第15話 相性

「お姉ちゃん、五行ごぎょうって知ってる?」

 ハナがある時、聞いてきた。代行者の仕事が終わり、二人で話をしている時だ。

「聞いた事はあるよ。水は火に強いってヤツでしょ?」

 ざっくりしている。ハナは頷いた。

「まぁそう。私達は水の属性だから、火には強いけど、土の属性には弱いのよね」


 五行相剋ごぎょうそうこく

 五行とは、この世の全ては、木・火・土・金・水の五つの要素で出来ているという考え方だ。そして、その五つの要素には相性がある。

 木は土に強く、土は水に強い。水は火に強く、火は金に強い。そして、金は木に強いという関係性だ。戦いの上では、この関係が重要になる。


「妖怪にも五行の属性ってあるの?」

「全員にあるわけじゃないけどね。強い妖怪は、だいたい属性を持ってる。技でどの属性か分かるわ」

 ハナが尻尾を軽く振ると、水しぶきがぱしゃりとはねた。

「じゃあ、私達は土の属性の妖怪には勝てないの?」

「そんな事はないよ」

 そこは強く否定する。

「相性は良くないけど、絶対に勝てないわけじゃない。こっちの力が強ければ、土でも勝つことができる。それを“相侮そうぶ”って言うんだけど」

 タエは安心した。相性が悪いからと、諦める必要はないのだ。

「どの属性でも勝てるように、私達はもっと強くならないとね」

「確かにね。私はやっと一人で戦えるようになったくらいだし。もっと努力しないとやねぇ」

 少しずつ成長してきているが、どんな時でも落ち着いて戦える強さと精神力が必要だ。ハナも大きく頷いた。

「お姉ちゃんは、剣術は上達したから、そろそろ次のステップに移ろうと思ってる」

「次のステップ?」

 タエの顔が引きつった。

「体術、弓術きゅうじゅつ、棒術、その他あらゆる戦い方を覚えてもらうわ」

「ひぃっ、また地獄の鍛錬!?」

「強くなる為よ」

 ハナの百点満点の笑顔が怖い。タエに拒否権はないのだ。それが、自分達が代行者として有り続ける為に、必要な事だと知っているので、タエも覚悟を決める。



 高龗神タカオカミノカミはハナをタエの教育係として、最初から決めていた。ハナに様々な戦闘の仕方、極意や間合いの取り方、武器の使い方をしっかりと教え込んでおり、タエを成長させる為に容赦ようしゃのない鍛錬が行われた。

 命がかかっている修行は厳しいものだったが、タエは根を上げることなく、しっかりと実力を付けて行った。




 花村家にて。

「今度はカンフー映画にファンタジー系の映画? やっぱり戦闘シーンばっかり繰り返し見て」

「うん。イメージトレーニング」

「だから何の!?」

 母は娘が非行に走らないか、若干じゃっかんの不安に駆られた。

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