第81話 二度寝

 炎暑を思わせるような強い陽光がカーテンの隙間から室内を照らす中、夢の世界へと旅立っていた実親は寝苦しさを感じて重たい瞼をゆっくりと開く。


 カーテンを閉め切っていても明るい室内が眩しくて瞳に痛みが走り反射的に眉を顰めてしまう。

 薄目の状態で明るさに慣れるまで大人しく待機していると、胸元から「んん」とくぐもった吐息が聞こえてきた。


 その吐息に釣られるように掛け布団をめくって自分の胸元へ視線を向けた実親は、寝苦しさの原因に気が付いて頭を掻く。

 横向きに寝ていた実親の胸に顔をうずめ、右腕を腰に回して抱き着くように眠っている紫苑がいたからだ。

 強い日差しの影響もあるが、彼女に密着されているから寝苦しさを感じたのであった。


 紫苑は掛け布団に包まれている上に実親に密着しているので見ているだけで暑苦しい。しかし心地よさそうに眠っているので余計な心配かもしれない。


 安心したように眠っている彼女の姿を見ている実親の眼差しが温かみを帯びていく。

 左手で紫苑の髪を優しく撫でると汗で湿っていたが不快感はない。本人はぐっすりと眠っているが、やはり身体は暑さを感じていたようだ。


 掛け布団をめくったことで彼女の上半身が露になっており、傷一つない張りのある素肌に寝汗の雫が浮かんでいた。

 今の紫苑はショーツだけを穿いてブラジャーを身に付けていない。なので彼女の胸にある二つの突起が実親の腹部に当たっていた。

 その所為で実親の下半身が強い存在感を主張してしまう。彼をフォローすると寝起きだからというのもある。これは男ならではの生理現象なのだ。


 いや、それだけではない。

 最大の原因は昨夜のことだ。


 昨夜は紫苑のたわわに実ったお胸様を揉みしだいた。

 最初はブラジャーの上から揉んでいたが、次第に興が乗っていった彼女に言われるがままブラジャーを剝ぎ取ってしまい、何も隔てる物がない胸を直接揉みしだいたのである。


 その時の感触は今でもはっきりと残っており、押し返すように張りと弾力のある胸に包まれた手は歓喜に震えていた。

 正直途中から半分理性を失っていた実親は二つの突起も弄ってしまった。実親が最初に触れた時には既に元気になっていたので、興奮しているのがバレた紫苑は恥ずかしそうに少しだけ頬を赤く染めたが、抵抗せずに受け入れて満更でもなさそうにしていた。

 揉んだり撫でたり抓ったりする度に反応する紫苑の表情と嬌声が妖艶で、つい見入ってしまい余計に理性を失い掛けたのは実親だけの秘密である。


 感触が残っている左手を見つめながら開いては閉じるを数回繰り返す。

 完全に理性を失ってもおかしくない状況で良く我慢出来たな、と思うほど至福の時を過ごしたが、昨夜の紫苑の表情を思い出す度に脳裏に刻み込まれた彼女の痴態がフラッシュバックしてしまう。


 ショーツ一枚履いただけの裸同然の格好で抱き着いて眠る紫苑の無防備な姿も相まって、生理現象で元気になっていた下半身が違う意味でも存在感を強めていく。


 勘弁してほしいと溜息を吐きたくなるが、安心したように穏やかに眠る彼女の表情を見たら何も言えなくなる。

 昨日は怖い思いをしたので今くらいはゆっくり休んでほしい。そう思うと喉元まで出かかった不満が引っ込んでしまった。


 不満を紛らわすように紫苑の頬を優しく愛撫するが、深い眠りについているのか全く起きる気配がない。それだけ安心しきっている証拠だろう。無防備すぎるのは一抹の不安を抱くが。


 いくら起きる気配がないとはいえ、しがみ付かれているので身体を起こすと流石に目を覚ましてしまうかもしれない。

 折角気持ち良さそうに寝ているのに起こしてしまうのは気が引けるので、実親は二度寝することにした。昨日は悶々としながら眠りについた所為で寝足りなさを感じていたので丁度良い。


 実親はめくっていた掛け布団を掛け直すと、抱き締め返すように紫苑の背中に左腕を回して瞼を閉じた。

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