骨折り3
| 永瀬 永遠
放課後。
後藤くんと学校から駅まで一緒に帰る。途中、男子生徒たちに冷やかされながら。
それもそのはず。わたしがニコニコなのだ。そのせいで、後藤くんが照れる照れる。
地雷系メイクのわたしが気分良くしてたら、それは周りも本人も勘違いもするか。
京くんがわたしの地雷を遠隔で爆破したのだ。そのせいで、わたしの心の箱の蓋が勢いよく吹っ飛んだ。
そこから永く眠らせていた永遠ニャンコが出てきてしまった。
円卓のみんなは生涯眠らせておいて。なんて言ってたけど、失礼な話だ。
ひーちゃんのウマ娘化よりマシだと思う。あれもいつパドックから走り出すか。
ウマ娘が京くんの背に跨ってんじゃねーよ。
跨っていいのはおヘソの下……
にゃ。
瑠璃ちんの嬉ションよりマシだと思う。あれもいつジョジョバーするか。
京くんに汚ねーの掛けてんじゃねーよ。
掛けられていいのは顔かおヘソの下……
にゃ。
後藤くんは完全なるとばっちりを受け、テレテレだ。
……可哀想に。
◆
「確かに居ないね」
「ぁあ、こんなに居ないなんて不気味だぜ」
いつも亀工生が屯している駅前。
コンビニ、駐輪場、茶店、駅中の端っこ。亀が全然いない。
昼休憩に聞いた話では不良チームはボランティアクルーとして再出発したらしい。どうやったらそうなるかわかんないけど、多分京くんだ。
というか後藤くん。ぜ、じゃない。ぜ、じゃ。
あ〜京くんもこういう言葉使わないかな。oO
─永遠
──なに…京くん…
────不気味だぜ
…………………。
「痛っ!…なんだ?」
「…また神経痛?ピリっとするよね〜アレ」
後藤くん、あんまりソワソワしないで。背中針で刺されたくらいでキョロキョロとか恥ずかしいし。だから最期、間違えたんじゃん。
はー…。明日から量産型メイクに変えようかな……だめか。
後藤くんがもっと勘違いしちゃうか。ごめんね、推しはいつだって京くんなんだよ。
また再確信しちゃったなぁ。
京くん。逢いたいなぁ。
「京くん…」
わたしの漏らした儚い呟きに、弾除け後藤くんはなぜかテレていた。なんだこいつ。
◆
駅の改札に着くと、そこには亀工生はやっぱりおらず、代わりに円卓の忍、首藤絹子。絹ちんが居た。……絹ちんがお洒落して人前に?
「永遠ちゃん」
「……絹ちん」
ただならぬ様子のわたしを見て、後藤くんはわたしを背に庇いながら心配そうに聞いてくる。
「…友達か?」
「う、うん…そう友達」
「…あんまり嬉しそうじゃねーな。あんた、永遠に何の用だ?」
こいつ…ドサクサ紛れに名前呼びしやがった。あー…ヤバ。これはキレそう。
「誰?この人」
「……後藤恭児くん。学校のクラスメイトだよ」
「……キョウ……自傷?」
絶対言うと思った。違うよ。たまたまだよ。たまたま弾除けだよ。たまに弾除けの舎弟の流れ弾がわたしにたまたま当たるだけだよ。
「自称?いや、本当に永遠のクラスメイトだぜ。永遠に用があるなら俺が聞くぜ」
「そうなの? …意外」
ちげぇーよ。
それに、後藤くん。ぜ、じゃない。ぜ、じゃ。
そしてこの彼氏ヅラ…これがエリちんの言っていた前方彼氏面か。なるほど…。
いや、それよりも…なに? この絹ちんの自信ありげなツラ。堂々としていて、駅中で一際輝いている。周りの学生もチラチラ見ているし、この忍びの風上にも置けない感じ…背もピンとして…
…あ!ヒール履いてる!絹ちんのくせに色気づきやがって…どこへでも足元にはあの日から白いラバーソールだったじゃん!
………なんだろう。
なんか……なんか刺したい。
うん?絹ちんはリストに入ってないのになぜ?
ふー…。
仕方ない。事情聴取といきますか。へんしーん。
「ふふっ、大丈夫。幼馴染だし。後藤くん、ありがとう。ここまでで良いよ。絹ちんと話してくるね。あと……名前呼びされるの、わたしキライなんだ。次からやめてね」
「え?」
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