第7話 粉々
美紀の夫である圭一は、警視庁に勤めている。詐欺や横領などの知能犯を捕まえる捜査2課の課長として、追っている事件の捜査が大詰めを迎えていた。
近頃、詐欺被害にあった人々が、騙されたお金を取り戻すなどとの名目で、さらにお金をだまし取られる、2次被害にあっている事件が多発している。
警察から情報が流出している可能性を含めて捜査をしていたら、最重要容疑者として雅人が上がっていた。
そして今日、犯人が現れて現金を受け取りに来るという情報を掴んだ警察が、現場で張り込んでいる。その最前線には、犯人逮捕に執念を燃やす圭一が、目を光らせていた。
しばらくすると、現場にフードを深くかぶった被疑者らしき人物が現れた。現場が緊張に包まれたその時、その人物は現金を受け取った。
それを目視した圭一ら警察官は一斉にその場を取り囲み被疑者を確保した。暴れる被疑者のフードを圭一が捲し上げると、なんとそれは美紀であった。
美紀は圭一と目が合うと驚いたが、夫の圭一はさらに驚いた様子で言葉が詰まった。
圭一はいまだ信じられずにいたが、他人の空似であることを信じて、美紀に手錠をかけてパトカーへ乗せると、美紀が口を開いた。
「あなた、ごめんなさい」
この言葉で圭一は膝から崩れ落ち、しばらく立つことができずにいた。
その後、ミリアが巧みに残した嘘の証拠品で、美紀が主犯格とされ、濡れ衣を着せられることとなった。
美紀は起訴され、実刑が言い渡されると同時に、圭一から離婚届けを手渡された。
雅人とミリアはいまだに捕まっていない。
刑務所の中で美紀は、出所したら真っ先に千葉県へ行くことを考えていた。
誰にも言えないような秘密を話せば、全ての物事がスムーズに進み、幸せになれるといわれていた『秘密の壺』を、粉々に叩き割るために。
おわり
ロマリア 団田図 @dandenzu
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