幻の水平線

空の青と海の青

それを分離する水平線

追いかけても追いかけても

そこに到達することはない

わたしの目の中だけに存在する

幻の形象


何もかされることのない

常夏の島では

時間がゆっくりと思考回路を流れてゆく


ビーチチェアに寝そべっていると

視界がそうであるように

頭の中は空と海だけになる


沖に浮かんでいた白い船が

だんだん小さくなって

水平線に消えた


あの船も幻想だったのか

自問してみても

ここでは荒唐無稽だと笑う自分はいない


あの船が幻想だと言うのなら

あの空と海も幻ではないか

むしろ想像の野が広がってゆく


やがて日が沈み

空が青みをなくしてゆくと

天上の海に魚の群が現れた


海の魚と違うのは

ゆっくりゆっくり動くのと

夕陽の色に染まること


ピンクゴールドの無数の背びれは

そのうち水平線から海に入り

本当の魚になって泳ぎ出すのだろう



https://kakuyomu.jp/users/rubylince/news/16817139555259023102

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る