第27話 キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!
「はぁ……はぁ……シロ……! どこなんだ……!」
俺は山の中を、必死にシロを追いかけた。
しかし、全然見つからない。
絶望して立ち尽くしている俺に、後ろから声がかかる。
きいたこともないような、男性の声だ。
「オイ、ショウキチ。こちらだ」
「は……? なんで俺の名前……」
不審に思いつつ振り向くと、そこにはシロがいた。
は……?
シロはなに食わぬ顔でキノコを口にくわえ、こちらを見つめている。
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」
「ど、どうしたショウキチ! 落ち着くのだ!」
シロは驚きながらも、口に含んだキノコを離さない。
それどころか、キノコをむっしゃむっしゃ、くっちゃくちゃ。
こいつか、このキノコが悪いのか!?
「し、シロ! そんなの吐き出しなさい! ぺーしなさいぺー!」
「こ、これはだな! 翻訳キノコだ!」
「はぁ? 翻訳キノコ……!?」
なんだその翻訳コン〇ャクみたいなの。
ていうかそんなものどこから持ってきたんだこいつ。
そんなもの自然に生えてていいのか?
「な、なんでそんなもの知ってるんだよ!」
「当然だ。このくらい知っている。我を誰だと思っているんだ?」
「誰って……シロじゃねえの……?」
「うむ」
シロは自信満々にしっぽを振っている。
まさかシロと話せるようになるなんて……。
これはいろいろ聴きたいことだらけだ。
「我はフェンリル種の王、白狼王だ!」
「は、はぁ……。シロじゃないの……?」
「それはショウキチが名付けてくれた名だ。それには感謝している」
「そ、そっか……」
俺はシロから、いろんなことをきいた。
シロがあの日、なぜ俺の家にやってきたのかとか。
「我はもともと、本来はこの姿だったのだ。だが、強敵に敗れて体中の魔力のほとんどを失ってしまった」
「フェンリルでも負けることがあるのか……」
こいつ、かなり強そうなのにな。
そんな敵、戦いたくないなぁ……。
「それで、身体が小さくなってしまったのだ。魔力を求めてさまよっていると、ショウキチの家にたどり着いていた。あの時は助けてもらえて本当にありがとう」
「そうだったのか……。てっきりお前のこと、犬だと思ってた……」
「その犬というのがなにかはわからないが……。まあいい。とにかくこうしてもとに戻れてよかった」
「それで……シロはどっかに行ってしまうのか……?」
シロの目的が、俺と一緒にいて魔力を溜めることなのだとしたら……。
もはや俺に用はなくなるんじゃないか……?
だとしたら、少し寂しい。
「なにを言っているショウキチ。我はずっとショウキチと共にいるぞ!」
「お! そ、そうか! よかった」
「我にとっては人間の寿命など一瞬だからな。ショウキチと最後まで一緒にいるつもりだ。ショウキチのくれる肉はうまいからな!」
「そ、そうか……」
とにかくそんなこんなで、シロもといフェンリルが仲間になったわけだが……。
「お前、どうするの?」
「なにがだ」
「そのでかい見た目のまま街に帰ったら、注目されるだろ」
街にフェンリルなんて連れて入ったら、大騒ぎになりそうだ。
そもそもフェンリルとやらがどのくらいの存在なのかも、よくわかっていない。
もしかしたらとんでもない幻の存在だったりするのかな?
でも、さっきも白狼王とか言ってたくらいだから、たぶんすごいんだろうな。
「大丈夫だショウキチ」
「うお……!?」
シロはくるんと回ると、以前のような小ささに戻ってしまった。
そしてまたくるんと回り、フェンリルの姿に戻る。
「ほぉ……便利だなぁ」
「魔力さえ戻れば、このくらい簡単なことだ」
「じゃあ、帰るか」
「よし、後ろに乗れ」
俺たちは、また風を切って山を降りていく。
どうやらシロがこの山に来たのは、翻訳キノコのためだったようだな。
どうしても俺と話がしたかったらしい。
やっぱり見た目が大きくなっても、シロはシロだな。
俺にとってはフェンリルなんて関係なく、かわいいペットのシロだ。
◇
街に着くと、門の前でなにやらもめごとに遭遇した。
これは、どうしようか……。
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