なのであるが————
一体誰がそんなとんでもない事を、騒ぎ立てているのか?
◆◇◆◇◆
あんなに優秀でイケメンの翔が、何故この様な狂った殺人鬼に成り下がってしまったのか?
それは言うまでもない、あの父の愛人涼子の行き過ぎた翔への危機感と嫉妬心が生み出した悲劇から全てが狂いだした。
余りにも酷い行為である。
当然姐さんから、虫けら同然に殺されたのもうなずける。
あんなに優秀で火の打ちどころのない翔を、醜いお化けにしてしまった罪は極めて重い。
少々の火傷なら最新の整形技術で何とでもなるが、いかんせん硫酸を目にも浴びせかけたとは余りにも可哀想過ぎる。
あれだけの器量なら例え極道として生きて行くにせよ、想像も付かない程の美女たちをはべらせ、任侠映画気取りの人生を送れたものを………。
んまぁ~?褒められた話ではないが?
殺人鬼と化した翔の生い立ちを振り返ると、同情の余地もあるのだが、それでも殺害方法が余りにも、むご過ぎて正気の沙汰とは思えない。
一体どうしてこのような残酷な行動に出てしまったのか?
実は…そこには全く違う現実が浮かび上がって来る。
◆◇◆
翔は実は障害者施設ではなく6階建ての施設の、5階の医療センタ―に入所していた。
その時に、余りの醜さに入所している児童たちから凄い虐めを受けていた。
それはそうだろう。
目は片目は焼けただれ溶けてしまい、髪の毛は半分ほど削げ落ちて、何とも痛ましい姿である。
日本有数の、それこそ裏社会のドンと言っても過言ではない柳田組長の息子、当然の如く個室をあてがって貰い、更にはお金も子供だと言うのに当面困らないほどの大金を持っている。
経過も良好だったので、医療センタ―から障害児施設に移ったばかりのある日、障害児施設の虐めが余りにも酷いので、とうとう逃げ出した翔。
元々お坊ちゃまの様に、組長や姐さんから大事に大事に育てられた翔は、そんな強姦など思いも寄らない事なのだが、あの日翔は医療センタ―を逃げ出し、夜も深まり行く中、泊る所を必死に探していた。
今までその様な事は全て組員がやってくれていたので、こんなお坊ちゃま右も左も分からず途方に暮れている。
すると前から殺害された姉のA子が歩いてきた。
声を掛けようか迷っていると通り過ぎてしまった。
ヤッバ~イ!こんな人通りの少ない所で、また誰かに会う事は、もう今夜は無いかもしれない?
そう思い勇気を出して声を掛けた。
「あっあの~?すっすみません…この近くに………泊る所ありませんか?」
するとそのA子は、余りの気持ち悪い不気味な容姿に、逃げ惑いながら酷い暴言を吐いた。
「キャ-ッ誰よ!チッ近付かないでキッ気持ち悪い!」
そう言われて腹に据え兼ねるものが有ったが、それどころではない。
お金持ちのお坊ちゃまに野宿の野の字も思い付く筈がない。
尚も食い下がった。
「どこか泊る所を、オッ教えてください」
「バッ化け物————ッ!近付かないで❕ サッさもないと大声出すから~!」
アパートのすぐ近くだったので、運が悪い事に、そこに妹のB子が帰って来た。
「どうしたの姉ちゃん大騒ぎして?」
「この気持ち悪い男がしつこいので?」
「いい加減にしてよ!あなたみたいな化け物、近づいたら警察に通報してやる———ッ!」
その警察と言う言葉に翔は反応した。
裏社会の仕事は大概、法ギリギリの仕事か、法に反する仕事が多い。
だから組長の父がよく組員に怒鳴っていた教訓が頭に擦り込まれている。
「警察に通報しようとする奴らは撃ち殺してしまえ!」
今まで耐えに耐えていた糸が、余りの汚い暴言と警察の2文字で完全にブチ切れた。
恐ろしい現場を知らず知らずに目にする事も多かった翔。
こんな優男ではあったが、血で血を洗う現場を嫌と言う程知らされている。
殺傷に対して殺傷で報復する。
恐ろしいヤクザの血が騒ぎ出し、殺す事しか考えられなくなった。
こうして警察の2文字でカ————ッ!となり、更には散々な阿鼻雑言の数々に、家に逃げ帰るのを追い駆けて最も残酷な形で殺害した。
「散々この俺様を侮辱してくれたな————ッ!」
最も恐ろしい強姦と言う形で、相次いで刃物で刺し殺した。
ヤクザは警察の2文字に異様に反応する。
◆◇◆◇◆
実は…翔は過去に残酷に殺害される人間の姿を見てしまった事が有る。
その時はひょんな事から運悪く、物陰からこっそりと見てしまったのだった。
だがその時の死に逝く様に興奮して、恥ずかしい話だが、興奮を抑えきれずに射精をしてしまった経緯がある。
その時の興奮が忘れられず、人の血をまた見たくなったのもあるが。
「クッソ————ッ!醜い俺をバカにしやがって!こんな阿鼻雑言を浴びせかける奴、只じゃ済ませられない、殺してやれ————ッ!」
こうして最も残酷な形で異様な殺人快楽に落ちた翔。
「ああああ~~アァ————————!興奮する!ワッハッハッハッハ~!ワハ!ワハ!ワハ!」
こんな異常性癖が出始めたのは、やはりこんな醜い容姿になってからだ。
片目はただれ溶け堕ち、左目は失明し、顔も焼けただれ顔面再建手術を施すも酷い現状。
硫酸事件以前の10代の頃は、放っておいても女の子が寄って来て鬱陶しいと思ったほどなのに、今の現状は人から化け物扱いの好奇と軽視の眼差しで『目は口ほどにものを言う』の言葉通り、拒否反応と寄り付かせない態度の威圧感をヒシヒシと感じる翔。
『要は外に出るな!そばに寄るな!暗に目で言っているような物』
こんな状態が続けば、若い男の子だもの、性欲に対する歪んだ欲求不満と醜い人間の裏表を嫌と言うほど見せ付けられて、精神構造の狂いが生じて恐ろしい異常人格になるのもうなずける。
◆◇◆
それでは何故、殺害していない寺内琢磨が、死刑囚にならなければならなくなったのか?
そこには一卵性双生児である事が大きなキーワ-ド。
翔によって惨い最期を閉じた母里美。
それでは何故そこまで母里美を恨む必要が有ったのか?
殆ど会った事もない瞼の母にどんな恨みが有ったのか?
実は…やけどを負って醜くなってからと言うもの、姐さんにも見放され、更に別の愛人にも赤ちゃんが生まれて、益々追い込まれた翔は家族一同から除け者にされる位なら我慢も出来るのだが、ある日こっそりと姐さんが電話している話を聞いてしまった。
その話と言うのは想像も付かないものだった。
あんなに可愛がってくれた姐さんだけは、見放さないだろうと思っていたのに——
「あんな気味の悪い子、どこか施設で預かってくれるところ世話してよ。もうあの子には真っ平御免だわ!」
電話をこっそり聞いてしまった翔は、その内この家から追い出される。そう直感した。
こうして事件が起きる。
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