第12話 後任

俺達の帰還にリーダーのジョンは少し驚いていた。まぁいつ帰るかは言っていないかったからな。


「いつ帰ってくるのか話題になっていたところだ。無事に戻ってくれて嬉しいよ」


「すみません、急なことだったんで勢いで色々決めてしまって。迷惑かけたことはわかっています」


「いやいや、気にしないでいいよ。もうじき君達はパーティーを離れるんだからその準備はこちらもしている。まぁ君を引き留めたい気持ちもあったんだけどね」


「すみません・・・、それにしても何かしら依頼でも受けていて誰も居ないかと思っていたんだけど今日は休みなんです?」


「そうだな、今日は休みだ。依頼を受けたから明日出発する。君の穴埋めとなる人も一緒に来るんだけど・・・どうする?君達もよければ来るかい?コウキもアヤ君もまだここで学ぶことはあるだろう?」


「ぜひ、お願いします。最後まで学ばせてもらいます」


「私からもお願いします。でも穴埋め役の人は気にしないんですかね?」


「まぁ大丈夫だろう。君達が原因で募集をかけたことは知っているからね」


「なら大丈夫かしら、それにしても長旅で疲れたから空いている部屋で私は休むわ。コウキ、あとのことはよろしく」


アヤは空いている部屋を取ってすぐに入っていった。実際旅の中で彼女にはかなり頑張ってもらった。今はゆっくり休んでくれ。


「・・・今回の旅でのことを聞いてもいいかな?アドバイスできることがあれば先輩として何かしてあげようと思う。せっかくうちのパーティーを出たのに何もできなかったら元同じパーティーメンバーとして僕たちまで恥ずかしくなってしまうよ」


「ではお言葉に甘えて・・・」


俺はこの旅で新しく加入予定のミサキの話、アヤに訓練を行った話などをした。リーダーは黙って最後まで聞いていた。


「ふぅん、思ったよりちゃんとリーダーとしてるんだね。心配したが杞憂だったようだ。これなら俺が下手に口出さない方がよさそうだ。期待してるよ」


何を言われるか心配だったが褒められて嬉しい。だが続けざまにリーダーは口を開く。


「君とアヤくんはいいけれどミサキさん?だっけ戦闘に参加しない彼女はもう少し色んなことをさせてもいいと思うな。それに才能値の割にできることが少なすぎるように感じるけど何か聞いた?」


「いやー、戦闘が苦手くらいしか聞いてないです。今度会ったときにもう少し聞いてみます。そこまで気が回りませんでした。流石です」


「いやいや、まぁ君のことだからいずれ気づいていたとは思う。他になんでも何か聞きたいことあればあるかい?」


「いえ、あとは実際にやっていきながら変えていこうと思います。今日はありがとうございます」


「じゃあ、明日。ここでの最後の旅になるかもしれないけどしっかりしてくれよ」


リーダーと話すことで自信がついたが、同時にこことのお別れの時間が近いことを感じずにはいられなかった。



「今でも思うよ、これで良かったのかってね」


誰もいない部屋で1人ぽつんと呟く。静けさが余計に寂しさを増させた。


(明日までにはいつもの調子に戻さないとな。もう寝よう)


時間は遅くはなかったが、これ以上起きていても仕方ない。おやすみなさい・・・




「・・・もう朝か、さて準備しないとな」


朝日が差し込み目が覚める。十分に休めたので疲労は取れている。これなら今日も大丈夫だ。


旅の準備をしているの他のメンバーも次々に起きてくる。ちゃんとアヤも起きてきたので安心する。


「おう、昨日戻ったときにはお前もう寝てたからな。旅の道中で何があったのか聞かせてもらうぜ」


「はいはい、話します。でも期待されるような大したことはありませんでしたよ」


「いいのいいの、聞くだけで楽しいんだから」


相変わらず皆優しい。このようなやり取りもあと何回だろう、急に寂しくなる。昨日からこうなってばかりだな。いかんいかん。


「よーし、みんな起きているな。コウキ達はまだ会ったことが無いから顔合わせしておこう。彼がケンイチだ。コウキと同じ年だから仲良くな」


「こいつが俺の前任者か。こいつより優れているってことを証明してやりますよ」


(大丈夫か?リーダーはこのような人をパーティーに入れないと思ってたけど)


「よろしく、先程も説明あったがコウキだ。短い間だがよろしく」


「アヤです。よろしくお願いします」


「へっ、彼女連れてパーティー離脱って駆け落ちかよ。お楽しいこと」


「ま、まぁこれであいさつは終わり。出発まで30分くらいだから準備を終わらせて宿前に集合ね」


解散後、広間に俺とアヤがリーダーに残された。


「すまない、君達のことをさっき言ったような理由で出ていく勝手な奴って思っているんだ。悪気はないから許してくれ」


「いえいえ、そう言われても仕方ないとは思ってます。だけどもう少し穏やかにしてほしかったな」


「ははは、それはそうだね。まぁこの旅の間に誤解は解けると思うよ」



そして30分後、目的の街へ向かう馬車へと乗り込む。今回は7人と大所帯だ。少し窮屈な旅が始まった。

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