第2話 規制委員会

 エデンにおいて政府の次に権力を持つのは軍事組織にまで肥大化した規制委員会だ。規則を破った出版社や報道局の摘発,知識人や汚職政治家,差別を誘発させる社会に相応しくない国民の逮捕等から始まった規制委員会は今ではあらゆる分野にその手を伸ばしている。政府のプロパガンダ放送や新聞の第三者委員会として内容に目を光らせ,エデンにとって不利益と見做せば書いた記者を矯正収容所へ収監する。

 犯罪を犯していないが,じきに起こすであろう人間を事前に逮捕する事が出来ることや,規制委員会内で「不快かそうでないか」が決議され「不快」と判断されたあらゆる人物,会社,文化は有害とし今後このような不快な存在が生まれることが無いよう徹底的に処分される。

 規制委員会にとって自身の感性が何よりの法であり憲法であり倫理である。素晴らしく正しい人間である規制委員があらゆる物事を正すことこそが正義であり,世の常とされている。このことから過去には忌々しくも男性女性と差別を助長させる分け方をしていた政府に勧告無しで法改正を行い以降,1型人間男性2型人間女性に分類されるようになった。

 また,過去に1型人間男性2型人間女性が同じ服装をしていなければ性差による差別につながるとし,規制委員会によって差別を助長させた罪によりアパレル関係の業界は事前勧告無しに摘発され関係者全員が矯正収容所へ送られた。これ以降,1型2型関係なく体系による差別を防ぐため,肌の色による差別を防ぐためにと規制委員会が動き,現代のエデンでは両者頭から足まで肌を見せてはいけず,どのような気候天気であろうと関係なく白で統一したローブを纏い,オーバーサイズも良いところなシャツとズボン,統一規格の靴を履くことが義務付けられている。これは,政府によって行われた正義の一環ではなく,誰よりも正しい存在である規制委員会によって行われた事である。

 規制委員会は,正規の教育を受けた者が少なく8割が独学で収めた優秀な者たちである。その為,委員会が介入し改正した法は曖昧であり考え様では様々な解釈がなされこれにより,これまでは汚職もしていない優良な政治家も汚職として処理され政府野党の殆どは規制委員会の息のかかった人間に置き換わっている。それらは,論理的思考,倫理的配慮等を叫ぶ感情だけで行動する都合の良い傀儡であり,委員会の用意した最近生まれた学問の専門家や有識者の意見を過去から存在する物の様に扱いながら,今日も差別のない完璧な世界を作るために万進していくことだろう。

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