第1話「とおりゃんせ」

駅から離れた道中。


朝江が村へと続く道中を歩いていると、何かが不思議に思う


朝江

「風景は日本っぽいけど、古い建物ばっかりだな。」


その時代の違いに違和感を感じた朝江は母親に連絡しようとした。


朝江

「そうだ!お母さんに連絡しなきゃ!」


朝江はバッグからスマホを取り出し慌てて連絡使用したが、

電波が届かなかった。


朝江

「あれ、おかしいな?繋がらないな・・・?」


朝江は電波の状況を確認すると

圏外だった。


朝江

「え~圏外?この時代って携帯電話がない時代だっけ?

 どうしよう・・・?」


朝江は母親に連絡にできない事に戸惑っていると

後ろからこの村の住人と思われる男性が声を掛けていた。


通行人

「もしもし、そこの君!」

朝江

「うわっ!」


朝江は後ろの男性の方を振り向いた。


朝江

「何ですかあなたは!」

男性

「なんだその恰好は!どこかの外人か?

 どこから来たんだ!」

朝江

「違います!私こう見えても日本人なので・・・」

男性

「そんな姿、この村の住人には思えないぞ!

 お前それでも日本人か!」

朝江

「あつ、いいえその・・・」


朝江の姿に突っ込んだ男性は

あの村の方に向かって去って行った。


朝江

「そうだ!あの村に入れば事情が分かるかも!」


村の集落


村の中には子供達の歌声がこだましていた。


とおりゃんせ


とおりゃんせ とおりゃんせ

ここはどこのほそみちじゃ

てんじんさまのほそみちじゃ

ちっととおしてくだしゃんせ

ごようのないものとおしゃせぬ

このこのななつおいわいに

おふだをおさめにおまいります

いきはよいよいかえりはこわい

こわいながらもとおりゃんせ

とおりゃんせ


とある村にやって来た朝江は辺りを見回していた。


朝江

「ここって、歴史の教科書でみた村にそっくりだな。

 ひょっとして昔の日本?

 とはいっても、この村って歌声がとても響いてるよ。

 とても賑やかで、なんだか私、ミュージカルの世界にいるみたいだ!」


こう、朝江は村を楽しそうに感激していると、一人の少女にぶつかって来た!


ドンッ!


朝江

「うわっ!」


衝突した朝江は腰を抜かした。


朝江

「あいたたた・・・。」

少女

「あの、大丈夫ですか?」

朝江

「あっ、すいません!ちょっとよそ見しちゃって・・・。」

少女

「こんな服装、もしかして君は女優さん?」

朝江

「いいえ。私、こう見えても普通の高校生です・・・。」

少女

「じゃぁ君、この村の新入りかな?」

朝江

「いやぁ・・・その。この村の名前は何ですか?

 歌声とかが響いてますけど・・・。」

少女

「ここは童謡とわらべ歌が響く村として有名な

 ❝童唱村どうしょうむら❞です。」

朝江

「童唱村?どうして、この村の由来は?」

少女

「この前、戦争でボロボロになった村の住人を癒すためには

 童謡やわらべ歌が必要なんです!だから童唱村と名付けられたそうです!」

朝江

「え~歌でこの村の住人を癒してるんですよね!」

少女

「はい!童謡やわらべ歌のおかげで住人も元気づけられています!」

朝江

「へぇ~だからこの村には童謡やわらべ歌が必要だったんですね!」

少女

「先程の話ですが、あなたはこの村に来たばかりですよね?」

朝江

「えっ?そうだけど・・・。」

歌音

「そう言えば自己紹介まだでしたね!

 私はこの村の住人の滝歌音たきうたねと言います!

 ところであなた、なんて、なんて名前でしょうか?」

朝江

「あっ、私、鈴木朝江っていいます。岡山県の真庭市から来ました。」


周囲の人達が朝江を見て騒ぎ始めた。


村人①

「えっ、なんだあいつ、どっかの女優か?」

村人②

「あれって外国の美人か?」

村人③

「すっげぇ、まるでスターみたいね。」


注目された朝江は戸惑ってしまった。


朝江

「えぇっ、なんですかこの連中は!?」

歌音

「気にしないでください。あの人達はこの村の住人ですよ!

 兎に角、私の家に招待しましょう!」


歌音の自宅


ガラガラガラ・・・


歌音

「ただいまー!」

奏子

「あら、歌音おかえり!」

歌音

「お母さん!お客さんを連れてきたよ!」

奏子

「あれ?お客さんて、あなた女優さんかしら?」

朝江

「あの、私、この時代の人物じゃないので・・・」

奏子

「まぁ、とにかく上がりなさい。お茶を用意するからね。」


そして、朝江は歌音の自宅へあがった。


居間


ちゃぶ台にはお茶が置いてある。


朝江

「本当に迷い込んじゃってどうもすみません。

 私、岡山の真庭から来た鈴木朝江っていいます!

 友達とミュージカル見に行くために

 その汽車に乗り込んでたらこの世界に来てしまって・・・。

 帰れる日が来るまでここで下宿してもらえませんか?」

奏子

「ええ、いいわよ!あなたならいつまでもここにいていいわよ!」

朝江

「いやぁ、とんでもないですね・・・。

 ところで、あなたは歌音ちゃんのお母さんですよね?」

奏子

「えぇ、そうよ私は歌音の母の奏子かなこよ!」

朝江

「はい!奏子さんですね!今日からよろしくお願いします!」


そして、朝江は仏壇にある写真を歌音に紹介すると、


朝江

「この人は誰かな?」

歌音

「これは私のお姉ちゃん。

 この前までの戦争に巻き込まれて犠牲者になっちゃったの

 優しいお姉ちゃんだったの・・・。」

朝江

「そうか、歌音ちゃんってお姉ちゃんがいたんだ。」

歌音

「こうして見ると、なんだか新しい家族が増えたって感がするなぁ!

 やっぱり朝江ちゃんは新しいお姉ちゃんだよ!」

朝江

「えっ、ええ?」


そして夜——————


歌音の父 洋太郎ようたろうが丁度戦争から帰って来た。


洋太郎

「ただいまぁ~!」


歌音

「お父さんお帰り!会いたかったよ!」


歌音は戦争で生き残った父親が帰ってきた事で嬉しくて

父親に抱き着いた。


歌音

「あっ!お父さん丁度良かった!

 今日からここに下宿する事になった人がいるんだ!」


晩御飯には料理が並んでいる。


洋太郎

「おっ!君はこの村の住人になったのか?」

朝江

「えぇ・・・帰れるまでしばらくは・・・。」

歌音

「この人は鈴木朝江っていう別の世界から来たお姉ちゃんだよ!」

洋太郎

「あぁ、こいつが!帰れる日が来るのを待ってるのか!」


そして、浴室

朝江が体を洗っていると、歌音が浴室の中に入ってきて驚いた!


ガラガラ


朝江

「うわっ!」

歌音

「どう?お風呂は気持ちいい?背中洗ってあげようか?」

朝江

「うん、ありがとう!」


そして、朝江が浴槽に浸かる。


歌音

「どう、気持ちいい?」

朝江

「うん!気持ちいい。」

歌音

「これからも、この村での生活に慣れていけば

 いろいろな歌が学べるよ!」

朝江

「うん!この村の住民にも触れあっていかなきゃ!」


そして、朝江と歌音が風呂に入ってるうちに余は更けていった。

朝江の童唱村での本格的な生活が今、始まる事になる。

                      

                       〈次回に続く〉

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