エデンの園(未完)

人類種の点滴

本文

第1話 地球共同体エデン

 地球共同体エデン。世界の90%を支配する過去の国家のどれよりも平等で清浄な残酷な国。エデン創始者達の差別を嫌う性質がそのまま現在まで引き継がれているとされているが,その国家体質は拡大解釈を幾度となく行われあらゆる分野においても影響が出ている。また,エデンと非交友的な国家は存在しこれらを「テロリストを生み出す野蛮で差別の蔓延した国」とし,エデンでは浄化と称して非交友国に存在するあらゆる文化,言語,建造物を破壊抹消することが至上命題とされている。

 エデン創設当時に真っ先に行われたのは創作物の禁止。創設者達は創作こそが全ての差別の元凶であるとし,出版元に作者やその資料になった全てを規制し,矯正収容所と呼ばれる社会に適応した正しい・・・人間にする素晴らしい施設で教育される。これにより,当初創設者が予定していた範囲を超え邦画洋画,ドラマにアニメありとあらゆるフィクションに分類される娯楽が規制され,それに反対した創設者の一人は矯正収容所送りとなり,その後の詳細は政府によって規制されている。

 あらゆる国家を飲み込んだことによる技術力の向上は,性差という最も唾棄するべき差別を撤廃することに成功した。あらゆる手作業は機械作業が取って代わり,メンテナンスのみ人間が担当するようになった。新聞やテレビのニュースは全てプロパガンダやエデンを称賛するもののみ,ニュースキャスターはスピーカーに合成音声で喋らせることによりあらゆる人間が就ける職となった。記者は指定された角度,指定された日時通りに写真を撮り報道する。

 また,エデンにおいて軍隊の役割を担っている規制委員会なる組織が存在し,創設者の作った規則の原則であるあらゆる差別につながる存在の根絶と全ての人間の平等をスローガンに活動している。所属する人間は,政府によって素晴らしく正しい人間が選定されており汚職や差別を許さない高潔な精神を持ち,同情や慈悲を掛けることなくテロリストを矯正収容所に収監する。


 あらゆる存在は差別につながる。色も文化も人種も性別も言語も。エデンは差別を許さない。平等という呪いに蝕まれ過去の理念は既に廃れて久しい。エデンの庇護下に入らなかったテロリスト達は息を潜め地下を這いずり回る。最早文献でしか知りえない過去の世界。不平等な平等な世界を夢見てテロリスト達は戦っていくのだろう。正義の味方の面をして,正義の名の元にあらゆる行動が許されると嘯いて,今日もテロリスト達は戦うのだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る