第6話 サバイバルモード発動
それから雅人とは月に一度会う程度で、半年がたった頃。
美紀は朝、夫が出勤するのを見送ろうと玄関へ行った。夫が革靴を履くときに、下駄箱の上に置いたカバンから、チラッ見えた写真に雅人が写っているのを見つけてしまった。
まさか、浮気がばれてしまったのかと肝を冷やした美紀は、とっさに聞いてしまった。
「そ、それは?」
「ああ、こいつは今追っている極悪の詐欺師なんだ。あまり詳しいことはいえないけど」
動揺する美紀であったが、なんとか平然を装って、夫を送り出した。
(ちょっとまって。きっと何かの間違えよ。だって詐欺は誰もだますことができず、すぐにやめたって言てったじゃない。きっと間違えよ。そうよ。)
頭を整理しようとしても、落ち着きを取り戻せない美紀は、雅人に直接聞こうと思い、会うこととした。
雅人と会った美紀は、警察にに追われていることを伝えると、雅人は黙ってしまった。
「ねぇ、何かの間違えよねぇ。そうでしょ。ねぇ!」
・・・・・・・・・・・・
「ねぇねぇねぇねぇうるさいですねぇ」
いつも笑顔で優しかった雅人が、人が変わったように怖く、鋭い目つきへと豹変した。
「もう少し稼ぎたかったけどそろそろ潮時かー。撤収しようかーミリアー!」
雅人の陰から、妹のミリアがノートパソコンを触りながら現れた。
「ミ、ミリアちゃん。学校は?」
「キャハハ。おばさん。私21歳なの。それに雅人とは他人。つうか仕事の相棒」
「あ、あなたたち一体何者?」
「まあまあ美紀さん。俺たちは誰だっていいじゃん。それより最後の仕事を手伝ってよ。じゃなきゃ、俺と不倫していたことや、美紀さんの夫のパソコンにウィルス仕込んで警察から情報抜いていたのを手伝ってくれていたこと全部ばらしちゃうよ」
「ちょ、ちょっとまって。不倫していたことは認めるけど、パソコン?ウィルス?情報抜く?何のことよ」
「いやだなー。半年前に美紀さんが俺を家に招き入れてくれて、ご主人のパソコンにウィルス入れるの手伝ってくれた共犯者じゃない」
「そんなの嘘よ。あなた、そんなことしていたの?じゃあまさか最初から私に近づいたのはそのため?」
「あれ?今頃気づいちゃった?美紀さんが『マート1208』を検索して出てきたブログを作ったのも、ビキがやり取りしていた相手のマートも全て俺じゃなくここにいる凄腕ハッカーのミリアでしたー」
「えへへ。病院の屋上で骨折したふりをしてると入院しているみたいに見えるよね。あの時は笑いこらえるの苦労したわー」
「で、美紀さん、最後の仕事だけど手伝ってくれるよね。終わったら綺麗さっぱり君の前から消えて二度と表れないから。お互い悪くない話でしょ。ってかお前に選択権ないけど」
騙されいたことと、脅されていることとで、落胆・恐怖・怒りが同時に押し寄せた美紀は、感情の整理が追い付かず、考えるのをやめて従うこととした。
その先に、すべてが終われば平穏があると、自分に都合のいい解釈をして。
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