第10話⁂犯罪者寺内琢磨!⁂



 寺内琢磨は?僅か三十三歳で死刑執行と言う形で人生に幕を閉じた?


 どうしてこのような狂暴犯になってしまったのか?

 無念の死を遂げた母親ではあったが、琢磨の人生に大きな影を落としたのは、誰有ろう母親の存在である。


 目を覆う残酷な犯罪者となった琢磨だったが、余りに身勝手な母親の責任も重大だ。同情の余地は否めない。


 ◇◆◇

 模範生だった寺内は少年院を出所して、唯一のより所である真理に連絡を取るも繋がらず、また住居も変更しているので、探しようがないので四苦八苦している。

 それでも…必死に居場所を探し回っている。


 そんな時に保護観察官から養子縁組の話を頂いた。

 要するに犯罪者として生きる事は大変な事、そこで養子縁組をして名前や住所を変更して、新たに生まれ変わるという話なのだ。


 言われてみれば至極当然な事。

 こうして天涯孤独になってしまった寺内琢磨は、養子縁組をして生まれ変わる事になった。


 それでは一体どんな家庭に養子に入ったのか?

 普通の子供でも養子縁組に縁遠い子供が多いというのに、おいそれとそんなに美味しい話が転がっている筈が無いのだが?


 だが、それはある日の電話から始まった。

 こうして某日、保護観察官に呼び出されて、保護観察所に出掛けた琢磨なのだ。


「君を是非とも養子にしたいと言っている夫婦がいるんだ。一度会ってみるかい!」


{また何で、もう十七歳にもなる子供を養子に欲しいってどんな人なんだよ。ましてや少年院上がりの俺を?}

そう思った琢磨だったが………。


{犯罪者の俺が生きて行くためには、何とも幸運が舞い降りたものだ}と思い早速OKをだした。


 そして…早速その義父母との対面の日がやって来た。

 何とも感じの良い中年夫婦に、今までの自分の試練はきっとこの両親に会う為の試練だったに違いない。


 今まで、まともに両親の愛情を受けた事の無い琢磨は、嬉しくて嬉しくて目頭が熱くなるのを感じた。


 それはそうだ。父親はギャンブル狂で大酒飲み、その挙句肝硬変を患い、呆気なくこの世を去った。

 母はと言うと前出にも紹介した通り、男に身ぐるみ剥がされ借金地獄に陥り、息子の琢磨に最も酷い形で殺害されて悲惨な最期を遂げた。



 こうして保観察官に付き添われて、ある日の事、その家庭に赴いた琢磨。

何とも立派な豪邸で、度肝を抜かれた琢磨では有ったが、何かしら………まだ子供ではある琢磨だが………感じる………な~んとも形容しがたい普通ではない………何と言ったら良いのか………堅気ではない?


 会社の経営者だと聞いているが、一体この父親と名乗る男の正体は⁈

実態は定かではないのだ。


 立派な門構えの家の前で保護観察官がインタ―ホンを押した。

すると大きな自動扉が開いた。


 暫く待っていると、何ともガッシリとした、体格の良い、如何にも威圧感の有る、どこか普通ではない雰囲気を醸し出した男二人が、ギラリとした鋭い目つきをして辺りを警戒する様子で現れた。


 すると今度はその後ろから、義父母が現れニコニコと向かい入れてくれた。

 一瞬とんでもない家に来たんじゃないだろうか?

 疑念を持った琢磨だったが、一気にその不安も解消できた琢磨なのだ。


 だが、琢磨には計り知れない試練が待っている。

 琢磨はどうなってしまうのか?









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