第18話 初依頼
荷物を置いた俺達は早速仕事を探す。多少の蓄えはあるが半年ほどしかもたない。そして、パーティーとしての実績を積んで人集めを容易にするためにも初動はとても大事だ。
「さて、ちょうどよさそうな依頼はないかな」
商会やギルドを周って探すが、手頃な依頼はなかなか見つからない。3人という人数は護衛としては中々信頼されないようだ。
「うーん、困ったね。護衛とかは他のパーティーと一緒じゃないと難しそうだな。とりあえず個別の荷物運搬とか薬草採取とかに絞って探してみよう」
少人数ですぐに受けられる依頼と言えば主にこの2つ、後は迷子の子供やペットの捜索とかである。
「そうね。収入は想像しにくいものが多いけど受けれるものを探すしかないわね・・・」
ミサキの言う通りこれらの依頼は報酬が依頼主や内容によって大きく変わることが多い。だから護衛などの安定した収入が見込めれるものに比べると若干避けられ気味である。逆に狙い目と言えばそうなのだが。
そしてここから離れた山の中の小屋に荷物を届ける依頼を見つけ、これを受けることにした。道中の旅費等の必要経費も全て持ってくれる依頼とのことで待遇がとてもよかった。
依頼主の元へ行き、依頼内容と報酬の確認をする。
「この箱をこの山のこの辺りにある小屋に住んでいる友人に渡すのが依頼だ。報酬は金貨10枚。それと道中かかったお金は全部出そう。期限は1か月以内。これは小屋に届けるまでだからその後はいつでも構わない。友人の名前はピーターっていうんだけど彼に受け取った証拠を貰って欲しい。それをここに持ってきた時点で依頼完了とする」
依頼主の指さす地点を見てここからかかるおおよその日数を想定する。大体1週間くらいか。もちろん何事も無ければなので実際は10日くらいかかってもおかしくないだろう。
「わかりました。3点確認しておきたいことが」
「ふむ、大体想像はつくから答えよう。1つ、もしその小屋に誰もいなかったら?この場合は申し訳ないが3日はその小屋の付近で待っていて欲しい。それでもだめなら戻ってきてくれ。そして2つ目、なんらかの原因で箱を消失したり期限までに小屋に行けなかった場合のペナルティだが、金貨10枚を払ってもらう。もちろん、道中にかかったお金も払わない。最後は・・・箱の中身を見てもいいか?かね。すまないが、見せることはできない。だけどちょっとやそっとの衝撃では壊れないからそこは安心してくれ。これでいいかい?」
「完璧です。いやぁ、話が早くて助かります。わかりました。その条件で受けましょう。友人にはあなたの名前を言えば問題ないですよね?」
「あぁ、それで大丈夫だ。二コラからの預かり物と言えば向こうもわかってくれるだろう。ちょっと変わった人だけど気にしないでくれ」
「ではお預かりします」
依頼主から箱を預かり、館を後にする。やたらと雰囲気のある人だった。報酬も悪くないし、もしかしたらすごい人だったのかな?まぁそんなことは後回しだ。今はこの依頼を達成させることだけ考えないと。
「さて、依頼内容の確認をしよう。ここにこの箱を届ければ依頼達成だ。ざっと計算してみたが最短でいけたとしても1週間はかかる。途中2つ泊まれる街と村はあるがそれ以外は野宿ということになる。しかも2つ目の街からは馬車などは出ていないから徒歩だ。かなり体力を使うことになるから覚悟して欲しい」
「改めて思うけど初めてにしては結構攻めた依頼ですよね。まぁ1か月以内に行けばいいのだからゆっくりできると言えばそうなんだけど」
「そうだ。今回の旅は各々の限界を確認する場でもある。少しでも無理だと思えばなるべく休むようにする。依頼は最悪失敗してもいい。3人で戻ることを最優先にする」
もちろん、失敗すれば結構な痛手だ。しばらくは依頼続きという可能性もある。だが、メンバーが生きてさえいればどうにでも立て直しはきく。どのパーティーもだが結局一番大事なのは人なのだ。
「では出発はいつにします?流石に今回は十分に準備しないといけないから今日は無理よね・・・」
「今日はミサキに買い出しに行ってもらう。このお金で必要なものを買って来てほしい。後で俺が確認する。これもテストだと思ってくれ」
「わかりました。では今日中に必要なものを買ってきます・・・その前にみなさんの持っている物を確認させてください」
ミサキは俺とアヤの部屋にあるものを一通り確認する。余分なものを買わないためには大事なことだ。
そして何かをメモしたかと思うとすぐに市場の方へと言ってしまった。手際いいな。
日も陰ってきたころ、ミサキは両手いっぱいの荷物を抱えて戻ってきた。まだ収納魔法を習得していないため大変そうである。
「よし、じゃあ確認するから今日はもう休んでくれ。最悪足りないものがあったとしても明日買い足せばいい」
ミサキが部屋へ戻っていったのを確認した後、彼女が買ってきたものを確認する。もしここで足りないものに気付かずにピンチになればそれは俺の責任だ。なんでもないはずの道具の確認なのに妙に緊張してしまう。
「いかんいかん。こんなことで気を遣ってしまっては。もっと余裕を持って。そうしないとできることもできなくなる」
自身に言い聞かせて平常心を取り戻す。最初は緊張するがそれだけだ。後は油断しなければいい。
そして1つ1つ確認していった。ミサキは足りないものをきちんとわかっているようで必要な数をきちんと揃えていた。戦闘の経験がない分こういった知識は普通の人よりも詳しいのだろう。これからも彼女に頼んで大丈夫そうなことに安堵する。
「よし、これで明日は大丈夫だ。何か忘れている気がするけど・・・そういえば何か忘れている気がするな、まぁ大したことじゃないだろう」
ミサキにお釣りをもらい忘れていることに気付かずそのまま寝てしまう。翌日彼女が返してくれたからよかったもののあのまま黙っていたら思い出すことはなかったかもしれない。まだまだ心の余裕がないことを2日目にして痛感するのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます