第17話⁂複雑に絡み合う人間模様!⁂


「エエエエ————————ッ!あの椿辰也社長が実は、あの葵だと————ッ!まさか⁈」

 

 ◆◇◆◇◆◇

 ある日の椿夫婦?のひとコマ。

 

「俺はあの日の恐ろしい出来事を忘れてはいない。許せない!復讐したい!」


「分かるけど?本当にごめんなさいね!」



 この椿辰也と名乗る男性と麗奈にはどんな隠された過去が有るのか?


 椿辰也は〔DREAMエンタープライズ〕というイベント会社経営の社長らしいが実態は定かではない。

 

 それでは一体何者なのか?



 そんな二〇一五年四月某日のある日、東京都台東区浅草に有る、この〔OUGI探偵事務所〕に若いカップルが、やって来た。


「最近巷で評判の”オオカミ怪人”を探して欲しい!」


 何か?見るからに不釣り合いのカップルで、よくよく聞くと夫婦だと言う事が分かって来たが⁈


◆◇◆◇◆◇

「三十五歳にもなると言うのに働きもしないで、親の顔さえ見ればお金をたかるか、酷い言葉を吐くか、暴力を振るうか、そんなどうしようもない、手に負えない子供の将来を儚んで、悪徳業者の上手い話に載せられ、丸め込まれて多毛症の子供をを手渡したらしい?と言う噂は一体どこから出て来たんだよ………?多毛症を世間様に晒すのが恥ずかしいから、これ幸いに引き渡したに違いない………?第一可哀想な我が子の事を第一に考えなければいけないのに………全く!自分の体裁ばかり気にする親が悪いに決まっている。第一・・・恥ずかしいからと言って隠すような親って一体……?どういう親………?酷い話だよ………あんなに頑張り屋さんで………更には成績優秀でスポ-ツ万能な、非常に元気な子供に成長したと聞いたのに………?」


「直樹!人の噂に翻弄されては絶対にダメね。この裏には何か大きな謎が隠されているに違いない」


 「でも………あの見栄っ張りな母親が何か………?悪影響に繋がっている事だけは確かだね?」



 この話を紐解くには20年ほど前に遡る必要がある。

 実は…知的障害ではあるが、色彩豊かな画風で有名な画家、田村洋介38歳は友達である田所社長から声を掛けて貰い、あの日仮面舞踏会に参加したのだが、幼少期に障害者施設に入所していた事が分かってきた。


 入所時の11月18日に開催の障害者交流会が愛知県で開催された事が有った。

 対象は15歳以上の障害者で、参加者は互いに技能を競い合う。

 障害者の職業能力の向上、そして障害者に対する理解を深め、その雇用促進を図ることを目的として毎年開催されている。


 障害者と企業、双方に向けた取り組みがあり、障害者雇用促進事業の一環として「求職中の障害者」と「障害者雇用を検討している企業」を一体的に支援するための取り組みを行っている。

 精神・発達障害者への支援を目的に「障害者向け交流会」や「企業向け勉強会」などを複数回にわたり開催している。


 障害の内容によっては、「できること」と「できないこと」や、「どのくらいのストレスになら耐えられるか」 、「どのくらいのプレッシャーに耐えられるのか 」が外見からは分からない事も多いので、企業側が障害のある方の採用を躊躇する原因の一つなのだ。



 20年前の、この障害者交流会の時に障害者施設に入所していた、田村洋介と先天性多毛症の葵は出会っている。


 田村は幼少の頃から、絵画の腕前だけは抜群で色合いが斬新な事から、障害者の星と持て囃されて将来を嘱望されていた。


 一方の葵は田村洋介と同じ施設に入所している、聴覚障害のお友達と一緒に就職活動目的で出掛けて来た。

 別に多毛症だからと言って、身体には何の障害も無いので、こんな障害者交流会に来る必要もないのだが、今まで散々辛い思いもしたので、見学がてら軽い気持ちでやって来た。

{アア~!今までだって散々肩身の狭い思いをして来たのに………また~?アアア~!イヤだ!イヤだ!今度は就職ともなれば現実社会では、更に厳しい状態に置かれるに決まっている!またしても、好奇の目に晒されるのは真っ平御免!}

 そう思い、良い話でもあればと思いやって来た。



 そこに居たのが15歳の性同一性障害『自分の産まれ持った身体の性と、心の性(自分自身が自分の性をどう感じているか)が一致しない状態』のあの美しい椿辰也の妻と名乗る麗奈も来ていた。


 ス-パ-モデルのような高身長に加えて、小顔の八頭身美女で、こんな下町情緒溢れる昭和感漂う街並みには到底ふさわしくない、それこそ有名雑誌から飛び出して来たような美女。

 まぁ~!何とも人の事は分からないものだ。あれだけ人々からの羨望の眼差しを一身に浴びていた麗奈にそんな問題が有ったとは————


 あれ——ッ?という事は産まれ持った身体の性は男性という事になる。


 この麗奈は、別に五体不満足と言う訳ではないが、性同一性障害と言うだけで、弟が知的障害者で、母一人では大変だと思い、たまたま付き添いでやって来ていた。


 そう言えば二〇一五年四月某日のある日、東京都台東区浅草に有る、この〔OUGI探偵事務所〕にやって来た、一方の辰也であり葵と言われている人物は、何とも怪しげな風貌の目深に中折れハットのホンブルグを被り、更にはサングラスの為、ハッキリとした年齢や顔形は確認できなかった。


「確かに言われてみれば、髪もふさふさしていて首回りも髪の毛で覆われて、濃い髭を生やしていた。あの時感じた疑念?それは無理矢理体全体を隠そうとする意図がヒシヒシと感じられた」


 要するに神経過敏になり必要以上に隠しきっている。

 それが余計に怪しく写っていた。


 こうして偶然の一致で顔見知りとなった『オオカミ怪人』葵であり辰也と性同一障害の麗奈、更には知的障害の画家田村洋介の3人は親しくなって行く。


 だが、東京表参道にあるベンチャー企業BESTの社長で仮面舞踏会の主催者でもある田所社長と知的障害の画家田村洋介は親しい友人。


 更には高名な医師と椿辰也は兄弟らしいが………

「エエエエ————————ッ!」

 辰也と葵は同一人物で、患者として長期間診療に当たって貰っていたのでは⁈


 徐々に複雑に絡み合う人間模様の実態が分かって来る。

 この関係には何が隠されているのか?

 そこには恐ろしい・・・


『それでは実際には葵は一体誰で?本当に多毛症なのか?それから………性別もはっきりしない?母親は多毛症では無いと言っていたが?』

 その実態はもう少し後で判明する事になる。 





 

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