感謝祭4 - 起


「ふー」


今日のお風呂は響子持参のお気に入りの入浴剤だそうだ。ミルクっぽい白い湯は、そのものミルクっぽい香りがする。

あまりキツくない絶妙な加減の香りだった。


ミルク風呂か…


異世界で一度試した事があった。

サバンナと砂漠の合いの子みたいな地域で、その時は乾季だったため、何日も風呂に入れずイライラしていた。

どうしても風呂に入りたい僕はその地域に生息する、これまた山羊と牛の合いの子みたいな動物のメスを捕まえ、乳搾りしてミルク100%風呂を作ったのだった。


まあ、やるもんじゃなかった。


ミルクは飲むに限る。


それはさておき。このお風呂。やっぱり毎度の科学の勝利だった。間違いない。


今日、由真と響子は泊まるらしい。けど、一番風呂を託されたのは僕だった。むしろ労働し、汗をかいたのは三人ではないだろうか。


胸元がアイス塗れだったし。感謝祭で疲れた身体をお風呂で癒して欲しい。


後ろがつっかえてるかもしれない。名残惜しいけど。そろそろ出ようかなと考え出したとき、感謝祭は、また始まった。


どうやら祭は終わってなかったらしい。


「お邪魔しまーす」


「お邪魔します」


「は、入るわよ!」



狭い我が家のお風呂に水着三人娘が突撃してきたのだった。


いや、異世界経験的には人前で脱ぐことに羞恥心など無くなってしまっていたけど、あくまでそれはプロ相手。複数でもどんとこいだ。


だけど、一般人や、パーティメンバーの姫巫女の前では流石に脱げない。役割が違いすぎる。そしてこの身体はまだうら若き15歳の身体なのだ。


で、だ。


「ささ、京介くん、こちらへどーぞ」


「遠慮なさらずお座りください」


「あ、洗ってあげるんだからっ」



いや、強気過ぎないかな?

こっちは裸一貫なんだけど。これが水着といえどぬののふく、か…精神耐性付きだとは思わなかった。


僕だけが裸とか流石に恥ずかしいんだけど…


よし。賢者モード(言い聞かせ)発動!


「それは光栄だね。三人で洗ってくれるのかな?」


「そうよっ!余すところなくよ!」


食い気味に未羽が答えた。昨日の今日で、よく突撃してきたな。勇者かよ。訝しんだ僕の顔を見て由真が聞いてきた。


「あー京介くんは一人ずつが良い?」


「いや、さっきからずっとみんな水着でしょ?ずっと見ていたいくらい魅力的なんだけど、女の子だし、身体冷やすのは良くないしね。それに風邪が心配だからさ。せめて一人くらいは湯船に入って、順番に代わって欲しいなーって。ダメ、かな?」


「!」

「!」

「!」


どうだ。一国の姫も落とした、褒め+心配+気遣い+お願い。まあ、あっちじゃ勇者ブーストかかってたからだけどね。流石勇者様、さすゆーです、なんてすぐになっていた。


今の僕がやっても効果はないし。効かないか。というかまあ本心は本心だしね。アイス冷たいし。


「うち、はいりゅ」


「未羽さんっ?」


「未羽っ?」


何故か義妹にクリティカルだった。なんで?


「で、では未羽さんは京介さんと交代しましょう。せっかくですし、三人で向かい合いましょう」


両隣に由真と響子。前の湯船には未羽。測らずとも夕ご飯スタイルになってしまった。


小さなタオルを借りてそそくさと湯船から上がり、イスに座った。流石に僕のポロリは不味い。


「じゃあ、お願いするね」


「はいっ!」

「両手から洗っていきますね」


うん?何か…デジャブ?


…あ、ああ、不味い!

浴室、この配置、この人数。イセリアの娼館を思い出してしまった。しかも由真も響子もタオルなんて使ってない。素手だ。なんでだよ。タオル使おうよ。


すかさず僕は目を瞑る。


海運の要所、港街イセリアにあるその娼館は、世に珍しい人魚オンリーの娼館だった。本来は素通りして船で対岸に渡る予定だったがタッチの差で、たまたま定期便が出たところだった。


次の船まで丸一夜空いたため、せっかくだからと訪れたのだった。しかも明日には出る身。ならばと贅沢にも人の姿と人魚の姿の二度美味しい、2回転うねりコースを頼んだのだった。


でもなぜか三人来て計6回転になってしまった。


勇者様だからと、オーナーはトップ3を充てがってくれた。イリア、オルネリア、アスターシェ、いずれも美姫だった。


部屋の中は半分以上が浴室で、人魚族は人型にもなれるからと最初はマットの上だった。水魔法に長けた彼女たちは、粘性の水を生み出し、僕を洗ってくれたのだ。うん、あれだね。


一頻り楽しんだ後は、人魚になり、大きな湯船に彼女たちの生み出した泡を浮かべ、寝そべり、代わる代わる水魔法ローションを使い、果てさせてくれたのだった。


ただ、不可解だったのは半分、外だった。異世界基準ではかなりおかしいものの、種族差のせいかなと納得していた。


あれはなんだったんだろうか。



つまり何が言いたいのかと言うと、あの一夜を思い出したのと、15歳の敏感肌と、フニフニした両隣からの感触と、ミルクの優しい香りで僕の股間の布が持ち上がり始めたのだった。


ミルク関係ないね。


隠そうにも両腕は拘束されている。

バレてはまずいと脳内の枷を強化するようにした!


僕のセルフ脳トレと、僕の15歳の敏感、どちらが勝つか。…でもどっちも僕だしな。いや、敏感が勝っちゃダメなんだ!でも嘘はつけない!


「あ…」


それは誰の漏らした声だったのか。その声を聞いた瞬間、敏感が勝ってしまった。幸い両隣の由真と響子は潜り込むようにして背中側を洗っているからまだバレてない。つまり、


「あは」


目の前の未羽が湯船のヘリにまるで見せつけるかのように胸を乗せ、上半身を乗り出して僕の持ち上がったタオルを見下ろしていた。


「未羽さん、どう、したん、で、す、か…」


次に響子だった。身を乗り出した未羽が見えたのだろう。未羽の視線を追って気づいてしまった。


「ぅわー、ぅわー」


最後に由真だった。しきりに背中に当てている手をグルグル早回ししながら小声で呟いていた。


みんな瞳は発情状態だった。



未羽は徐に両手でタオルごと僕の敏感を、あたかも、アゲハ蝶の羽根を潰さないよう優しく捕まえるように、そんな優しさ溢れる表情で、そっ、と包み込んだ。


いたいけな幼女か。


両隣の二人は背中を洗うのをもう止めていて、身体の前面に洗い場は移っていた。具体的には僕の胸だった。


三人が三人とも、視線は下を向いていて、僕の敏感に釘付けになっていた。


僕だけが天を仰いだ。

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