第4話 想定外
「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺も君に何が起きているかよくわかっていないんだ」
「貴方のスキル・・・本当に才能を80にするスキルなんでしょうね?それじゃあこの状況の説明がつかないんだけど」
そう、今の彼女が見せたものは才能のあるものが1つの道を極めたときにようやく到達できるかどうかといったレベルのもの、いやそれ以上かもしれない。そんなものが才能値を80にして一晩で習得できるはずがないのである。
「いや、確かに俺のスキルは昨日言った内容であっている。スキルの調査をしてもらったからな」
この世界でスキルの所持、内容を調査するのは実は結構面倒くさい。魔力版という専用の魔道具に魔力を放出して魔力の流れの乱れから持っているスキルの傾向を特定し、そこからさらに具体的にどれ程の効果があるのかまで幾つかの工程を踏む必要があるからだ。
「うーん、それじゃあますますわからないわね」
悩んでいるアヤを見た俺は一つの仮説が思いつく。
「お前も何かスキル持ってるんじゃないか?」
先程スキルの調査は面倒ということを説明したが、そのせいでスキルの有無を調べない人もかなりいる。だから実際にスキルを持っていても気づかない人というもの居る。
「可能性はないとは言えないわ。私はスキルの調査をしたことが無いもの・・・そうね、ちょっとこれからスキルを調べに行くから付き合ってくれない?」
「今日は空いてるからね。こうなりゃとことん謎を明かしていこう」
俺とアヤはスキルを調べれる場所へと向かい、早速調べてもらうことにした。
「スキルを調べるお金まで出してもらって悪いね。まぁあまり持ち合わせが無かったから助かるんだけど」
「まぁ俺にとっては大した金じゃない。さっさと調べて結果を教えてくれ」
そして彼女が調べ終わるまでの間、俺は付近をうろついて時間を潰す。2時間くらい経過し、戻るとアヤがちょうど施設から出てきたところだった。
「どうだった?なにかわかったか?」
俺の問いかけに対して微妙な顔をする彼女。何か変なことでも言われたのか?
「とりあえずここで話すべきじゃないからどこか人のいない場所で・・・」
聞かれたらまずいことでも言われたのだろうか。とりあえず彼女の言う通り、個室のある店に移動し、そこで話を聞くことにした。
「結果から話すわ。・・・私もスキル持ちだったわ。そのスキルは努力効率上昇。人より、努力の効率が3倍になるって言われたんだけどじゃあ私の今までの頑張りは何だったんだって話になるんだよね・・・」
確かにおかしな話ではある。だが、これらを全て納得させる答えは一つだけある。
「君の想像していた才能値ってのは実際はもっと低かったってことじゃないか?そして俺のスキルに関する認識も多分間違ってた。才能値が変わった時今までの努力分から再計算されてあの速度での移動ができるようになったと考えるのが自然だ」
「そうなのかもしれないわね。私は今まで才能値は36だと思ってた。でもそれがスキルによって疑似的にそう見えてただけなのだとしたら・・・本当の才能値は12ってことになる。それであなたのスキルで80にしてもらったから大体6倍くらいの経験を追加で一気にしたことになってしまったのね。昨日の違和感はそういうことだったのかしら」
「はっきりとは言えないが多分そうなのだろう。それで君はこれからどうする?これほど強くなってしまった君を止めれる者はそうはいないだろう。だから君が道を外すようなことをするなら俺は君にかけているスキルを解除しなければいけなくなる。それでもいいというならこのままスキルをかけたままにする」
これだけは聞いておかなければいけない。そう強い決意の元、アヤへと問いただす。急なことに彼女は少し驚いたようだ。だが、すぐにその意図を理解したようだ。
「そうね・・・確かにこんなに急に力を持つと周りが見えなくなって今までの復讐とかやってしまう人もいるよね。私はそうならないとは思うけど絶対とは言えない。だから貴方に私を監視してほしいの。もし私が道を踏み外そうものなら容赦なくやってほしい」
「わかった。その時が来ればそうしよう。そうさせないようにできるだけ努力はするがな。しかし、俺はパーティーに属している身だ。俺1人の意見ですべてが決めれるわけじゃない。君にも来てもらう」
「わかった。それで全てを話してコウキのパーティーメンバーに納得してもらえたら一緒に行く。駄目ならその時はまた考えましょ」
駄目と言われたら勝手にしてくれと言いたいが、スキルを付与した責任がある以上野放しってのもなんだか間違っている気がする。そうなったらスキルを解除して彼女と別れるかパーティーを抜けるかの2択だ。
(普通くらいになるだけだったらこんなに悩まなくてもよかったのに、全く変なの引いちまったな)
「わかった。でも今日はオフの日だから全員揃ってはいないから話を通すだけだ。明日の朝今日と同じ場所へ来てくれ。もし来なかった場合はスキルを解除してそのままお別れだ」
その条件で了解してもらう。その他にも明日までなるべくその技を他の人に見せないように、他の人に今日のことを離さないように。ということも付け加えた。
「じゃあ、また明日。絶対行くからちゃんと話通しておいてね」
遠く離れてもこちらを向いて大きく手を振っている。余程嬉しかったというのが分かる。
アヤと別れた後俺はメンバーにどう説明するか、納得してもらえるかということに頭を悩ませる。うちのパーティーには手に負えない戦力だからだ。
「はぁー、とりあえず今宿にいるメンバーに話すしかねぇな。色々と言われそうだけど全部俺が悪いんだから甘んじて受けよう・・・」
嬉しそうに帰っていったアヤとは対照的に重い足取りで宿へと戻っていくのであった。
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