第23話 樂趣路からの客人
かつて、庚申寺へ身を潜めた京華とアヤメを追いかけた
「他の者たちは、それぞれの当てへ散りました。私は行くところがなく、こうして
「勿論です。貴女の安全は、この私、カンナが保証します。一度女人街の門を潜った女性は私たちの家族……貴女に合った仕事も与えましょう」
「ああ、ありがとうございます……」
「カンナ、仕事振るのは私」
「わかってるよリンドウ。お前の得意分野だろう? 信頼してるぞ」
それを聞いたリンドウは少し恥ずかしそうな様子で、自分の顔を食べかけの鶏排で少しだけ隠す。膝の上ではナデシコがすっかり安心したようで寝入り、ソファでは相変わらずインファと呼ばれた女性が横になったまま胸元を上下させていた。
「……で、それはその場しのぎとして、深淵のことを聞かせてもらっていいかな」
「はい、答えられる範囲ならば」
「構わないよ。奴らが街に来た時、どの方角から来たか覚えてるかい?」
当時の深淵の動きについて、自宅で刺客を迎え撃っていたカンナはある程度状況を把握することはできていた。カシワから具体的な方角と人数、そして店の被害状況を聞いたカンナは、そこからおおよその軍勢と方角を割り出していく。
そうして、襲撃に用いた拠点のおおよその位置を予測した後、寝転がっていたインファの太ももを指でなぞってくすぐる。ひああっ、と色っぽい声を上げて起きた彼女は、カンナの存在に気づくと、慌ててチャイナドレスを正してソファへ座り直した。
「やあん、もうカンナさんったら、優しいキスで起こしてくださってもよいのに」
「悪かったよ、後でしてやるから。でもその前にインファに新しい依頼を頼みたい」
「何ですの? 『神話』以外に知りたいことがありまして?」
「ああ。そちらの彼女から話を聞いて、深淵の灵西最後の支部を大まかに予測した。そこを叩けば街は落ち着くだろうから、場所を割り出す仕事をお願いしたくてね」
インファは髪型を整えながらカシワの存在に気づくと顔を赤くし、そのままソファの後ろへ回ってなんとも居づらそうにする。
「なんてこと、お客様の前で恥ずかしい姿を晒してしまいました……」
「お客様、じゃないよ。彼女は――カシワは、私たちの新しい家族だ」
「不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」
「よろしくお願いします。そうそう、カンナさんにお渡ししたい物がございますの」
「インファが起きてるとうるさい」
「リンドウさん、酷いことおっしゃらないでくださいまし!」
ぶつぶつと文句を言いながらインファは一台のスマートフォンを渡す。京華の物より型は古いが、現行機種と比べても遜色ない性能を誇る。眠っていたナデシコは、頭の上で何かが動いていることに気付くと目を覚まし、もぞもぞとカンナのスマホを覗き込む。
「私たちの集めた情報をいつでも見られるようにまとめておきましたわ。これで出先でも確認できますし、ユーリネットも使えます」
「すごい……!」
「おお、ついに完成したか……で、どうやって使うの?」
「ああ、まずはそこからですか……」
「インファ、勝手にやらせとけ、です」
「カンナ、おばあちゃんみたいだね」
「なっ――」
そんな会話をしている時、ホテル桃源郷の扉が乱暴に開けられ、一人の女性が必死の形相で応接室へ転がり込んできた。長い髪を一本に結んで赤いメッシュを差した胴着姿の女性。門番のアカネだ。
先程まで談笑していた四人が一斉に黙り込む。息を整えたアカネが声を張った。
「女人街の門に、
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