第13話 答えは何だ

馬車の中の雰囲気はあまり良くはなかった。原因は言うまでもない。ケンイチが俺とアヤに対して鋭い視線を向けているからだ。


(今ここで何を言っても逆効果だよな・・・誤解を解くような機会があればいいんだけど)


誰もしゃべりださず聞こえてくるのは馬車の音だけ、沈黙の空間がそこにあった。しかし、急に馬車が止まったことでその沈黙は破られる。


どうやら前方に魔物がいるらしい。まだ距離はあるがこのままでは向こうが気付くのも時間の問題だ。俺達はすぐに戦闘の準備をし、護衛役2人を馬車付近に残して魔物の方へと向かっていった。


流石に魔物もこちらの動きに気付き、辺りに緊張が走る。遠くから見たときはそうは思わなかったが近づいてみるとやたらでかい。大きさに圧倒されそうだった。


そんな俺をよそにケンイチは魔物に突撃し、槍を突き刺す。攻撃は効いてはいるが有効打とは言えない。それどころか今の一撃で怒らせてしまったようだ。


「ケンイチ、少し攻め過ぎだ。こちらのサポートが追いつかない」


「・・・すまねぇ、だがまだ俺の攻めは終わらねぇ」


先手必勝、そんな戦いで魔物に反撃の隙を与えない。防戦一方の魔物はついに痛みに耐えきれずに倒れてしまった。


(すごい槍捌きだった。この年でこれだけの技を使うのは大したもんだ)


関心している俺を見たコウイチは自慢げだ。


「ふん、俺の槍捌きに見とれたか」


俺は何も言い返さず剣をしまう。そして、再び馬車は動き出す。その後も何度か魔物と遭遇するが全てコウイチが我先にと飛び出して狩っていった。そんなに俺達に動かれたくないのだろうか。


「リーダー、ちょっとこれはよくない気がするんだけど」


「うーん、そうだねぇ。次魔物にあった時は君に戦わせてみようかな。それを見れば彼も思い直すかもしれないし」


こちらへコウイチが戻ってきたのに合わせてリーダーが次は俺が戦うのを見ていて欲しいということを伝えた。あまり納得はしていないようだったがリーダーには逆らえないと思ったのだろう。了解してくれた。


しかし、それから目的の場所にたどり着くまで魔物と出会うことはなく、微妙な空気のまま街に着いてしまった。


街へ着いたリーダーは真っ先に依頼主の元へ行き、内容の確認をしてきた。ここからさらに徒歩で1日程の山の中に生えている薬草の採取が依頼内容だが、この山に住んでいる魔物は他の場所よりも強く、普通の冒険者では太刀打ちできないらしい。


「うーん、このまま向かってもいいんだけど流石に今日は疲れているよね。明日の朝出発にしよう。往復で2日かかるから買い足しも必要だ。というわけでコウキ以外は解散。宿はジョンが取ってくれる」


「ちっ、こういう時だけ副リーダーなことを利用しやがってよぉ」


副リーダーはわかるけど俺も?と思ったがすぐに理由が判明する。


「さて、これが今回の依頼書だ。そして今のこのパーティーの手持ちはこれだ。足りないものは何かゆっくり考えてみてくれ」


なるほど、俺を試しているのか。確かに、持っていく道具は非常に大事だ。必要以上に買いすぎるとあっという間にお金は無くなるし足りなければ最悪死んでしまうことだってある。非常に大事なことだ。


まず依頼書を見る。そこには取ってきて欲しい薬草とその量、生えていることが多い場所等の情報が書いてある。次に俺は地図を見る。山へ向かうルートはある程度固定されていたのでイレギュラーは少なそうだ。


そして道具を確認する。応急処置用、携帯食料、その他山登り用の道具は一通りあった。ここからさらに足りないものと言えば・・・


(薬草の鮮度を保つ容器みたいなものってあったほうがいいのか?)


俺は調達する薬草の情報を調べる。しかし、今回の薬草はそれほど繊細な物でないらしく、採取後1週間は効果が変わらなかった。


(次にありそうなものは・・・魔力を回復するポーションか?いや、それは出る前に全員で確認する。この依頼特有の何かがあるはずなんだが・・・)


答えは見つからず、ついに降参する。


「わかりません、足りていると思うのですが・・・」


「あってるけど惜しいね。すごくしょうもないけど今回は人数が増えたからその分足さなきゃいけないんだ。だからある意味全部あるけど全部足りてないってこと。もちろん人数分いらないものもあるんだけどね」


「うーん、ずるいって言いたくなったけどよく考えたら新規メンバーが加入した時に忘れてましたは駄目だな」


「でも採取する薬草の特性まで調べたのはさすがだね。取った後に気付いたら大変なことになることもあるからしっかり調べないとね・・・大体は依頼書に書いてくれるんだけどたまに書かないやつもいるから」


(あー、この間愚痴っていた気がする。全ての依頼主がちゃんとしているってわけじゃないもんなぁ)


「そうですね。気を付けます。戦う以外の知識も無いとひどい目にあうってこと胸に刻んでおきます」


「そう、それでいい。じゃあ早速買いに行こうか」


買い足しを終え、複リーダーが取った宿へと戻る。部屋は個別になっていたので安心した。このままコウイチと同じ部屋になったりしたら気まずいからな。


(結局実力を見せる機会はなかったからこうなっちゃったんかな。そもそも見せたところで納得してくれるのか?アヤの実力を見せたほうが早いんじゃないか?)


色々と考えてみたものの答えは出ない。まぁ明日になればなんとかなるだろう。

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