デル100
| 藤堂京介
彼女達のテンションはまだまだ高い位階で維持されていた。
僕は昔を思い出すことで、郷愁と現実逃避を上手くミックスしながら精神の摩耗を防いでいた。
完全に流れを変えるタイミングを逸し、抵抗も難しいとなれば、まるで川の流れに浮かび揺蕩う世界樹の葉のように、その流れに身を委ねたのだ。
渓流滑りと言えばいいのか降りと言えばいいのか。
僕は優雅にサーフしていたのだ。
そう、反撃を視野に入れた状態での嬲られ方にはテクニックがいるのだ。
尤も、うっかり殺しちゃマズイから亀の如くひたすら耐えるしかないんだけど。
彼女達が発見した幼子たる僕の弱点を把握し、なんだったら再発見したそれを見事に躱しながら流れていた。
最初は。
彼女達は激流であり奔流であり濁流だった。所々に要所難所を挟みつつ、ナニとは言わないが、ある一定のボーダーラインをキープしてくる。
それはあたかもこちらの思惑を見透かしたかのような追い詰め方であり、もはやプロと言っていいくらい高い次元にあった。
彼女達は観察することに特化しているのだと謳っていたけど、なるほど…よくわかる。
貯めに溜めさせられたこの幼子の熱き脈動は、徐々に競り上がり、ついにプロパガンダるまで攻められると、文字通り魂が抜ける程の衝撃をもたらしたのだ…!
プロパガンダるじゃないな。
結果、もう僕はアヘったボロ雑巾のような有様になってひっくり返っていた、というわけだ…!
わけだじゃないな。
気持ちくて死にそう。
まだこんな世界があったとは…これは絶対に幼馴染達に知られてはいけないな…。
だけど、いかに身体を弄ばれようとも、心だけは奪えない。
どことは言わないけど、先端という先っちょはパンパンに膨らんだままだし、明日の穴というかそこはもうビチャビチャにふやけているけど、僕の真っ白な心は奪えない。
ナニを言っているかわからないと思うけど、そこは想像の翼を広げて独自に解釈して欲しい。
「まだまだ行くよっ! 次は僕案だよねっ?」
「ノー、次は波瑠さんの企画です」
「待ってたのです!」
彼女達は僕の美肌をこれでもかと堪能した後、「ここを出るまでにしたい100のこと」なる企画を立ち上げだした。
100は大袈裟だろうけど、一人ずつお題を掲げ、順繰りとこなし出したのだ。
詳しくは割愛するけど、それはもうナニがナニで、彼女達が普段している妄想を、他に見ている人が居ないとはいえ、赤裸々に語り出し実践し出したのだ。
その結果、僕はべちゃべちゃのあへあへになったのだった。
人族の傑出した才能とは──それはもういいか。
そんなあへあへの中気づいたのは、清恋お姉ちゃん以外の子も、怨恨や遺恨、復讐の感情に囚われ、彼女達自身を支配しているのではないか、という事だった。
弱者の強者に対する憎悪を満たそうとする復讐心を、内向……いや、内攻的に鬱積していた心理が、彼女達の心の根っこに食い込むように巣喰っている気がするのだ。
これはプロパガンダと相性のいい、ある意味ルサンチマン型の代償行為だと思うし、このダンジョンがそれを推しているのだと思う。
「ねぇ、なんだか反応薄くない?」
「哲学者みたいな目になっているな…」
いや、これは悟りだ。この幼い身体の感度のみを押し上げられ続けたことで僕はある意味境地に至った。
これはアレフガルドでもなかったことだ。
大教会のプロパガンダはよく効いていたし、僕が勇者であったが故にこのように出入口のない部屋で屈辱的に嬲るなど到底出来なかったのだろう。
まあ、しようとしたら死あるのみだっただけなのだが。
しかし、新体験だ。
新しい扉、いいじゃない。
びくんびくんして動けないけど。
クックックック。
違う違う。
「ふん、まだまだ足りないようね」
そんな僕を佳樹お姉ちゃんがそっと掬い上げ、不満げに笑っていた。
だが、瞳の色は隠せない。
濃いめの興奮色か。
あのムカつくトカゲじじいを思い出すな。
生き死にのない世界でもこの色が発現するのか。
頭おかしいんじゃないかな。
「ふん、これで良いんでしょ! …ちょっとだけなんだからね…」
そう言ってバランスの良い胸を、貫頭衣からポロロロンとまろび出し、ずいぃと花が今にも咲きそうな蕾を押し付けてくる。
君にとっては与える、いや、施しや癒し、そういった行為だろうけど、馬鹿な真似を。
何も手や足にだけ技術が宿るというわけではないのだ。
「佳樹はだいたい一番をかっさらうな…」
「授乳プレイは波瑠の案なのに…」
「イエス、佳樹さんは過去を取り戻すかのようにして高速でツンとデレを回しています」
「これが誤解姫…」
「誰が誤解姫よっ! ほ、ほら飲みなさいよ! ほら! ほーら!」
「事情を知らない男の子にぐいぐい行く」
「照れ隠しが雑」
「ち、違うわよ! この子がモノ欲しそうだからよ!」
「はいツンいただきました〜デレてどうぞ〜」
「るっさいわね! ツンもデレもしてないわよっ! 勘違いしないでよねっ!!」
「「おお〜〜」」
何の話かは知らないが、彼女達はみな良い顔をしている。艶々としたとても良い顔だ。それ自体は別にいい。勇者の役割は戦闘を終わらせ民に笑顔を取り戻すことだ。
それはそれで構わない。
問題は、何だっけ。
まいっか。んまんま。
「しかしこれからどうする? まだ扉は現れないぞ?」
「つまり誰かの願いは叶ってない」
「こ、ここまでバラバラだとは思わなかったです…」
「人それぞれ性格…癖が違う」
「そのようですわね…」
いや、それはおそらく僕の願いだ。ナニとは言わないけど、フィフティーフィフティーが僕の矜持でありバランスさせることで、僕は僕足り得るのだ。
「んん"ッ?! こ、この、生意気ね!」
おっと、強くしすぎたか。
「そんな子はこうしてやるんだからっ! えいっ! えいっ!」
「佳樹さん、最初はもっと優しくねっとりと奏でるようにですよ。いきなり強くすると大きな波は起こせませんよ?」
「そ、そうなの…?」
「殿方というのは実は繊細なんですよ? あと、作法としては、胸は寄せて差し上げて二つ同時に吸わせないといけません」
「へぇ…そうなんだ。…ん? 右手が使えないじゃない。清恋、また騙そうとしてない?」
「先程のたわしですか? あれはあれで正解でしたよ。まさか本当にするとは思いませんでしたけど」
「うむ。人権を無視した見事なライドオンタイムだった」
「違ったのっ!? 凛音っ!」
「ノーノーイエス」
「だからどっちなのよっ!」
彼女達はみんなみんな元いじめられっ子だったらしい。
ここでしたい事とはつまりやり返したかった事であり、心の奥底に沈めていた復讐心の発露だったのだ。
僕にしてどうするんだとは思うし、エロ方面とか正気かと思わなくもないけど、おそらくこのダンジョンのせいだろう。
彼女達は力に酔っているんだ。
おそらく解放するには彼女達の歪な魔力と結びついたルサンチマンをなんとかしなければならないと思う。
それをもし自身で克服するには、まずは自分のマイナス部分を既定条件と捉え、その条件のもとでどんな悦びを汲み取ることができるのかを考えることが大切なんだ。
正しい悦びなんてものはアレフガルドならば魔王討伐一択だけど、この世界なら人それぞれだろうし、自分が求める本当の悦びや願いがどんなものなのかなど、この歳まで考えたことなどなかったのだろう。
ただ確かめるために、ただただ自分に静かに問い続けるしかないのに、ムンムンとしちゃってる。
まあ、わかる。
僕は敏感系なんだ。
「あっ、ちょ、ぁ、あれ? 何だか…力が…んん"ッ、気のせいかしら…?」
「佳樹! どうした! そんなにいいのか!」
「な、なんでもないわよっ! それにしても…これは癖になりそうね……ん…ふふ」
「ええ、それこそが我々が初期装備している母性なのですわ」
「そう、かなぁ…?」
ああ、ようやくといったところか。
彼女達の独特な音律のせいか、はたまた押し寄せる快楽のせいか、構築しにくかったけど、バフもデバフも僕は使えるんだ。
ティアクロィエほどの実力はないし、微量でしか今は扱えないけど。
「なぁに? お姉ちゃんを気持ちよくさせてあげたい? 生意…気持ちよくしてもらってばっかり? ふふ、そんな事気にしなくていいのよ」
ボソボソと小さく儚く呟くことでじんわりと鼓膜を震わせたままにしておく。
あまりしたくない事だけど、仕方ないね。
このままヒートアップしたならば、避妊魔法が使えないまま、始まりそうだし。
「僕だってお姉ちゃんに喜んでもらいたい? な、何よ、そんな健気なこと言って…騙されないんだか…お、お願い? も、もぉ…仕方ないわね…左がいいだなんて…何のこだわりよ」
だから彼女達のターンは今終わりを迎えた。
君たちのSは、優し過ぎる。
だからこそいじめに遭ってしまったのだと思うけど、手足くらいもがないと僕は止められないし、し返す相手を決定的に間違えているのがなんでなのか意味わかんない。
でも快には快を。
陵辱には陵辱を。
まあ、だいたいそうなってるんだ。
クックックック。
「やっぱりこの子壊れてないかしら…? ん…? んんンッ?! ぅはんんんんんん"─────ッッ!!?」
思い出もおいにも、歪なトラウマも尊厳も依存も自己も存在意義もルサンチマンすらも。
何もかもこの僕が壊して塗り替えてあげるよ。
そしてここからみんなで出ようじゃないか。
どこに出しても恥ずかしくない、立派な娼婦になった暁にはさ。
財欲しいって言ってたし。
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