第20話 ゴブリン戦
近場の森林までやってきた俺は、さっそくゴブリンを探しまわった。
「いた……! あれか……!」
だが、そこで俺は後悔することになる。
「おいマジかよ……」
俺の想像していたゴブリン、それは小鬼のようなものだった。
それも、漫画やゲームに出てくるようなデフォルメのきいたものを勝手にイメージしていたのだ。
しかし、目の前にいるのは本物のゴブリンだ。
俺のようなヒョロヒョロの引きこもりとは比べ物にならないほどの筋肉量。
背丈こそ俺よりも低いが、トップアスリート並みのガタイのよさ。
しかも顔つきも様々で、知性をしっかりと感じられる。
「あれと戦うのか……ゴクリ……」
イメージとまったく違う、本物の化け物がそこにはいた。
「ゴブ……!」
「やばい、気づかれた……!」
いくらこちらに魔法があっても、使えるのは一回づつだ。
しかし、ゴブリンは集団で襲ってくる。
「まずい……囲まれた……!?」
「ゴブゴブ……」
ゴブリンたちは俺のことを最大限警戒しつつ、取り囲んでじりじりと距離をつめてくる。
さすがに向こうも一回きりの命がけの勝負だとわかっているのか、むやみに突っ込んでくるようなことはしない。
そこも、ゲームとは違ってこれが現実だからこそだ。
「動いたら……やられる……」
仮に俺が一体に向けて魔法を放ったとして、他の個体にやられてしまうだろう。
逆に向こうも、味方がやられるのは避けたいのか、なかなか俺に攻撃をしかけてこない。
シロも俺が手を出すまではガルルとうなって威嚇するだけだ。
「動く……!」
数分たっただろうか、急にゴブリンの一体がしびれを切らして俺に突進してきた。
みな賢い生き物だが、我慢のできない個体がいたらしい。
だが、俺としてはピンチだ。
「やばい……怖い……! このままじゃ殺される……!」
だが、なにもやらずに死ぬなんてごめんだ。
俺は恐怖に身をまかせて魔法を放った。
ゴブリン全員を倒せなくても、せめてこの一匹くらいは刺し違えたい。
「ファイア……!」
すると――。
――ボウ……!
俺の手のひらから炎が炸裂した。
こちらへ向かってきたゴブリンの顔面に直撃。
そしてそのままゴブリンの顔から肩へ燃え移り、奴は地面に倒れ悶え苦しんだ。
「ごぶうううううううううう!」
「はぁ……はぁ……」
なんとかこの一匹はやれそうだ……。
そう思った瞬間、ある違和感に気づく。
おかしい、他のゴブリンが攻撃してこない。
「…………!?」
不思議に思って俺が周りを見渡すと、さきほどまで俺を囲んでいたゴブリンたちがちりじりに散っていっているではないか……!
「ど、どうしたんだ……!?」
よくよく彼らの表情を見てみると、なにかにひどく怯えているのがわかった。
「そうか……! 火が怖いのか……!」
そう、これは単純なゲームなどではない、現実だ。
現実の世界に置いて、野生の生き物がなによりも恐怖するのが火だ。
「もしかして……ゴブリンには火を操るほどの知性はない……!?」
仮に知性があっても、少なくともそういった文化はなさそうだ。
これは勝機だ。
「そういうことなら……! えい……!」
俺は周りにいたゴブリンたちを威嚇するように、あたりにファイアをばらまいた。
すると――。
「ゴブぅ……!」
ゴブリンたちは面白いくらいに俺を恐怖しはじめて、しまいには背中を見せて逃げ出した。
「そこだぁ……!」
そうやって一度崩れてしまえばあとは簡単だった。
逃げ惑うゴブリンたちに後ろからこうげきを加えていくだけで、簡単に倒せる。
「ファイア……! ファイア……! ファイアあああ!」
「ゴブゴブぅ……!?」
「よっしゃああ!」
みごと、俺は形勢逆転してゴブリンたちを蹴散らすことに成功した。
いくつかのドロップアイテムが地面に残されている。
こういうところは妙にゲーム的なんだな……。
ゴブリンの死体は時間経過とともに、魔力になって地面へと返還されていった。
「なるほどな……ゴブリンって現実だとこんなに恐ろしいのか……」
受付嬢さんがあれほど注意するわけだ。
まあ、今回は魔法のおかげでなんとかなったし結果オーライだ。
俺が勝利に浸って安心していると……。
――ドシン。
――ドシン。
「なんだ……?」
森の奥から、巨大ななにかの足音が聞こえてきた。
音だけでもわかる、これはただならぬ大きさのモンスターだ。
「グオオオオオオオオオオオオ!!!!」
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