第12話⁂もう一人の犯人⁈⁂
六月某日、寺内琢磨が母殺害事件を起こしたあの日、仕事を終えた琢磨の跡を付ける人影が有った。
そろ~りそろ~り付け狙うその人影は、琢磨が家に付くまで続いた。
その人影の正体少年『A』は居場所を確認するや否や、一旦ゲ-ムセンターで時間を過ごしている。
この少年『A』は、特にガラの悪いこの『✕町』界隈のゲ-ムセンターに消えて行った。
実は…この少年『A』は、過去にも何度か琢磨の跡を付けて様子を伺っていた。
一方の琢磨はアパ-トで母の里美が帰って来るのを、今か今かと待っている。
やがて10時過ぎに母親が帰宅。
だが、母の里美が帰って来るや否や、開口一番、琢磨が怪訝な顔で「話がある!」とさも不愉快そうな顔で怒鳴り散らすので、慌てて居間に入った母の里美なのだ。
最近とみに化粧が濃くなり、帰宅の遅くなった母の里美が、自分の財布からカネをくすねていることに不満だったが、更には、大事な彼女への無言電話、母里美に言いたいことは、山ほどある。
琢磨はまず借金について尋ねた。
そして…自分の財布からくすねている事も聞いてみた。
だが母親は「あんたには関係ない」とにべもない。
その言葉にキレた琢磨は「真理に無言電話したろう」と声を荒げた。しかし母里美は「知らんわ」と切り捨てた。
カ———ッ!となった琢磨は顔を拳で殴った。
すると母が口から血を出し床にバタンと倒れた。
その直後に、ハッと我に返り琢磨は家を飛び出した。
母の里美は軽い脳震盪を起こしているが、死んではいない。
そこに先程琢磨を付けて来た少年『A』が、ゲ-ムセンターでも特にガラの悪い不良たちと時間を潰した後、琢磨の母里美に積年の恨みを晴らす為に、アパ-トの陰で様子を伺っていたが、その時に琢磨がアパ-トから駆け足で出て行った。
{これは奇遇、やっと恨みを晴らす事が出来る}そう思った少年『A』は、早速琢磨のアパ-トに侵入した。
存外早く、積年の恨みを晴らすチャンスはやって来た。
早速、用心深くそろ~りそろ~り部屋に侵入したが、あいにく里美は気を失っている。
だが、直ぐに我に返り、スックリ立ち上がった。
「ウッフッフッフ~!よくも俺を捨ててくれたな~許せない死ね——————ッ!」
母の言葉も聞き入れず、顔や背中を蹴り、近くにあった金属バットを手にすると足や胸や腹を殴った。また、執拗に顔や腹を踏みつけた。金属バットでは、頭ではなく、より苦しむ躰を殴った。
どれだけ経っただろうか、目の前に、もう原形も留めないほど悲惨な姿になってしまった、血まみれで横たわる里美の姿があった。
この少年は一体誰なのか?
何故琢磨の母親をそれ程までに恨む必要が有ったのか?
◇◇◇◇◇◇◇◇
実は…この少年『A』は過去に残酷に殺害される人間の姿を見てしまった事が有る。
その時はひょんな事から運悪く、物陰からこっそりと見てしまったのだった。
だがその時の死に逝く様に興奮して、恥ずかしい話だが、興奮を抑えきれずに射精をしてしまった経緯がある。
その時の興奮が忘れられず『人の血をまた見たくなった。誰でもいいから殺そうと思った』
その時に真っ先に頭に浮かんだのが、誰有ろう少年『A』を置き去りにして、琢磨だけを連れて逃げ去った母里美を、もっとも残酷な形で殺害する事だった。
今でもあの日の光景が頭の隅から離れない。
泣き晴らし、泣き叫び、涙も枯れ果て、疲れ果てて知らぬ間に眠り付いた、あの6歳の日の事を………。
「ああああ~~アァ————————!興奮する!ワッハッハッハッハ~!ワハ!ワハ!あの日の事は忘れない!」
もっとも残酷で、もっとも悲しい再会ではあったが、それ以上に最上級の興奮状態、オーガズムに達した少年『A』。
興奮して、射精をしてしまった。
何故このような悲惨な親子関係になってしまったのか?
そこには過去の様々な人間関係が、絡んで来る事になる。
過去に一体何が有ったのか?
それは徐々に紐解かれて行く。
だが、DNA鑑定すれば犯人特定に繋がるのに、何故寺内琢磨が死刑囚になってしまったのか?
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