第46話 次はロボットだ~!

 ナノマシンを元にして新たなパワードスーツの開発に一真達は総力を挙げる。

 魔法と科学を融合させたこれまでにない未知の兵器を搭載した世界で一つしかないパワードスーツを作り上げる。


 従来品はラバースーツタイプで身体強化を目的としたものであり、その上から自分好みに兵装を取り付けるものだ。

 今回、一真達が開発したのは完全新規であり、ナノマシンを使ったパワードスーツ。

 完成品が一真達の目の前にある。


「バングル型、イヤリング型、ベルト型……」

「装備します?」

「地獄絵図だぞ……」

「ですね。では、どうしますか?」

「そうだな……。三人を呼んでくるか~」


 完成こそしたが試着は誰にもできない。

 一応、まだ最後の仕上げである本人の認証などを行っていないので誰にでも装備出来るようになっているが、ナノマシンが記憶しているのは栄治の描いたデザインのもの。

 つまり、一真が装備すれば間違いなく事案発生である。

 具体的に言えば猥褻物陳列罪で逮捕だ。

 流石にそれは避けたいし、そもそも男の裸など見ても嬉しくはない。

 一真は自分がどうなるか予想しており、恐らくは半殺しに合うかもしれないと思いつつも三人を呼んでくることに決めた。


 一真は早速、三人に連絡を取り、これから迎えに行くことを伝えた。

 アリシアとシャルロットは丁度アイビーに滞在しており、桃子は自宅で休暇を満喫していた。

 桃子だけは転移ですぐに迎えに行くことは出来なかったが、住所を教えてもらい、紅蓮の騎士に変身して高速飛行で迎えに行った。


「久しぶり、三人とも」

「そう? あんまり経ってないと思うけど」

「二日くらいですかね?」

「…………私の休暇が」

「とりあえず、新しいパワードスーツが出来たから試着して欲しいんだ」


 そう言って一真は三人にそれぞれのパワードスーツを渡した。


「イヤリング?」

「ベルトですか?」

「腕輪?」


 アリシアにイヤリング、シャルロットにベルト、桃子に腕輪。

 それぞれのパワードスーツを渡した一真は説明を行う。


「装備してみてくれ」


 一真に言われて三人はそれぞれの箇所につけた。

 アリシアは耳に、シャルロットは腰に、桃子は腕にと装備した。


「それじゃあ、スイッチオンって言えば起動するからやってみて」

「「「スイッチオン」」」


 彼女達の言葉にそれぞれのパワードスーツが反応して光を放つ。

 カチャカチャと機械音を上げて、彼女達の体をナノマシンが包み込んでいき、栄治がデザインしたエロスとキュートさが融合したメカのようなパワードスーツが出来上がった。


「うっひょー! すげーッ!!! エロ可愛いな!」

「へ~。こんな感じなんだ。ラバースーツじゃないんだね」

「わ、わ、わ! 見てください。私、忍者っぽくありませんか?」

「何故、肌を露出する必要が? いえ、これよく見たら薄いですけどストッキングみたいなもので守られてますね」

「そうそう。肌を露出してる部分は超ごく薄だけどナノマシンが覆ってるから防御力は他と変わらないよ」

「そうなんですね」


 興味ないとばかりに桃子は平坦な返事をしつつ、何故か教えてもいないのに搭載してある兵装を出現させた。


「桃子ちゃん。それバルカン砲なんだけど、どうしてこっちに向けてるの?」

「私の考えを読んでください」

「殺意マシマシだね!」

「ええ、そうです。この時を待っていました。貴方はどうしようもない馬鹿ですが、こういうことをやらせると右に出るものはいません。おかげで貴方に一泡吹かせそうです」

「落ち着くんだ、桃子ちゃん。俺達は人間なんだから、まずは暴力の前に話し合いをだね」

「ロックオン。ファイアッ!!!」

「ぎえええええええええッ!!!」


 念の為に広い場所にしていて正解であった。

 桃子は一真からもらった新型パワードスーツを使い、にっくき上司を排除しようと容赦なく積まれていた兵器を使った。

 まだ説明もしていないはずなのにパワードスーツに組み込まれた兵器を使いこなす桃子に感心するも一真は自動追尾式のミサイルなどを避けていく。


「凄い。あんなことも出来るんだ」

「わ~、これが新型パワードスーツの力なんですね」

「ここから先は私が説明させていただきます」


 一真が桃子に追い掛け回されている間、別の作業員がアリシアとシャルロットに二人のパワードスーツについて説明を行った。


「基本的に性能の違いはありません。見た目こそ違いますが中身はほとんど一緒です。ただ、シャルロットさんのは光学迷彩機能がついております」

「え! もしかして、私消えれるんですか?」

「そうですね。なんでも忍者がお好きということを聞きましたので、そういった機能をいくつか搭載しています。他にもホログラムを用いた分身の術とかも出来ますよ」

「最高のお仕事ですね!」

「わ、私のは何もないの?」


 シャルロットだけ特別仕様なのが羨ましいアリシアは自分には何かないのかと問い質すも返って来たのは残念な答えであった。


「申し訳ありません。アリシアさんはそもそも念力とバリアがありますので、そこまでの機能は搭載しておりません」

「そ、そう……。それは一真が?」

「いえ、我々の判断です」

「そう……」

「もしかして、何か欲しいものでもありました? それなら、まだ改良する余地はありますから今の内に言っていただければ変更しますが?」

「いえ、いいわ。それよりも性能について説明してもらえるかしら?」

「わかりました」


 アリシアとシャルロットは作業員からパワードスーツの性能について一通りの説明を受けた。

 従来のパワードスーツと違い、身体強化は十倍という破格の性能に加えて新規兵装を積み込んでおり、現存する兵器の中では最大火力を誇る。


「この頭についてる角って単なるオシャレじゃなくて私達の脳波を読み取って最適な装備を出してくれるのね」

「はい。遠距離、近距離、中距離と多岐に渡っております」

「それなら……」


 説明を聞いたアリシアが試しに近接武器を望むと、彼女の腕部分から刃が飛び出した。

 見た目は直剣であるが刀身は赤く燃えているように輝いている。


「これは?」

「フレイムエッジですね。その熱で斬るようになっています。イビノムの固い甲殻もバターの様に斬れますよ」

「すごいわね……」

「見てください、アリシア! 私のは手裏剣が出てきました!」


 フレイムエッジに驚いているアリシアの横でシャルロットは手裏剣を飛ばして遊んでいた。

 忍者をモデルにしているだけあって彼女のは随分と面白いものになっている。


「爆裂手裏剣ですね。当たれば爆破して相手を木っ端微塵にできますよ」

「それなら直接殴った方が早いですね」

「…………」


 シャルロットの発言に言葉を失う作業員。

 その反応に自分は何かおかしなことでも言ってしまったのだろうかと首を傾げるシャルロットだったが、すぐにパワードスーツの性能を試しに戻った。


 アリシアとシャルロットがパワードスーツの性能を確かめている間、一真と鬼ごっこを繰り広げていた桃子は息を切らしていた。


「ハア……ハア……。間違いなく体力も向上してますし、身体能力も跳ね上がっているのに全く捉えることが出来ないなんて……」

「いや~、ここまで使いこなせるとは思わなかったよ。もしかして練習でもしてた?」

「するわけないでしょう……。まあ、シミュレートはしてましたけど。しかし、このパワードスーツは凄いですね。デザインは下劣ですが性能は間違いなく世界最高でしょう。先程のフェアリィシステムはとても便利でした」

「容赦なく全方位から撃ってきてたね。多分、俺じゃなかったら今頃ハチの巣だったよ」

「笑っているあたり、狂気を感じますね……。まあいいです。これで完成なんですか?」

「最終工程として本人以外に使えないように生体認証とかするだけかな」

「他に防犯対策はないんですか? これだと盗まれてもおかしくありませんよ?」


 桃子はパワードスーツを解除してバングルに戻した。

 彼女の言う通り、本人以外は使えないが盗むことは可能だろう。

 その点については何かないのかと桃子は不安を抱いている。


「特定のワードを言えば手元に来るようにはなってるよ」

「特定のワード?」

「そう。それも後で設定するようになってる」

「それは私達が決めていいんですか?」

「出来ればこちらの一覧からお願いします」


 一真が手渡したのは作業員全員で考えたセリフ一覧であった。

 勿論、ニチアサの変身ヒーローものから流用しているものもあれば完全オリジナルのものまであった。


「こんなセリフ言う訳ないじゃないですか」

「やっぱりか~」

「面倒なのでさっさと終わらせてください」

「は~い」


 その後は三人を集め、作業員を呼び出し、生体認証作業に装着時の起動方法や解除方法などを設定していき、新型パワードスーツは完成した。


「これで新型パワードスーツは完成だ! みんな、お疲れ様!」

『お疲れさまでしたッ!!!』


 倉茂工業の社員及びに政府御用達の作業員と開発者が一真に向かって頭を一斉に下げる。

 長いようで短かった新型パワードスーツの開発はここに終わるのであった。


「で、パワードスーツは終わったけどこれから対超巨大イビノム専用兵器としてロボットを作ることになったぞ~!」

『うおおおおおおおおおおおおッ!!!』


 一抹の寂しさを感じていた作業員たちであったが一真の嬉しい発表を聞き、歓喜の声を上げた。


 それから、新型パワードスーツで培った技術を用いてロボットを作ることになった。

 途中から聖一とテレビ局の人間が加わり、新たなニチアサの戦隊モノのロボットとなる。

 五体のロボットを作り、変形合体をする大型ロボットが完成し、大いに盛り上がった。

 こうして、一真はクリスマスパーティまでにすべての仕事を片付けるのであった。

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