第45話 ついにパワードスーツの開発だ!
それから、とんとん拍子で新たな戦隊モノとして紅蓮の騎士をモチーフにしたものが作られる事になった。
具体的に話を詰めるということで聖一はここで別れる事になったのだが、そもそも彼は冬季休暇の身である。
一真はそのことについて問い質したのだが聖一は笑顔で問題はないと告げるのであった。
「こんなにワクワクする仕事だもの。休んでなんていられないよ」
「でも、年末年始は家族と過ごしたりするんじゃないんですか?」
「大丈夫。企画を作るだけだから、そこまで時間はかけないよ。どういう名前にするか、どういった方向性にするかっていう感じでね」
「そういうことならいいですけど、ちゃんと休んでくださいよ。下手したら俺が子供達に怒られちゃいそうです」
「アハハハ。そうだね。一真君が怒られないように早めに片付けるよ。それじゃあ、僕は行くね」
「うっす。今日はありがとうございました」
「またね!」
笑顔で去っていく聖一を見送り、一真と桜儚は倉茂工業へ帰った。
倉茂工業に帰ってきた一真が最初に見たものは巨大なロボットであった。
「なんじゃ、こりゃ!」
「ああ。帰ってきたか」
「これなんですか?」
「ナノマシンが完成したから何か作ってみようという話になってね。それだったら、面白いものを作ろうということになって出来たのがこれだ。ちなみにナノマシンは一切使っていない」
「う~ん! バカだけど好き!」
「ガハハハハ! 話の分かる上司は俺も好きさ」
「ところでこれ乗れるんですか?」
「勿論だ。兵装も積んであるし、いつでも出撃できるぞ」
「誰か試運転した?」
「した。だが、この機体はあまりにも性能がバカでな。動かすのも一苦労だし、一度動けば中々止められん」
「う~ん。聞けば聞くほど大バカ野郎としか言えない! でも、大好物です!」
「乗ってみるか? 試運転したやつは重力に振り回せれて吐いたがな」
「乗ってみましょう!」
作業員の説明を受けて一真はウッキウキでコックピットに乗り込み、操作レバーを握った。
電源をつけてブオンといういかにもな音を聞き、一真はニコニコと非常に嬉しそうな笑みを浮かべて有名な台詞を叫んだ。
「一真! いっきまーす!!!」
動き出して数十秒後、一真の乗っていた機体は爆発し、夜空に咲く花火のように儚く散るのであった。
爆煙の中から黒焦げになった一真がゴホゴホとむせながら出てくる。
「これ俺じゃなかったら死んでるよ? なんで自爆装置なんてつけたの?」
「敵に奪われた時の為と最終手段としてですね」
「納得~」
軽いノリであるがとんでもない代物である。
道理にかなってはいるだろうが誤作動を起こして搭乗者ごと自爆した日には目も当てられない。
「てか、これ資源の無駄使いとかで怒られるよな~」
「まあ、間違いなく怒られるだろう」
慧磨がこのことを知れば激昂するだろうが、一真には返しきれない恩があるので何も言えないだろう。
沖縄だけでなく沖縄の近海及びに離島まで解放したという功績がある上に、今後も同じような活躍を期待できるのでお咎めはなしだ。
とはいえ、遊び半分で資金を減らし、物資を失えば小言くらいは言ってくるに違いない。
「とりあえず、全員に通達! デザインが出来次第、作業にうつる。それまでは各自自由にして良し! 以上、終わり!」
そういうわけで一真も他の作業員達に混ざり、新たな武器や兵器を開発していく。
混沌としている現場ではあるが意外にも秩序は守られていた。
それは一真が知らないだけで桜儚のおかげである。
彼女は時折、喧嘩が起きそうになっている作業員達のもとへ向かっては宥めていた。
そのおかげで現場は喧しいことこの上ないが、特にこれと言った大きな問題もなく回っていたのである。
「ふう……。私がいなかったら、滅茶苦茶になってたわね」
一真は先導者としては優秀だろう。
だが、統率者としては無能であった。
熱意や気合ならば確かに一真は他の者達に道を指し示し、先を歩いて引っ張ることは出来るが、統率し、纏め上げることは出来ないようだ。
しかし、仲間には恵まれているので、一真は神輿としては丁度いい存在なのだ。
「ふふ……。本当に残念ね。彼さえ意のままに出来れば日本だけじゃなく世界すらも手中に出来たでしょうに」
誰にも聞かれないように桜儚は妖艶に微笑み、恍惚とした表情で呟くのであった。
その後も一真は作業員たちと共に魔法と科学を融合した技術を用いて様々な武器を開発していていく。
「このパイルバンカーとかどう?」
土魔法で作られた杭を炎魔法で射出。
その破壊力は凄まじく、現代兵器では再現不能な代物である。
しかも、弾数は魔力がある限り無限というぶっ壊れ性能だ。
「原理は全く分かりませんが浪漫ですね!」
「だろう! うおおおおおお!!!」
褒められた一真はドンドンッとパイルバンカーを的に向かって試し打ちをする。
反動で一真の体が後ろに吹き飛びそうになっているが、身体強化に加えて尋常ではない踏み込みで耐えている。
しかし、一真であったもそれだけの力がいるということは、一般人には到底扱えない武器であるため、兵器としての運用は難しい。
「反動が凄いですね。これなら地面に足を縫い付けても吹き飛びそうですな」
「どうにか出来る?」
「同じ力で相殺するか、全身をがっちりと固定するかですね」
「それしかないか~」
パイルバンカーは必須ということで一真はパワードスーツに組み込むことを決めていた。
とはいえ、そう簡単にはいかない。
他の作業員に指摘されたようにパイルバンカーの反動に耐えれるような仕組みを作らなければならない。
急がれることではないが重要な課題となった。
「一真さん! これ見てください!」
「ん?」
声を掛けられて向かった先には頭部にヘルメットを被り、コックピットのような椅子に座っている作業員と周囲を飛び回っている小さな砲台が目に映った。
「おお! なんだ、これ!」
「これはとある創作物に出てくるものを再現したものです。浮いている
「おお!」
「ただ、一つ問題があるとすれば非常に操作が難しく、戦闘中にはほぼ使えないということですね」
「おお……」
「しかし、マルチタスクが得意な人間であれば運用は可能かと思われます!」
「よし、なら、俺がやってみよう!」
一真はヘルメットを装着し、実際にやってみた。
まずは仮想の敵と戦いつつ、ビット動かすという操作を行い、それから狙撃という一連の動作を行った。
そつなくこなしてはいるが傍から見れば、やはり変態の所業である。
作業員が試しに的に扮したドローンを使って一真に近付けると、彼は動揺することなく的を打ち抜いた。
「お見事としか言えませんね……」
「これ結構使えるけど、やっぱり常人だと難しい感じ?」
「普通は難しいですね。相当、練習しても無理です」
「なんで?」
「イビノム、犯罪者との戦闘をシミュレートしましたが高速戦闘なので基本当たりません。アニメに出てくる天パが頭おかしいだけです」
「なるほど……。あれ、俺は?」
「貴方も変態ですね」
「上司に向かってなんて口の利き方をしてやがる……。ちなみにこれの名称は? 流石にモロパクリじゃやばいでしょ」
「フェアリィシステムと仮称しています」
「へえ。良い名前じゃん。話は戻すけど、操作方法はAIで自動操作なら問題ないんじゃね?」
「そちらは問題ありませんが精細さに欠けますね。決まった動作しかしませんからパターンさえ覚えれば対策は可能です。その点、マニュアル操作ですと先程のような変態的な機動が可能ですので対応は困難を極めるでしょう」
「変態的……。もう少し、言い方ない? 神掛かってるとかさ」
「立体起動に高速移動をしつつ、ビットを自由自在に動かし、精密射撃している人間はもう変態ですよ」
「変態の呪縛から逃れられない……。もうそれでいいよ」
変態と呼ばれるのは癪であるが怒るほどのことではないと一真は許すことにした。
それからも、作業員たちと共に兵器開発に情熱を注いでいると、一真の携帯に栄治から連絡が入った。
その内容は見るまでもない。
デザインが完成したというものであった。
思った以上に早かったが、一真は体感時間ですでに数年以上経過していたたことを思い出した。
「これから向かいます、と」
返信を送り、一真は桜儚を連れて栄治のもとへ転移した。
栄治の部屋の前に辿り着いた一真はインターホンを押して、訪問したことを告げる。
インターホンが鳴ってからすぐに栄治が外へ出て来た。
彼は目の下に大きなクマが出来ており、何日も缶詰め状態のようだった。
「お久しぶりです……」
「現実時間はそんなに経ってないけどね」
「そう言えばそうでしたね。それよりもデザインが完成しましたので確認お願いできますか?」
「楽しみだな!」
栄治の部屋に入り、一真は早速デザインを拝見する。
一真の注文通り、エロスとキュートが融合したものとなっており、満足いくデザインであった。
勿論、一真が伝えた通り、シャルロットのものは和風なデザインとなっており、くのいちをモチーフとしたものとなっていた。
これならばシャルロットも気に入ってくれるだろうと一真は希望的観測を抱いて頷いた。
「よし! これで問題ない!」
「私にも見せてくれないかしら」
「ほれ」
一緒に来ていた桜儚にデザイン絵を渡して一真は栄治に向き直る。
「渋沢さん。最高の仕事をありがとうございます。報酬についてなんですが口座払いと現金どちらがいいです?」
「口座払いでお願いします。現金でなんて怖くて受け取れませんよ」
「わかりました。おい、桜儚。すぐに支払いを」
「ちょっといいかしら?」
栄治が描いたデザインを見ていた桜儚があることを尋ねる。
「これってもう少し煽情的なものに出来ないの? 私はもっと攻めてもいいと思うのだけど」
「え、あ、いや、それでもかなり攻めたほうだと思うのですが」
「私のはもっと過激でも構わないわ。私、スタイルには自信があるし、恥ずかしいとは思わないもの」
「えっと……」
助けを求めるように栄治は一真に視線を向けた。
「渋沢さん。彼女のものは改造出来ますか? 追加報酬は払うので」
「い、いえ、十分に貰えますので問題はないです……。ただ、新規のデザインにした方が早いかと」
「ふむ……。それならお願いしてもよろしいでしょうか?」
「わかりました。お任せください。他のものはどうしますか?」
「桜儚、お前から見てどう思う?」
「悪くないと思うわ。彼女達がどう思うかは別としてだけど」
「そうか。なら、十分だ。栄治さん、口座番号を後でメールにお願いしますね」
「分かりました。残りのものは完成したらメールで送りましょうか?」
「そうですね。それでお願いします」
「では、そうしますね」
一真は完成したデザインのデータを受け取り、倉茂工業へ戻った。
作業員たちを集め、栄治から受け取ったデザインを元に一真は新たなパワードスーツの開発を始めるのであった。
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