第26話⁂誤認逮捕⁈⁂
六月某日、寺内琢磨が母殺害事件を起こした?あの日、仕事を終えた琢磨の跡を付ける人影が有った。
そろ~りそろ~り付け狙うその人影は、琢磨が家に付くまで続いた。
その人影の正体それは翔、居場所を確認するや否や、一旦ゲ-ムセンターで時間を過ごしている。
そこで早速翔は、特にガラの悪いこの『✕町』界隈のゲ-ムセンターに消えて行った。
実は…翔は、過去にも何度か琢磨の跡を付けて様子を伺っていた。
そして…母里美には実は…一度だけ会っていた。
その時は門前払いを食らったが………。
◆◇◆◇
ゲ-ムセンターでも特にガラの悪い不良たちと時間を潰した後、琢磨の母里美に積年の恨みを晴らす為に、アパ-トの陰で様子を伺っていたが、その時に琢磨がアパ-トから駆け足で出て行った。
{これは奇遇、やっと恨みを晴らす事が出来る}そう思った翔は、早速琢磨のアパ-トに侵入した。
存外早く、積年の恨みを晴らすチャンスはやって来た。
{10数年ぶりに会えたのに………あの日のあの物言いは許せない!}
あの日やっと会えた嬉しさに、気持ちは高ぶり、懐かしさと嬉しさで胸が一杯になった。
{何が功を奏するか分かったものじゃない。ああ~!夢にまで見た瞼の母に、やっと会える!俺を置いてけぼりにして出て行った事は恨んでいたが、それでも………?今度こそ久しぶりだから、きっと母も喜んでくれるに違いない}
そう思い今までの恨みも、これで洗い流し許してやろうと思い、会いに行ったのに意に反して恐ろしい言葉を発した母里美。
「誰あんた?翔?・・・翔がそんなお化けの訳無いじゃないか?帰っておくれ!」
「チッ違うんだ!愛人に硫酸ぶっ掛けられたんだ。助けてヨ————ッ!」
「な~にを言ってるんだい!こちとら今日明日にも、食べる事に事欠く毎日を送っているのに、お前のような醜い厄介者迷惑なんだよ!出ておいき————ッ!」
◆◇◆
こうしてあの日の恨み憎しみと、それ以上に、あの日抱き付いた瞬間に感じた微かな母性、僅かばかりの母の温もりにかけてみようと、アパートに向かった。
何もお金に困っている訳ではない………そんなもの父に泣き付けばどうにでもなる。
こんなに醜くなった自分でも愛してくれる。抱きしめてくれる。
僅かばかりでもいい、愛が欲しいのだ。
心が乾き孤独で真っ暗闇の中を延々と彷徨い、心が悲鳴をあげ、ガラスのように粉々に心が壊れ、立っているのもやっとなほど心が疲弊して………。
それでも…実母なのだから………ひょっとしたら………こんな醜い僕でも今度こそは………唯一の肉親だから、慈悲の心でこんな可愛そうな僕を………受け入れてくれるかもしれない。
だが、こんな微かな、些細な願いもあっけなく砕け散った。
「いい加減におし!お前みたいなのがうろつかれると、折角掴んだ生活が壊れるんだよ?同居人の男が気味悪がっているから、もう来ないでおくれ!」
「息子が遥々会いに来たと言うのに、その物言いは何だ?こんなに窮地に立って苦しんでいるのに、元はと言えばお前が俺を捨てたせいで、こうなったんだ!よくも俺を捨ててくれたな~許せない死ね——————ッ!」
母の言葉にカ————ッ!となった翔は、顔や背中を蹴り、近くにあった金属バットを手にすると足や胸や腹を殴った。また、執拗に顔や腹を踏みつけた。金属バットでは、頭ではなく、より苦しむ躰を殴った。
どれだけ経っただろうか、目の前に、もう原形も留めないほど悲惨な姿になってしまった、血まみれで横たわる里美の姿があった。
今まで立て続けに悲劇に見舞われた翔は、やっと会えた最後の砦である母にこそ、救って貰えると思ったのに、それも叶わないどころか、想像も付かない母の心の内を知らされ、今までの苦しみと恨みが一気に押し寄せ、更に自分の苦しさの尺度を遥かに超え過ぎて、頭がパニックになり狂ったように母を殺してしまった。
◆◇◆
一方の琢磨は、たった一人の肉親を殺害され天涯孤独になってしまった。
そして…何と、そればかりか、誤認逮捕で少年院送りとなってしまった。
一体どうしてこんな誤認逮捕という経緯を辿らなければならなかったのか?
そこには一卵性双生児と言う盲点が有る。
以前は、一卵性双生児はDNA鑑定で識別する事が出来なかった。
【要は一卵性双生児はDNAが一緒】
こうして母里美殺しとして、まず捜査の基本である身内を疑えという事で、こっ酷く調べられた琢磨。
「夜遅く琢磨君とそっくりの体系で尚且つ横顔をチラッと見たが、多分琢磨君に違いないと思います」
仕事帰りの近所の住人の証言が取れた。
更には、調べて行く内に、包んであった毛布から血痕が見つかり、琢磨のDNAと一致。
こうして寺内琢磨は少年送りとなった。
【以前は一卵性双生児をDNA鑑定で識別する事はできませんでしたが、近年は技術的には識別できるようになりましたが、かなりの手間がかかり若年期では識別できない場合も多い】
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