15 / 100 | 東雲 詩乃

| 東雲 詩乃



京介さんにお願いされ、永遠と二人きりにさせました。ネストの二階、事務所と聞いていた場所で魔女と二人、待つことになりました。


でも先程から……話し合いという名の睦み合いが響いて……あームカムカムカつきますね…


死ねばよろしいのに…



「ね、東雲先輩…」


「なんです?」



壁尻仲間… 飛鳥馬遊子…黒髪ロングの緩いウェーブヘアを…利休茶色のリボンでポニーテールにして、前髪ぱっつん。嬌声に顔を赤らめ、もじもじと…憎たらしいくらいの可愛いらしい顔立ち。飛び跳ねそうなスタイルの健康優良児。そして魔女。そして赤城一刀流。


そしてお尻はやっぱり小さい。


死んだらよろしいのに…



「あの永瀬って人、どんな人なの? 急に優しくなるし…誘ってくれたし…身動き取れないとはいえ、一撃でしたよ? だって右から来たと思ったら…下から…」



それは、秦野の技…ですね。でも誘い込むのを待てないからと先に幻惑を仕掛けるのは永遠らしいというか…直ぐに倒しに行く………というか…


ぐぬぬぬ…すぐいっちゃう!すぐいっちゃう! じゃないわよ! さっきから何回いくのよ! すぐにいきすぎなのよ! 馬鹿じゃないの!


隣に丸聞こえなんですからね! はー…この子は…意味がわかってなさそうなのが救いですか…


死んだらよろしいのに…



「永遠さんは…何というか…昔々はすぐに手が出る悪ガキでしたよ。多分舎弟か何かだと思っているのでは? 彼女はいろいろな流派の門を叩く…雑食でしたね…ただ大きく…みんな変わったのは…大魔…いや、幼馴染の桃さんが転校してからでしょうか」


「大きく?」



それまでは自分の事が最優先で、構って欲しくて、たたかうしか選んでなかった。桃が傷ついて、聖さんが落ち込ん………


ぐぬぬぬ…おっきいよお!おっきいよお!じゃないわよ! そんなに大きいのかしら…


死んじゃうかしら…



「桃さんと永遠さんはいつも一緒に京介さんに絡んでいましてね…裏では私達を小馬鹿にして楽しんでいましたね」


「一緒に? あんな一匹狼みたいな人と組む人いるんだ?」



あの二人のタッグは嫌でしたね…先攻の永遠、謀略の桃。本当に嫌な組み合わ………


ぐぬぬぬ…一緒にいくの!一緒にいくの!じゃないわよ! 一人で勝手にいってなさいよ! 馬鹿じゃないの!


死ねばよろしいのに…



「…ええ、ええ。桃さんは何というか…敵わないなってみんな思ってました」


「敵わない? 強かったってこと?」



「いや、今ならわかるんですけどね。周囲を味方につける。引くところを見分ける。京介さんが好き、なのはみんなと変わらないんですけど、自分を簡単に殺せる。そのやり方でみんな桃なら仕方ないかって空気にさせるのが抜群でしたね。性格が最悪なのに気づいていたのは私と…リリララさん、だけでしょうか」


「リリララ…円卓の…声優の?」


「ええ。彼女達のお家も難儀なお家で…京介さんは彼女達の夢を知り、応援してあげて。練習にも付き合ってあげて。昔から京介さんは悩む子の道筋を整えてあげる……そういうことをしてましたね」


「へーやっぱり昔からすっごい優しいんだ…えへへ…」



本当に、すっごい優しかったな…私の中にはまだ色褪せない鮮やかな記憶のま………


ぐぬぬぬ…すっごいよお!すっごいよお!じゃないわよ! そんなこと知ってるわよ! エリカと純で耳タコよ!


死んだらよろしいのに!



「そうですよ。でも独占したい桃さんは、永遠さんを使ったり、お家のことを引き合いに出したりしてリリララさんに圧をかけてましたね。でも周りは気づかない。上手かったなー」


「性悪じゃないですか。その人は?」



「今は遠くに引っ越しました。小学校の時ですね。ただ…いえ、なんでもありません…」


「…円卓ってさーサイコパス多くない?」



「…まあ、私以外は、ですね」


「いや、東雲先輩も大概…」



「シャアラップ…静かに…なりましたね」


「うん…さっきから…すごかったです…ね…でも私ここまでは…求めてないっていうか…まだ…早いっていうか…会えて、話せて、覚えては…貰えてなかったですけど……腕まで組んで…満たされて…それに永瀬先輩も東雲先輩も大人で…可愛いし…それにそ、そういうの未知っていうか…そもそもガキ…に…興味なんて持ってもらえないんじゃないかって…」



「あら? そうなんですか? 間宮さんはとっくに致してますけど…魔女は…のんびりしてるんですね」


「…ちょっと…言っていい嘘と駄目な嘘ありますよ…魔女の絆を裂こうったって…」



「あら。そんなことに私は嘘をつきませんよ。ならば、京介さんに聞けばよろしいのでは? 京介さんは嘘をつきませんよ」


「え…なら…本当…ですか?」



「ええ。ほんっと腹立ちますけどね。間宮さんの口、どう裂こうかしら…ふふ。私は先に見に行きますから、間宮さんに確認でも取ってみては? 多分彼女も嘘はつかないと思いますよ。でも…最終的に勝つのは円卓であり……この…東雲詩乃ですけどね!」



◆◆



「京たん、やめてって言ったのに」

「ノノメちゃんが可愛いのが悪いよね」



「あのカッコ、本当に恥ずかしいからやめてって言ったのに」

「ノノメちゃんのお尻が魅力的なのが悪いよね」



「恥ずかしかったのに…また抜け出せなくするし」

「ノノメちゃんが気にしてると思って。すっごく可愛いかったよ」



「 でゅぇへへへ…仕方ないですねー。京たんまた…ナデナデキラキラして欲しいな」

「全部綺麗になるけど良い?」



「あ! まだ駄目、駄目です! ぜーんぶ押し込みますから…その後で…あっ…ああ! 勿体ないです!」


「う、うん…待ってるよ」


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