檻5 - 狂宴
| 藤堂 京介
さっきは酷い目にあった。
反射はストロング0にしていたし、後ろには朋花。ぶっかかるしかなかった。僕の顔にぶっかかった瞬間、頭の中は真っ白になった。そして目の前は真っ赤に染まった。
まさかこっちの世界で異世界のトラウマを呼び起こされるとは…
とりあえず犯人はタコになるまで殴った。見事に赤黒いグニャグニャのタコの完成だった。もう一匹はただの八つ当たりだ。タコだけに。
うん? あ! …たこ殴りって、そういう…ことだったのか。また一つ、僕は学んでしまった。
「京ピ、それ違うし」
違った。
◆
「大丈夫?」
「私…は…」
"檻"には一人の女の子がいた。目の下の隈と頬がやつれ、意識も曖昧な痛ましい女の子だった。洗浄と回復の魔法を全身にかけてあげる。後彩色が溢れるが、朋花は何も言ってこない。
キラキラした目とジットリとした目を器用に混ぜてこちらを見ていた。お腹の奥に火が点いたのかもしれない。
「とりあえず、このタコ…いや、この上田と丸…なんとかの骨、砕いておいたから、安心して。君のこと、教えてくれないかな?」
「………丸川です。…そいつ。…骨?……あっ? なんだか…頭と…身体がスッキリしている……はっ! あの、新しいご主人様、ですか? 殴らないで…」
「…違うし、殴らないよ。上田を捕まえに来たら君が居たんだよ」
回復させて意識を取り戻した女の子を、朋花は彼女の制服を拾い集めながらもチラチラと見ていた。そして、落ち着いたことを確認し、意を決した様子で制服を渡しながら話しかけた。
「……生徒会長、でした、よね? 紫原中の…」
「…あ……はい。…そう、でした」
僕らは自己紹介をした。彼女の名前は
今日も学校をサボらせられ、薬物"ウィズ"を飲まされ、この二人にマワされていたという。
「もう、長い間されてたから麻痺しちゃって。…依存っていうんですかね…求められたら結局来てしまって…」
薬物の依存もあるんだろう。どこか回復が効きづらい。瞳を覗き込み、撫で撫でしながら、彼女の本来の心と身体が揃って正常な状態を探す。悟りとの併用だ。その間に彼女の事を話してもらう。
今の彼女は隣の区の女子高生。今は若干の不登校とサボりを繰り返し、学校では問題児のような扱いをされているそうだ。
中学二年の三学期頃、タコに気に入られ、後輩に酷い事をすると脅され、今日のような関係になってしまったという。
朋花曰く、中学の時はとても真面目で、毅然とした振る舞いをしながらも、後輩思いの美人で優しい生徒会長だったそうだ。
───見つけた。
「よし! 長月さん。君に、もっと大きなショックをあげるよ。今日、この日、この時間。僕にくれないかな? 君を生まれ変わらせてあげる」
「藤堂、くんに? …こんな汚れた私の身体で良ければ…」
「……京ピ?」
「ああ、違うよ。それも嬉しいけどね。君は助かるんだ、心がね。僕を頼ってみてくれないかな? それに身体だって汚れてなんかいないよ。君の心の奥でずっと泣いている、中学二年生の君。三学期で止まったままの君。それを動かそう。君は綺麗で、純粋で、清らかな涙を流し続けている。そんな君の心と身体は決して汚れてなんか──いないよ」
撫で撫でしながら見つけた、陵辱のスタート地点。そこから未来を分岐させよう。身体はそこに戻るように、祈り、回復する。
「藤堂くん…私に、そんなものなんて……」
「……京ピ…何するの?」
あとは、悪魔によって腐らされた心を回復させる。
さあ、ぶちのめそう。
◆
「ーライ、ーライ、オッケー」
「へい」
「じゃ、葛川兄、お願いね」
「へい」
今、僕たちは"檻"にいた。目出し帽ーイズも呼び出し、テキパキと撮影準備に入っていた。
構図はこれで、良いかな?
「なんで、兄貴が… それ、に何だ、この目出し帽たちは…」
「一人は鹿島だ! お前だろ、絶対! 早く解け! ぶっ殺す!」
「……」
「なー、もー、"ウィズ"やんないからさー、解いてくんない? さっきの幻覚で懲りたじゃんよ…丸っちもキメ過ぎてなんか変だし…」
「アヘアヘ」
ここに居るのは僕と朋花と長月さん、それに目出し帽ーイズ撮影班の四人。あとは上の階から連れてきた三人とタコ二匹。
断罪を待つ四人、クズ、ロリ、クソ、タコと、もう一匹のタコ。こいつはややこしいから素直パンチ改をお見舞いしていた。後で参加だ。
四人は仲良く一緒に縄に縛られ、思い思いを口にしていた。既に拘束の魔法は切ってある。回復もかけてある。だから余裕がある。下出以外。
いいね。
一番新鮮な被害者の長月さんは今から何をするのかと、ソワソワしていた。そりゃ目出し帽のやつと、クズ四人が居れば怖いか。撫で撫で回復魔法をかけてあげる。血色が随分と良くなった。うんうん。
「藤堂くん。んっ。これは、んっ、今から、あっ、何を…するのですか?」
「ああ、長月さんも動画とかで縛られてるんでしょ? だから同じ事をするんだよ」
「同じ事…ですか?」
「ああ。でもこのままだと映えないでしょ?いやいやだとね」
「映えない?」
「そう。映えないんだ。朋花、リモートは?」
「繋げた、けど…大丈夫、メグミ?」
『うん。平気だよ。彼が…京ピ? はじめまして。───加藤メグミです』
「はじめまして。藤堂京介です。今日はいきなりでごめんね。朋花の願いを叶えたくてさ。君のトラウマの回復。僕に任せてね」
『…朋花からいろいろ聞きました。少し怖いですけど…はい。どうかよろしくお願いします』
「ほんとは直接が良いんだけどね。今から見て、勇気が湧いたらこっちに戻っておいで」
『…はい』
「……やめてくれ、やめてくれぇ! それだけはやめてくれぇぇぇ!」
「何、急に。シモどしたん?」
「それな」
「…? 殴られるくらい、我慢できンだろ? なんだ?」
「アヘアヘ」
「黙ってろ! 馬鹿どもがぁっ! 藤堂くぅん、反省した、反省したんだっ! 償う、償うから! やめてくれ! 嫌だ嫌だ嫌だ─────!」
下出だけはこれから何をさせられるか気付いたらしい。ごめんね、ここ防音なんだ。目一杯叫んでいいよ。
ははは。それでね。
僕はね、魅了は使えないけどさ。
幻惑は使えちゃうんだよ。
ただ、拘束と一緒でさ。
かなりピーキーなんだ。
かつて、異世界アレフガルド中の腐った女の子達が特等席で観戦する事ができると、震撼し、
対象に指定した男はかかった男から好みの女に見え、女はかかった男から女に見えない。男にも見えない。
でも薔薇に見える。
そう、観戦する周りの女の子たちは薔薇になり、薔薇が花開く瞬間を彼女達は最前列で薔薇に扮し、目の当たりにできる。腐った彼女たちのその感動の涙は舞い散る薔薇の花びらになる。
ただ、かかっていない方はもちろん逃げる。
だけど…ね。
いやよいやよも好きのうち、だ。
だいたいそのうち良くなる。
絶対ダメな時は両方かければ大丈夫だ。
最初からしないのは、僕のトラウマからやってきた罰ゆえだ。
僕は? だって? そりゃあ殴るし、逃げる。位階120の全力だ。逃げれるに決まってる。
それに、多分、僕のトラウマから生まれた概念が通常の幻惑の魔法に混ざってしまったからピーキーになったのかもしれない。と、今なら考察できる。魔物に効果なかったし。
そういえば、薔薇の魔法なんて名付けようとしたらローゼンマリーがレイピア抜いて追いかけてきたな。だから精一杯名前を考えたな。ははは。
でも、安心して。
この瞬間だけは決していやいやにはならないから。男役が。
後で正気に戻るとイヤイヤになるだけだから。どちらも。
最初は、クズ×タコ、かな。下出のおしゃべりクソ野郎は最後にしよっか。なんか面白そうだし。五月蝿いからロリ、クソには拘束の魔法をかけて、と。
さあ、イッてみようか。
タコ、テメェは最初から最後まで出演だ、嬉しいだろ?ん?3時間コースだ、嬉しいだろ?ん?テメェの具合によってはその限りではないが?ん?頑張ってシコシコ動けよ?ん?声、出してけよ?ん?さっき出来ただろ?ん?ん?
「僕を襲おうとしたら
────『
そして─────薔薇の狂宴が始まった。
「え、くっすん、じょーだんっしょ? 何何何なの?! んむっ!」
「お前、可愛いな。そんなに抵抗するとか激るだろ」
「いや、やめろって! ふざけんな! やめろ! くっすん! 目をさまぎゃぁぁ?!」
「良いから大人しくしてろよ。すぐ気持ち良くなるからな。ほら、大きく開けて。恥ずかしがるなって────────」
腐らされた心には、この腐り堕ちる宴、だ。
マイナスとマイナスだ。なんか打ち消し合うだろ。知らんけど。
まあ駄目なら僕の得意技だ。上書きは任せて欲しい。
まあ、どちらも…見せられないよ! だな。
「………それにしても…きもいな、コレ」
『…ですね』
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