第36話 ドラ〇もん欲しいな! タイムマシンを貸してほしい!
一方で何も知らない一真は時計塔の前に来ていた。学園祭を一緒に回ると約束をしている戦闘科の宮園たちを一真は待っている。
しばらく、ぼんやりと行き交う人々を見詰めながら一真は時計塔の前に突っ立っていると、これまた怪しげな集団が現れる。
一真から見て右方向に白装束纏った人物と、それを囲むようにスーツを着ている男達。とても一般人とは思えない格好をしており目立っているが、今日は学園祭の為、周囲の人達はコスプレとしか思っていなかった。
そのコスプレ集団を見て一真は「お祭りだと頭のおかしい奴が出てくるのはどこも一緒か」と呑気に考えていた。
一真はコスプレ集団から目を背けて、携帯を弄りだす。SNSで第七異能学園の情報を集め始めた。あのコスプレ集団について何か情報でもないかと、検索をしているがヒットしない。
「(あれだけ目立つのに誰も気にしてないのか……?)」
もしかすると、撮影禁止なのかもしれないと思い始めた一真は携帯をしまった。
それから、しばらくすると今度は左側が騒がしくなる。はて、今度は一体なんだろうかと一真は、そちらに目を向けるとそこにはモデルのような二人組の男がいた。
サングラスを掛けているが、見るからにイケメンだと分かる顔の造りをしている二人組に一真は訝しげに眉を寄せた。
「(今度はなんだよ? どこかのアイドルか?)」
左からはアイドルのような二人組、右からは謎のコスプレ集団。学園祭初日からぶっ飛んだ人が来ているなと一真は辟易していた。
これは場所を変えた方がいいかもしれないと一真はしまった携帯を取り出して、宮園たちに連絡を入れる。が、繋がらない。
あれ、と一真が首を捻っていると周囲の人達も携帯が使えないようで困惑の声を上げていた。これは、もしや何か良くないことが起きているのではないかと一真は警戒をする。
そして、アイドルのような二人組と謎のコスプレ集団が一真の前に辿り着いた。この人たちは一体何者なのだろうかと一真が両者の顔を覗き込もうとしたら、何故か両者が睨み合いを始めた。
「おやおや、まさか聖女様がお越しになるとは」
「口を慎め。田舎騎士」
「ほう? それは私のことを言っているのかね?」
「お前以外に誰がいる。気安く聖女様に近付くな」
「ハハハ。どうやら、相当嫌われているようだ」
「我等はお前達に用はない。早々に立ち去れ!」
「そのセリフ、そっくりそのままお返ししますよ」
一触即発の雰囲気である。今すぐにでも喧嘩が始まりそうだ。むしろ、すでに口論は始まっている。このままだと第二言語と言われている暴力が火を噴くだろう。
その中心にいる一真は気が気ではない。どうして、目の前で喧嘩を始めようとしているのか理解できなかった。
言葉を聞いている限り、両者は知り合いらしいが穏やかな関係ではないという事がわかる。だからといって、このような公の場で喧嘩をしないで欲しい。
「(嫌だな~。なんで、この人たち喧嘩始めようとしてんのか)」
こっそり逃げようとする一真であったが、両者に回り込まれてしまった。これでは逃げられない。退路を塞がれてしまった。
「(あれ~~~?)」
何故、自分を閉じ込めようとするのか分からない一真は首を捻って考えるが、やはり分からない。
しかし、思い当たる節はあった。以前の体育祭で中華連邦、アメリカが動いていたことを思い出した一真は、そこでようやく理解した。
この二組の集団は恐らくどこかの国のスカウトマンだろうと。
その予想は正しいが、ただのスカウトマンではない。片方はイギリス最強と言われる異能者集団、円卓の騎士である。
もう片方はフランスの聖女。伝説の聖女ジャンヌ・ダルクの再来と言われているシャルロット・ソレイユ。治癒能力者の頂点に立つ人物である。
「皆様、お静まりください。彼が混乱してます」
透き通るような声が響く。それまで一触即発の雰囲気であった両者は、その声を聞いて静まり返った。
「(ひょえ~。これ、異能じゃないけどカリスマ性のある声だな~)」
異能ではないが時に神秘を宿す者は昔からいた。彼女の声がその一種なのだろう。一真以外の人達はその声に従って大人しくなった。
「皐月一真様」
「え、あ、はい?」
突然、名前を呼ばれて一真は振り返る。振り返った先にいるのは白装束を纏った聖女ことシャルロットだ。彼女はまっすぐ一真を見詰めている。一真は視線こそ合わないが、真っすぐに彼女を見た。
「この度は突然のことに驚かせてしまい、申し訳ありません」
「悪いと思ってるなら、帰って~」
「貴様ッ!!!」
ちょっとした冗談を言ってしまった一真に聖女の護衛を務めている男が怒鳴り声を上げた。彼は聖女に対して無礼な物言いの一真に怒りの鉄拳制裁を放つ。
バシッと一真に拳が到達する前に男の放った拳は止められた。円卓の騎士ベディヴィアによって。
「先に無礼を働いたのはこちらですよ。貴方が怒る理由は理解できますが、何の罪もない人間に手を出すとはどういう了見か」
「ぐっ! は、離せ!」
「まずは謝罪です。彼に謝りなさい」
この時点で一真は謎のコスプレ集団に見切りをつけた。白装束の女性がスーツ姿の男達にとって重要な人物であると分かったが、碌な集団ではなさそうだと距離を置くことにしたのだ。
対して、自分を守ってくれたアイドルの二人組はまだまともな人間であると理解した。
それと、味方であると判断した一真は少々イラついていたので謎のコスプレ集団に対して一言申す。
「あのさー、聖女様だかなんだか知らないけど、今日は年に一度のお祭りなんだよ。それをぶち壊そうとしてる奴に礼儀を払うか? おたくらも年に一度の生誕祭を邪魔されたら腹を立てるでしょ? 今がそういう状況なんだよ、そこんところ理解してる?」
「たかだか学園の行事と我等が主の生誕祭を同列に語るな、小僧!」
ここが異世界であったなら一真は間違いなく、暴言を吐いてきた男を殴り飛ばしていただろう。もっとも、落ち着けと仲間に羽交い絞めにされているだろうが。
「はあ? こちらとら、たった三年しか味わえない行事やぞ? どれだけ金を積もうとも二度と体験することの出来ない貴重な時間をお前等は自分達の都合で邪魔してんだよ。理解できねえんなら――」
と、そこまで言って一真はここがどこだか思い出した。時計塔前で学園祭。人が大勢いる中で一真は大胆な事を口にしていることを理解し、血の気が引いた。
「(しまった。流石に言い過ぎた!)」
最近、立て続けに面倒なことが増えたせいで一真は鬱憤が溜まっていたのはわかるが、これはやってしまった。一介の学生の範疇を超えている。これでは自ら正体を言っているようなものだ。
一真がどうしようかと戸惑っていた時、約束をしていた戦闘科の友人たちが人混みをかき分けて飛び出てくると、一真の手を取り、その場から颯爽と逃げ出した。
「バカ! お前、何やってんだよ! いくらなんでもアレは空気が読めなさすぎ!」
「いや~、ハハ」
「笑い事じゃねえよ!」
一真の手を引っ張って逃げるのは俊介である。彼は一真を連れて校舎の中へと逃げていく。
「ったく。一体何やってんだよ」
「それについては俺じゃない。向こうが勝手に俺の前で喧嘩始めそうにしてたのがいけないんや!」
「はあ……。とりあえず、これからどうするかだな~」
「あ~、ちょい待って」
一真は携帯を取り出して、とある人物に電話を掛ける。この騒動を収束するには彼女の力を借りるほかないと、一真はアメリカの魔女ことアリシアに電話を掛けるのであった。
「もしもし、助けて、アリシア!」
『OK!』
何も言わずにアリシアは一真の
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