第27話 信じるもの
暴動が起きているという街の手前で降ろされた俺達を含めた冒険者一行。街の方を見てみたが今は煙などは上がっていない。もう暴徒に占領されてから結構時間が経ったのだろうか。
「では今から馬車に乗り合った者同士で連携しながら街を包囲する。中から反乱軍などが出てくるかもしれないが一人残らず殺しても構わない。その場合は報酬は少しだが上乗せしよう。但し、1人たりとも逃がさないこと。最低でも捕虜にするように、以上だ。また戦況が変われば新しい命令を出す」
またしてもざわつく冒険者達、俺達もそうだ。流石にこの依頼ヤバいんじゃないか?という疑念が広がっていく。だが一先ずは従うしかない。各自そのように判断したようで指定された持ち場へと移動を開始する。そんな周りの流れに乗って俺達も一緒に行動を開始した。
「なんだかいよいよきな臭くなってきたわ。今からでも帰りたいんだけど・・・」
「俺もそう思ってたけどどうするかなぁ。この人数を敵に回す可能性ってのもあるししばらくは様子を見よう」
俺達と同じようなことを思っている人は各地にいたようだが、本当に惨状になるかどうか分からない段階で和を乱すのはよくないと考えて誰も行動には移さなかった。このとき誰か一人でも勇気を出していれば結果は大分違っただろうが・・・
「報酬につられたけど外れだったかな?後味が悪いから対人戦はあまりやりたくないんだけど、君達もかい?」
「俺達もです。まして相手は同じ国の一般人って可能性もありますからね」
「お前らと同じだ。正直命令を無視したいがどうする?他に思ってるやつは大半だ。誰かが動けばこの計画は破産するだろう。最初に名乗ったものは称賛か迫害かの2択だがな」
馬車で乗り合った他のパーティーも同じことを考えていたようだ。よかった、俺だけじゃなかったんだな。
「なんとか戦いが始まる前に街の中とやり取りができればいいんですけど・・・何かいい案ないですかね」
「行動するなら夜こっそりってことになるけど味方に見つからないのも街の中で交渉することも両方難しいね」
「俺の所の連中じゃちょっとできそうにねぇな。腕っぷしは自信があるんだがそういう隠密行動は向いてねぇ」
3人それぞれ悩むが答えは出ない。そうこうしているうちにも配置が完了しそうだ。
「一度各自のパーティーに持ち帰りましょう。そして30分後にここに戻ってくるまでに思いつかなければ今日はやめましょう」
俺の提案に2人も納得してくれて各々のパーティーメンバーの元へと向かっていった。
「というわけで、夜のうちになんとか街に潜入して相手方と接触を図りたいんだけどいい案はないか?」
「うーん、難しいわね。交渉なら街中に入ってしまえばもしかしたらなんとかなるかもしれないけど」
「私ならばれずに侵入まではできそうだけど交渉は無理だわ・・・」
2人が同時に発言する。急に解決の糸口が見えそうな2人の意見に3人それぞれがお互いを見合わせちょっと笑ってしまった。
「アヤ、本当にいけるのか?」
「確実とは言えないけど隙を見つければ街中までダッシュすればばれずにいける可能性は十分にあると思う。それに夜闇を駆ける私を私と認識できる人なんていないでしょ」
それは確かにそうだが・・・俺とミサキと陽炎のメンバーを除けばな。
「まぁいい、とりあえずいけそうということだな。だが最悪の場合追い出されたら戻ってこないといけないからその自身までないなら難しいな」
「ミサキのほうは・・・特に言うこともないか」
「私が行くのは無理そうだからアヤにこういった時はこう返してみたいな感じで教えるくらいかしらね。想定外な質問されたらアドリブに頼ることになるけど」
「いけそうって判断してもいいのか?ほとんどアヤ次第だ」
「やって見せましょう。もし駄目ならどこか遠くまで逃げてきます」
「まぁアヤ1人いなくなってもしばらくは残りの2つのパーティーにさえ説明すればごまかせるだろう。頃合いを見て戻ってきてくれるならやってみる価値はありそうだな・・・おっと、そろそろ時間だ。すぐ戻ることになると思うが待っててくれ」
俺が戻ると既に2人は待っていたようだ。その様子だと何も案は出なかったんだろうな。
「一応聞いてみるがやっぱりいい案はなかったか?」
「彼にはもう話しましたがお互いにいい案は出せませんでした。貴方の方はどうです?」
「可能性はある。だが君達のパーティーにも協力して欲しい」
「ほぅ、面白そうなことを言うな。聞かせてみろ」
そして興味深々な2人を前に俺達の計画を発表する。信じてもらえないだろうなと思ってはいたが黙って最後まで聞いてはくれた。
「ふむ、そのアヤという少女ならいけると。にわかには信じがたいですが貴方達が3人でやっていけてることから信憑性はありますね」
「アヤってやつの実力を見せろ。それで判断する」
そう言われたのでアヤを連れてきて彼らの前で動きを見せてみせた。予想をはるかに超える速さに唖然としていた。全く、みんなこうだ。
「・・・驚きました。確かにこれならいけるかもしれませんね。わかりました私の方は協力しましょう」
「俺もだ。こんなの見せられたら期待したくなっちゃうぜ」
そして計画を2人に話す。実行のタイミングは今日の夜だ。周りを見渡すと既に街の包囲は完成していて後はお互いがいつうって出るかという状態になっている。あまり時間は残されてはいない。緊張の中作戦は開始された。
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