8 / 100 | 新津 瑠璃→首藤 絹子→間宮 晴風

| 藤堂 京介



「………」


「じゃーん。瑠璃は京介くんの前で、この姿で踊る罰ね。このミニだけ履かせてね。恥ずかしい、けど。もしかしたらまだ治ってないかもしれない、けど。だからこそ見て欲しい」


「私達は…踊れないから指定ポーズに水鉄炮の刑。安心して、この水着は水に弱い」


「今まで、盗撮してすみませんでした。今日は一人ずつ藤堂さんに撮っていただき、画像や動画は保存してください。私達がまた盗撮をしたら公開してくれても構いません。覚悟は出来ています」


「………」


「間宮ちゃん、ミュージック、ゴー!」


「はいはい。これですか? もー、人使いの荒い。なんで私が…」


「舎弟」


「わかってますよ! いきますよぉ〜」





「見て! 京介くん、見て。瑠璃を見て!」


「………」


「この人アタマ大丈夫ですか? なんでこんな格好で爽やかに踊れるんですか。全然罰ってないんですけど…ああ! そんな足上げたらスカートが…って見てるこっちが照れるんですけど! チラチラして逆に……っ、しかもなんでこんなにダンス、キレっキレっなんですか!? …猿?」


「大丈夫。ここから」


「ここから?」


「あ、ああ! ぁぁぁ、ダメ! 最後まで行けなかった…ふぇぇぇ、ん」


「………」


「なっ! …ななな…! …ここまでさらけ出せる円卓こわい……森に帰りたい…」


「これ以下はない」


「そんな…私のためにハードルを下げてくれるなんて先輩優しぃ……じゃない! 乙女なんです! わ・た・し・は! お・と・め!」


「罪の前では無意味」


「そ、そうですけどぉ、お、おしっこの刑だなんて…わたし…」


「それは瑠璃ちゃんだけ」


「おしっこは京介くんとの思い出だし、誰にも汚させないよっ!」


「………」


「しませんし出来ませんよっ!なんでそんな良い風に言えるんですか…」


「はるはる」


「ほんとにするんですか、本気でするんですか。今ならまだ間に合いますよ」


「ふーこれだから森は」


「これだから中2は」


「なっ! わたしだって看板しょってんです! 良いでしょう! やってやりますよ! 藤堂さんに私の罰を見せつけてやりますよ! そして隙あらばお二人よりおっきなコレで悩殺してやりますとも! さあ! 小さなきぬきぬも早く!」


「腹立つ」


「チョッロ」


「くっ、なんなんですか! このお、お、おしっこ女!」


「そだよ〜」


「なっ、これが無敵の人…」



「…………」


「はるはる」


「はっ! …こほん。で、では、あ、改めまして。藤堂さん、わ、私達のす、す、好きなとこ、撃ってください」


「ポロリしかない」



「………………」


「…………藤堂、さん?」


「…京介くん?」


「ど、どしたの、京介くん……? も、もしかして気にいらなかった……?」



「………………」



僕は水鉄炮を置いて無言で立ち上がった。


もう限界だった。


僕のなにがしは120%を超えていた。勇者のみが使えるというあの限界突破だ。


出口は塞がれている以上、強引に突破するしかない。もし三人に阻まれたら僕のパンツをなにがしなにがししてしまう。


彼女達に違うボディペイントをしてしまう。


第二、第三の愛香、未羽を生み出してしまう。朋花と由真と響子もか…あれ?こういう場合どう言えはいいんだ? いや、いい、もう数字を積み上げるわけにはいかないんだ!


僕はトイレを借りる!


瞳の色はイエスと確認済みだ!




…………あれ? なら問題……ないのか。



あ、そうか。なんか罪とか罰とか聞くと異世界の殺伐とした経験を思い出すから心が引っ張られていたのか…あっちは殺戮オンパレードだったし。


こんな明るい罪滅ぼしなんて異世界すぎる。


だいたい鉱山送りとか奴隷落ちとかなのに…なんて世界だ。お金払ってないのにポロリしかないなんて。


そもそもこんな罰なんて考えてなかった。ちょっと強めに怒るくらいだったのだ。


それがまさかのあぶなすぎる水着…みとれるだけが効果じゃないこの装備に、15歳の真っ新なこの身体は素直過ぎる反応を示し、知らず知らずのうちに心がそれに抵抗していたらしい。


心と身体の不一致だね。だからあんなに抵抗してたのか。納得。


……だが、今まさに不安は解消され、心と身体は一つになった。ならばあとはそう、技だけだ!


ふー…。


黙り込む僕を見る彼女達の瞳の色は、徐々に悲壮を湛えた色に変わろうとしていた。だが、安心して欲しい。


勇者は悲しみを見逃さない!


僕はまるで銃を撃つ仕草のように右手の人差し指を彼女達に突き出した。瞬間、息を呑む彼女達。


洗浄の魔法を指先に溜めると淡く青い後彩色がゆらゆらと灯る。そして大袈裟な動作で一人ずつ撃ち抜くようにそれを振るった。


小悪魔たちは青い光にそれぞれ包まれ、僕が汚れ認定したものは全て洗い流されていった。


そう、あのあぶなすぎる水着上下とおしっこ、あいつらだ。


…小さくして部分的に綺麗にしていくことも出来るけど、それはもうちょっと大人になってからの話だ。


魔法に驚き、素っ裸になって固まっているみんなが声を出す前に、僕はキメ顔でこう言った。



「罰は、僕が決める」





「瑠璃のまほぅつかいしゃま…」


「京介くんのポロリ… きゅぅ…」


「藤堂しゃん、ざあこでごめんなしゃぃ…」


「…みんな、罰とは言え、素敵だったよ。もう盗撮しちゃダメだよ。やめようね。でもそろそろ動画の検証をしようか。起きて」



絹ちゃんが撮った中に暴行の様子が写っているものもあるかもしれないしね。確認しよっか。回復の魔法をパン、パン、パン。



「やったあ〜緑だ〜しゅてき…瑠璃、嬉しょんしちゃう…」


「贅沢コース…つゆだくしかない…」 


「たぬきじゃなかったんでしゅね〜…」



明るい刑の執行、ハマるかもしんない。

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