第60話 正義は勝つ!
イビノムを見据える閻魔。
コックピットから超巨大イビノムを見詰める慧磨は考える。
この超巨大イビノムに対して自分は何をするべきなのかを。
「(う~む。閻魔の兵装でダメージを与えられるものは……)」
慧磨は閻魔に搭載されている兵装を確認する。
数多くの兵装が積まれているが、先程ミサイルを撃ったが通用しなかった。
では、他の兵装も通用しないということはない。
まだまだ試していない武器は沢山ある。
しかし、その中でどれが有効なのかは使ってみなければ分からない。
「(よし。やれるだけやってみよう!)」
まずはヒートエッジを使う事にした慧磨は閻魔を上昇させて超巨大イビノムに斬りかかる。
ヒートエッジはイビノムの甲殻を切り裂くことは出来たが大したダメージは与えることが出来なかった。
何せ、超巨大イビノムに対して閻魔のヒートエッジはあまりにも小さすぎた。
これではいくら傷をつけた所でイビノムを倒すことは出来ないだろう。
「(ぬう! 根本的に大きさが違いすぎるからいくら傷つけても意味がない! まるで人間が蚊に刺されているようなものか……!)」
閻魔は優秀な機体ではあるが超巨大イビノムがあまりにも規格外なため、ダメージが通らないのだ。
これではいくら閻魔が頑張ったところで意味はない。
「やはり、方法は一つしかないか……」
コックピットの中で呟く慧磨は切り札を切ることにした。
慧磨はカタカタと操作を行い、最後のコマンドを入力した。
「怪獣には巨大ロボットが定番だろう」
その言葉と同時に起動するプログラム。
閻魔のみに用意された外部ユニット。
対巨大イビノム用のパーツが格納庫から解き放たれ、閻魔に向かって飛んでいく。
地平線の彼方からやってきたのは五つのパーツ。
「フッフッフ……! 合体だ!」
慧磨は年甲斐もなくはしゃいでしまうが、それも仕方がない。
五つのパーツは空中で合体をはじめ、頭部だけがない状態で地上に降りてくる。
当然、頭部に搭載されるのは慧磨が乗っている閻魔だ。
閻魔はガシャンガシャンと変形し、巨大ロボットの顔部分になる。
そして、最後の仕上げとばかりに顔部分となった閻魔が巨大ロボットに突き刺さる。
「これが大閻魔王だ!」
閻魔大王でいいのではないかというネーミングだが本人が決めた事なので誰も咎めることは出来なかった。
そもそも慧磨自身が古臭い人間なのでカタカナ表記の横文字が嫌だったということもある。
「行くぞォォォオオオオ!!!」
一気呵成に躍り出る大閻魔王は超巨大イビノムにも引けを取らない巨体でパンチを繰り出した。
上半身を回転させて勢いを増し、風圧だけで木々を薙ぎ倒しそうな威力のあるパンチがイビノムに直撃する。
イビノムは堪らず後ろへよろけるとビルに体が直撃した。
「ぬうッ! 致し方なし!」
損切りにしてはかなりの損失だが、目の前のイビノムを倒すことが優先である。
イビノムが壊したというより大閻魔王のせいで壊れたビルは総額数十億だが仕方がない。
平和のための尊い犠牲である。
「ビル内に生体反応はなし! 避難は完了しているな! これで心おきなく戦える!」
大閻魔王、大暴れである。
避難が完了していると分かれば怖いものなしだ。
ビルがいくつか倒壊してしまうがお構いなしである。
フィクションと違って来週には完全に直るようなものではないが、イビノムを放置しておけばさらなる被害が広がってしまう。
それならば、まだ慧磨が破壊した方がマシとはいかない。
イビノムだろうと慧磨だろうと変わりはしない。
家が会社が崩壊して喜ぶ人間はいないだろう。
勿論、中には崩壊して喜ぶ者もいるだろうが。
しかし、それでも慧磨は戦うのだ。
愛すべき日本を守るために。
「ぬおおおおおおおお!」
上半身を回転させて右、左とパンチを繰り出す。
ドンドンッとイビノムは殴られ、後ろに後退していく。
このまま倒せると大閻魔王の戦いを見守っていた者達が確信していると、イビノムも反撃に出た。
大閻魔王のパンチを屈んで避けると、体全体を回して尻尾を振り回した。
ビルを薙ぎ倒し、横からの尻尾攻撃に大閻魔王は避けることが出来ず、横っ飛びに倒されてしまう。
「ぐわあああああッ!」
ドッシーンっと倒れた大閻魔王。
中にいた慧磨もこれには堪らず叫び声を上げてしまう。
急いで立ち上がろうとしたが、イビノムが覆いかぶさって大閻魔王にマウントを取る。
「ぬう!? 上を取られたか!」
イビノムは今度はこちらの番だと言わんばかりに両腕を振り回して大閻魔王を叩く。
何度も何度も両腕を叩きつけるイビノムに成す術もない大閻魔王。
「耐えろ、耐えてくれ、大閻魔王!」
コックピットの中で思わずガードのポーズを取っている慧磨は大閻魔王を応援していた。
そのようなことをする前にレバーで操作して大閻魔王を立ち上げるべきだろうがマウントを取られ、殴られ続けている慧磨は混乱していたのだ。
そうしていると、イビノムが疲れたのか攻撃の手が緩んだ。
今が抜け出す好機だと慧磨はスラスターを最大出力で噴射してイビノムごと大閻魔王を空へ飛ばす。
まさかイビノムまでくっついてきてしまうとは思わなかった慧磨であったが、これはこれで好都合だとイビノムを連れて街から離れる。
飛んでいる途中でイビノムが暴れ、大閻魔王はバランスを崩して落下する。
「くぅぅううう!」
ズガガガッと地面を抉るように大閻魔王は地上に落下し、イビノムは遠くの方で転がっていた。
なんとか無事であった大閻魔王は立ち上がり、遠くへ転がっていったイビノムへ顔を向ける。
そこには立ち上がろうとしているイビノムがいた。
フラフラとしているイビノムに向かって慧磨は突進を仕掛ける。
「喰らえーッ!!!」
大閻魔王のショルダータックルがイビノムに炸裂する。
体勢が不十分だったイビノムは衝撃に耐えられず、後ろに向かって倒れる。
そこへ大閻魔王がマウントを取り、今度はこちらの番だとイビノムの頭を何度も殴った。
しかし、そう長くは続かず、イビノムの尻尾攻撃によって大閻魔王は弾き飛ばされてしまう。
「ぬうッ! まだだ!」
弾き飛ばされた大閻魔王はすぐさま体勢を立て直してイビノムに向かって直進する。
イビノムも迎え撃つように大閻魔王に向かって走り出す。
相撲のようにお互いはぶつかると取っ組み合いになった。
「力勝負か! 嫌いではない! 大閻魔王の力を見せてやるぞ!」
始まる力勝負。
どちらも負けじと力を込めて相手を倒そうとしている。
コックピットで操作しているだけの慧磨も熱くなっていた。
「うおおおおおおお、負けるかあああああッ!」
慧磨の気合が勝ったのか大閻魔王がイビノムを横投げに倒した。
背中を地面に打ち付けるイビノムに大閻魔王はパンチを放つ。
しかし、イビノムは両手で大閻魔王のパンチを掴むと、転がるように大閻魔王を薙ぎ倒した。
その衝撃でグワングワンと揺れるコックピット内では慧磨が大絶叫である。
「ぐあああああああああッ!」
ゴロン、ゴロンと転がる大閻魔王。
コックピットで頭を振り、平衡感覚を取り戻そうとする慧磨が見たのはこちらに向かって来ているイビノムであった。
立ち上がろうとしている大閻魔王にタックルするイビノム。
再び後ろに倒れてしまう大閻魔王。
そして、マウントを取ろうとするイビノム。
このままではいけないと慧磨は搭載されている電撃砲を使ってイビノムを吹き飛ばす。
後ろに仰け反って倒れるイビノムは電撃砲で痺れて動けなくなっていた。
ここが勝機だと慧磨は素早く立ち上がると、必殺技のマキシマムブラスターを放つ。
「ひっさ~つ! マキシマムブラスターッ!!!」
大閻魔王の腹部から巨大な砲台が現れると、そこから極大のビームが放たれ、イビノムを焼き尽くした。
跡形もなく消し飛んだイビノムを見て慧磨は勝利の雄叫びを上げ、最後の決めポーズを取る。
「ハーッハッハッハッハ! 正義は勝つ!」
シャキーンと決めポーズを取った大閻魔王と慧磨は見事に初勝利を収めるのであった。
大分危ない部分はあったが勝ったのだから全て良しである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます