血の日曜日4
| 藤堂 京介
「これもその不思議な力で?あの人たちの耳?」
「ああ、真弓さんと麻実さんの状態を見て、反射的にね」
この子、千切れた耳は気持ち悪くないのかな?裁断面は確かに綺麗だし、血も出ないよう工夫したけど。
僕はつい魔物のつもりで千切ったし、ローテーブルに綺麗に並べたのはプチプチの代わりだし。
真弓さんは討伐部位を聴診器でツンツンしてる。
最初は耳を戻そうかと思ったけど、相手のあんまりな姿を見れば、彼女達の気も少しは晴れるかなと思いそのままにしておいた。けど…
「嬉しい…」
「あは、はは」
その反応は予想してなかったかな。プロポーズ受けた時とかにする表情じゃないかな。千切れた耳にもじもじしながら聴診器を当てたり離したりしながら浮かべる顔じゃないと思うかな。そしてそこからは何も聞こえないと思うかな。そもそも聞く側だし、ドーナツだし。
麻実さんも、やりきった表情を浮かべながらソファに腰掛けてきた。
「いや〜やった。やった。スッキリした!ありがとう!あ、そうそう、藤堂さん?は高校生?あ、3年生でしょ!」
「高校1年だよ。15歳」
「え!年下ですか!うそ…」
「じゃあ藤堂くんだ!」
「藤堂くん、うん、藤堂くん…」
麻実さんは本当にカラッとしてるなぁ。
空元気も元気ってやつかな。
望まないバージンブレイクしたのに、僕と真弓さんに心配かけないようにしているのだろう。優しい子だ。
外を見ると雨はまだ続いている。さすがにミニスカナースでは帰れまい。しかも隣の県か…とりあえず何か服がいるな。どうしようか。コックローチの服でもドロップさせるか。
『コックローチのふく をてにいれた』
なんか嫌だな…
『おかしらのふく をてにいれた』
これならまあ…いや、ここでビクンビクンしてるおかしらの服も嫌だな…
「さて、まだ付き合えるけど、二人ともどうする?」
「藤堂くんの家は近いの?この辺?」
「多分そんなに離れてないと思うけど、車で案内させたから正確にはわからないかなあ」
「遠距離、かぁ……」
「そこまで遠くないんじゃないかな」
3人でソファに座り談笑する。
少し一息つきたいのだろう。慣れない暴力は心優しい子には毒だ。心細いのか二人は僕に腕を絡ませてきた。
…先輩ミニスカナースに両隣から腕を組まれ、眼前には瞬き一つしないビクンビクンしてる8匹のコックローチ……。
ふと足を組んでみた。
………絵面が酷いな。
なんて言ったっけ、こういうコックローチみたいな人たち……そう!半グレ!半グレだ。
これじゃまるで僕の方が半グレみたいな絵面だよ。
「警察よぶかな…」
「警察?ここに来たら藤堂くん大変じゃないですか!?」
「そうよ!私達は、その!大丈夫だから…」
それも半グレ庇うみたいなセリフになるからやめてほしい。自首するか…、みたいな感じになるからやめてほしい
「今日はたまたま僕が来て二人を助けれたけど、多分今までに酷い目に合わされた人が何人もいると思うんだよ。出来れば暴きたいし。どうしようかな」
「確かに、そうね。私も、酷かったし…」
「麻実…」
悲しそうな顔をした麻実さんを抱き寄せる。
そう、アレフガルドと違い、元の世界の人救いは難しかった。被害者も不特定多数、こいつらも多分覚えていない、悟り…で覗いても、そもそも僕が誰が誰だかわからない。
販売された動画は出回っている。いろいろ聞き出せば聞き出すほど厄介だった。まるで高難易度ダンジョンだ。とっかかりすらわからない。
山賊だったらプチプチと楽なのに。イライラするな…僕は真っ直ぐ進みたいんだよ。
これが現代社会の病、ストレスか…
私も、と言って真弓さんも同じように胸に抱きついてくる。とりあえず二人の頭を撫でる。どうしようか。
この絵面もどうしようか。
「よし、とりあえず自首させようか」
「…それしかないですね」
「なーんかそれもね。でも仕方ないか〜」
現代で勇者に出来ることなんて、せいぜい耳を千切るくらいだ。冒険者ギルドもない。僕はなんて無力なんだ。ただただ絵面だけが酷くなるだけだ。
「でもその前に、頼りになる子を呼ぶよ」
◆
「随分早くないかな?」
「それが京介くんと私のキョリだから」
絹ちゃんに連絡すると、ものの十分で玄関まで来た。いや、早過ぎない? ピザより早いし、仮につけていたとしても、どうやってエントランスを突破したんだろうか。
「……その子は藤堂くんの…何ですか?京介くん?名前呼び?」
「藤堂くん、その子紹介してよ」
「京介くん。この
「こちらは首藤絹子さん、絹ちゃん。僕の小中からの大事な女の子だよ」
「しもべ」
「えっ」
「ふーん、そう。ん?しもべ?」
「………で、こちらがさっき伝えた被害を受けた真弓さんと麻実さん」
「
「
「よろしく。
……罰で変な方向に開発してしまったか…ごめんね、絹ちゃん。
でも、後悔はしていない。
◆
「この中の人たちがこの人たち?」
「そうだね。どうしたらいいかな。僕はどうやら力しか振るえないみたいだ。情けないことに」
顔バレして、万が一復讐されても困るからと、とりあえず絹ちゃんを玄関に待たせ、監禁室にコックローチを全員運んだ。
スマホのカメラを使って一応コックローチの顔は撮ってある。アヘ顔だけど。それを見せた。
「頼ってくれて嬉しい。あの、力は、この人達には?」
「まあ、薄らとね」
「いいの?」
「かまわないよ。僕は嘘がつけないからね」
先輩ミニスカナース二人は僕にピタリとくっついたままだ。まあ、酷い目にあったんだし、平気な顔を見せてくれてるけど、やはりまだ怖いのだろう。二人の息が荒い。
あ、いや、違うな。これ。
「…なんかわかんないけどイライラする。真弓」
「……そうだね麻実、わかる。わたし、全部わかってますからって態度がくるよね」
「ふっ」
「あー! 鼻で笑った!この子!」
「なんです、それ!」
「まあまあ。それでどうしたら良いと思う?」
「身体を戻す前にパスワード聞いて、PCとスマホに入る…それと京介くん…」
「うん? 何かな?」
「仲間を呼んでいい?」
うん? 何か冒険の最中だった?
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