第39話 いよいよ生徒会長決定戦!
食後のデザートも終えて、しばらくの間、談笑に耽っていたがもうそろそろ寝る時間だ。
いつまでも一真の部屋にいてはダメだろうと解散する事になり、クラスメイト達はそれぞれの部屋へ帰っていく。
一人になった一真は食器を片付け、二十四時間利用可能のトレーニングルームで汗をかき、シャワーで汗を流してから眠りにつくのであった。
◇◇◇◇
あっという間に時は過ぎ、生徒会長決定戦が開催される日となった。
普段と変わらない登校日なのだが、やはり生徒達はどこか浮足立っている。
今日は新たな生徒会長が決まる日であり、第七異能学園の最強が決まる日でもあるのだ。生徒達が楽しみにしているのは当然だろう。
「今日、授業がないとか最高じゃん!」
「いや、お前は生徒会長決定戦に参加しなきゃいけないのに何を言ってるんだ」
「授業に比べればどうという事はない!」
「凄い自信だな~」
「俺等は観戦するだけだから気楽だけど、普通は緊張とかするだろ?」
「俺はしない。緊張してたから普段の実力を発揮出来ませんでしたなんて通用しないから」
「お、おう……。急にトーンを下げるなよ」
本日は授業無しで、生徒会長決定戦が午前中に行われて、午後は自由となっているのだ。
一真のテンションはいつになく高い。
勿論、クラスメイト達も同様であるが一真と違ってクラスメイト達のほとんどは生徒会長決定戦を観戦するだけ。
緊張もなく、ただただ楽しむだけのエンターテイメントのようなものだ。
「まあ、お前が気にしていないならいいか」
「気にする事もないさ。俺はいつも通り、やればいいだけだし」
「お前が言うと、妙に迫力があるな~」
「ふっ、俺はあの剣崎宗次と秤重蔵を一人で倒した最強の一般人だぞ」
「時折、お前は世界が生んだバグなんかじゃないかと考えるんだ」
「誰がバグやねん」
酷い言われようだがあながち間違ってもいないので強く反論も出来ない。
それから、いつものように朝のホームルームが始まるまでクラスメイトとじゃれ合っていたら、教室の外が騒がしくなってくる。
「外が騒がしいな。なんかあったのか?」
「さあ? 見てくれば分かるんじゃね?」
そう言って一真が教室のドアへ向かっていると、ガラガラとスライドドアを勢い良く開けて驚きの人物が入ってくる。
「よう! 一真! 元気にしてたか?」
「せ、先輩ッ!? どうして、ここに?」
一真達のいる教室に入ってきたのは第一異能学園の生徒会長にして、現役高校生最強と謳われていた剣崎宗次である。
今は一真に敗北してしまったので元最強と言われているが、それでもその実力は日本でも屈指のものだ。
「知らないのか? 俺は今年卒業生だから、三学期は進路さえ決まっていれば自由登校なんだぞ。勿論、節度は守らないといけないがな。別の学園に来るのはきちんと申請すれば問題ないんだ」
「へ~! でも、何で今日うちに来たんですか?」
「そんなの決まってるだろ! 生徒会長決定戦が行われるからだ!」
「え? 第一は違うんですか?」
「第一も今日なんだがどうせ如月で決まりだ。今のアイツは二人も過去の偉人を召喚出来るからな。攻防完璧になったんだ。誰も勝てねえよ。俺とお前以外はな」
「確か、星空ノ記憶でしたっけ? 過去の偉人、英雄を召喚出来るってやっぱり反則ですよね~」
「その英雄を初見で完封した上に俺まで捻じ伏せたお前が言う言葉じゃないだろ」
「でへへ~」
「もう一年あればお前と再戦出来たのにな……」
「いつでも挑戦受けますよ! 所で進路が決まったと言ってましたけど、結局どこに決めたんです?」
「国防軍だ。蒼依も一緒にな」
「そうなんすか! おめでとうございます!」
「おう! ありがとさん!」
と、二人が話していると始業のベルが鳴り渡り、朝のホームルームの時間となった。
これ以上は迷惑になると宗次は先に生徒会長決定戦が行われる会場に設置されている来賓席へ向かうと言って、一真に別れを告げて教室を出ていく。
「(宗次先輩、国防軍に入隊を決めたんだ……!)」
朝のホームルーム中に一真は天啓を得たように目を見開く。
生徒会長決定戦に出場する選手は着替えてVRマシンが設置されている部屋に行かなければならないのだが、一真は更衣室へ向かう前に慧磨へ電話を掛けた。
『何か緊急の連絡かな?』
「大至急、国防軍に入隊が決まった剣崎宗次及びに関係者を俺の部隊へ編入させてください! 用件は以上! 拒否権はないから! それじゃ!」
一方的に用件だけを伝えると電話を切った一真。
そして、国防軍へ入隊する事を恐らく宗次本人が漏らした事を憂いながらも慧磨は一真に言われた通り、防衛大臣に連絡を入れ、宗次と蒼依の二人を紅蓮の騎士直轄の部隊へ入隊させるのであった。
余談だが防衛大臣及びに国防軍の上層部は、この通達に嘆き悲しんだのは言うまでもない。何せ、剣崎宗次は国防軍の期待の星だったから。
それが単独で一国と渡り合える戦力の紅蓮の騎士がかっさらっていったのだ。
紅蓮の騎士には部下なんて必要ないだろうと愚痴りながら、上層部の幹部達はヤケ酒を飲んだと云う。
話は戻り、一真は着替えを済ませてVRマシンに搭乗する。
生徒会長決定戦が行われるまで仮想空間で待機だ。
「ついにこの日がやってきたね」
「そうね。あっという間だったわ」
生徒会長決定戦の進行係にして司会の桐生院隼人。
そして、解説役の西城詩織。
二人のスピーチから始まり、生徒会長決定戦が開催される予定だ。
「皆、待ち遠しいだろうからすぐに始めたいところだけど、開始時刻は決まってるから、もう少しだけ我慢してね」
「楽しみなのはわかってるけど、すごい盛り上がりようね」
「一真君が人気者だからね。来賓席の方々も楽しみにしてるみたいだし」
「まさか、うちにあんなにも沢山の人が来るなんて思いもしなかったわ」
「そうだね。去年まで片手で数えるくらいしか来なかったもんね」
「それだけ一真君が注目されてるって事ね」
「それはそうだよ。学園対抗戦で世界は一真君を知った。能力は置換だけど、パワードスーツを着れば最強なんだ。皆、一真君の戦いが楽しみで仕方ないんだ」
「一応、全国ネットで見れるんだけどね」
生徒会長決定戦は学園対抗戦と同じように全国ネットで放送されている。
しかも、全学園で同時中継されているので好きなところを見れるのだ。
ただ、今回は第七異能学園のチャンネルだけ視聴率が跳ね上がっていたりする。
「そろそろ開始時刻だね」
「始まるのね……」
「詩織は誰が優勝すると思ってる?」
「隼人……。分かりきった事を聞いてどうするのよ」
「アハハハ、ごめんごめん。それじゃ、やっぱり君も一真君が優勝すると思ってるんだね」
「またふざけた格好してるけど、実力は嫌っていうほど知ってるからね。いくら、雪姫や火燐が協力しても勝ち目はないでしょうね……」
すでに仮想空間で一真は準備万端であった。
兵装は近接武器のみという制約はあるが、身体強化五倍のパワードスーツに身を包んでいるので過剰戦力である事は間違いない。
そして、今回の装いは戦国武将をモチーフにしているようでかなり厳つい甲冑姿をしている。
顔には鬼のような形相の頬当てをつけており、迫力抜群だ。
「そうだね。だって、一真君の条件は学園対抗戦と一緒だからね」
「正直、身体強化五倍は過剰じゃないかしら?」
「うん、そうだよ。多分、身体強化なしでも十分通用するんじゃないかな?」
「フィジカルお化けね……」
「おっと、長々と話してたら開始時刻になったね。それじゃ、カウントダウンを始めようか。3、2、1! スタート!」
隼人の合図と共に仮想空間で生徒会長決定戦が始まった。
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