第17話 別れ

夜が明けた。いつも通りの朝だがここで起きるのはおそらく最後になる。俺は私物をまとめていつでも出れる準備をする。当分は同じ街の中で別の宿を取るのだが、今よりも少し安い宿になる。


「お、もう準備終わったのか?今外から戻ってきたところだけどまだ誰もいなかったよ」


「リーダー、おはようございます。まだちょっとやることが残っているんであと1時間くらいってところですかね」


「急がなくてもいいよ。別に逃げるわけじゃないんだからね。朝食くらいは取っていきなさい。昨日ので最後って思ってたかもしれないがそんな薄情じゃないよ」


「すみません。お世話になりっぱなしで・・・」


「いいんだよ、俺が好きでやってることだ。ま、君達が俺達を追い越した時にはとびきりのものを奢ってもらうとしよう」


「・・・そうなれるように頑張ります」


「簡単には追い抜かせるつもりはないけどね。楽しみにしてるよ」


そしてリーダーと2人で朝食を済ませる。その間にアヤも準備を終わらせたようだ。


「よし、後はミサキが来ればお別れだ」


「本当に来るのか?結局会ったの1回だけだろ?」


「多分・・・最悪来なくても2人でやっていく・・・予定です」


突然不安になるようなことを言われるが、その心配は杞憂に終わる。


「あれ?あの人か?こっちに来てるぞ」


ミサキがちゃんと来てくれたことに安堵する。2人でもやっていくつもりではあったがもしそうなったら俺の負担が大きすぎたので正直助かった。


「この人たちは?」


「あぁ、今まで俺がお世話になったパーティーのメンバーだ。そうだな、陽炎って言えばわかるか?」


その言葉を聞いたミサキはかなり驚いていた。それもそのはずだ。このパーティー名前はこの辺りではかなり有名だ。


「そんなすごいところを抜けてまでパーティーを結成するの?正気なの?・・・いや、貴方達2人の実力を見たときにそれに気づくべきでしたね。私としては優秀な方達と組めるのであれば文句はないです」


「まぁそういうことだ。これからよろしくな。そう言えばパーティー名だけど・・・決めてなかったな。ぶっちゃけ実力で有名になればよっぽどダサくない限りなんでもかっこよく聞こえるもんだからあまり拘らないんだけどな」


「それなら私が決めてもいいですか?」


「おう、アヤ。良さそうなのを頼む」


「うーん、疾風果敢とかどうかしら?素早い決断力でなんか、こう世の中をよくするとか」


「まぁ意味なんて俺は気にしないからな。ミサキが良ければこれにするけど」


「ちょっと恥ずかしいような気もするけどもっといいのが思いつかないからそれでいいわ」


「ふむ、疾風果敢か。アヤ君と出会ってからのコウキをまさしく表しているような言葉だね。いいんじゃないかな」


「よし、じゃあ決定だ。アヤ、ミサキ、ちょっとだけ待っててくれ。最後にみんなに一言いいたいんだ」


陽炎メンバーの方を向き、俺はこの時のためにずっと考えていたことを話す。


「ここに入るまで俺はひよっこでした。でもそんな俺をみんな暖かく出迎えてくれて俺に余すことなく技を心を教えてくれた。本当に感謝している。でも俺はやるべきことを見つけてしまった。みんなには申し訳なないが勝手な理由でパーティーを去る俺を許してくれ」


「おいおい、謝ることはないぜ。お前の成長を見れたのは俺達にとっても嬉しいことだった。お前から学べることもあったしな。しばらくはちょくちょく会うだろうし堅苦しすぎるのはごめんだぜ」


「そうね、昨日もしたし今日はこのくらいでいいわ。あんまり泣かせるようなことを言うと怒るわ」


「コウキ、どうしても困った時は頼ってもいい。ただ君が背負いすぎて潰れることが不安だ。それだけだ」


陽炎メンバーの一言一言が俺の胸に突き刺さり、思わず涙が溢れる。本当は泣かないつもりだったのに。


「みなさん・・・本当にありがとうございました」


最後は笑顔で、元リーダーの言葉で俺は暖かく送り出された。全く、なんて幸せ者なのだろう。


「みんないい人すぎるわ・・・この世の優しさ全部あそこにあるんじゃないかってくらいに感じる。実力だけじゃない、あのパーティーどうなってるのよ・・・」


「私も1か月程いたけど皆さん優しすぎて逆に困ってしまうこともありました。でも、そんなパーティーだからここまで来れたんだというのは伝わってきました」


2人がこの状況を見て色々と分析していたが今の俺にはこれっぽっちも入ってこない。



宿を離れてしばらく経ち、ようやく落ち着いてきた。丁度新しい宿が近づいてきたタイミングだったので良かった。


ここで話を切り出そうかと思ったが先程の光景を全部見られていたことを思い出すとどうも話を切り出しにくい


「えーと、そろそろ着くな。忘れ物とかはないよな?」


「どっかの泣き虫さんじゃないから大丈夫よ」


「わ、私もちゃんと確認してきたので」


少し寂れた宿だが、今の手持ちの資金から考えるとこれ以上高いところは厳しい。だが普通に暮らす分には問題ない。


「さて、これからはここが拠点だ。荷物を置いたら早速依頼を探しに行こう。1時間後にここに集合」


もたもたしている時間はない。ここから俺達のパーティーとしての活動が始まった。

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