リサイクル

「木製品は燃えるゴミだな」


町が発行しているゴミの分類方法の冊子を広げながら、兄は次々にゴミ袋に木製の食器や箸を入れていく。


「割烹着は衣類で、緑の袋か」


この町のごみの分類は難しい。全部で八分類もある上に、それぞれ指定のごみ袋に入れて出すという決まりがある。この生前整理のために用意した大きめの袋は、分類ごとに違う色で町の名前が印刷され、しかも袋自体も高額だ。小さな袋なら、十枚入りが二百円程度だが、一番大きい物だと十枚で五百円くらいだ。捨てるためにお金がこんなにかかるのだから、理不尽さを感じずにはいられない。


「瀬戸物は青か」

「売らないのか?」


皿に手を掛けた兄に、つい声をかけた。色が剥げた物などは分かるが、まだ使えそうな物で箱に入っているものは売れると思ったのだ。


「こんなにいっぱい、車に入らないだろ」

「ああ、そっか」


俺の家の車は全て軽自動車だ。後ろの座席を倒しても、物が入るスペースは限られている。俺と兄が別々に運転しても、せいぜい二台分しか入らない。しかも、買取拒否をされたら、最悪、家に持ち帰らなければならない。リサイクルショップは車で一時間もかかる場所にしかないため、そんな徒労は真っ平だ。これはさらに厳選する必要がありそうだ。


 結局、車二台分の物を残して、他は全て捨てることになった。タンス自体も粗大ごみとして出すことにした。これで東側の空間はきれいに片付けられ、壁が見えるまでになった。次のゴールデンウィークでは、西側を片付けることにして、俺と兄は作業を終えた。その頃には俺も兄も汗と埃にまみれていた。このままでは店に行けないので、顔を洗って服を着替えて、リサイクルショップに意気揚々と移動した。


 車への積み込み作業の際は、全部で昼食代くらいになればいいと思っていたが、売れたのは一部だけで、五百円にしかならなかった。それぞれの車で自宅に戻り、俺はあることを思い出した。新聞を束ねておかなければならないことを、すっかり忘れていたのだ。親子リサイクルという行事を、子供会とその保護者がやっているので、そこに各家の新聞や雑誌の束を家の前に出しておくのだ。すると、子供会が中心になってその束をトラックの荷台に積んで、小学校に運んでくれる。最近は過疎が進んでいるし、高齢社会だから、子供がいない地区はなくなったらしいのだが、幸運にもこの地区にはまだ小中高生がいる。その子供たちが、地域住民との交流やリサイクルの大切さと大変さを学ぶために、毎年春に行われている。あの暑くて埃っぽい小屋に行くのは億劫だが、地区のことならば仕方がない。しかも、子供がやる仕事なだけに、俺の家だけ不参加だと印象も悪いだろう。

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