レポート51:「少しでも美味しいモノを食べたい」
「少しでも美味しいモノを食べたい」
俺たちはお昼休みになって拠点内の食堂で休憩をしていた。
ちなみに今日のお昼ご飯は、昨日作っておいた晩御飯の残りと簡単な焼き飯だ。
近所にコンビニがないのが悔やまれる。
いや、元々あの村にコンビニとかないけど。
「いい加減、なんか食事も便利にするとか、楽しむ方法考えないとな」
俺がそう呟くと……。
「え? これでいいじゃん。普通に美味しいよ」
「はい、そう思いますが……」
「何か問題あるの? 葵ちゃん、今の食事って変?」
「いえ、普通だと思いますけど?」
俺以外の4人は首を傾げる。
まあ、この4人は世間をしらないからそういうもんだろうな。
いや、別に世間の常識ってわけでもないか。
「あー、なんて言ったらいいのかな。昼食って仕事の合間の休憩だ。そこには楽しむ必要がある。いや、葵ちゃんとかはお母さんがお弁当作ったりしてくれるかもしれないけど、日本の社会人とかは独身だとどこかに食べに行くほうがよくあるんだ」
「なるほど、裕也としては昼食はどこかに行って食べたいと」
「食費はかさみそうですけど、まあ予算的には問題ないですね。でも、今まであの村で暮らしていた時はどうしていたんですか?」
「そうよね。どこかに出てたの?」
「あ、おばちゃんの食堂とか?」
「ああ、葵ちゃんのいう村唯一の食堂にはよく言ってたな。あとは自炊がメインだ。まあ、贅沢っていうかモチベーションの話と、時間の短縮だよ」
俺がいいたかったのは、これからは拠点でせっせと魔力の研究とか、作物を育てることとか、この世界の調査に重点を置くことになる。
つまり、その間の休みに調理をしてご飯を食べるよりも出来あいの好きなものを食べた方が時間的にもモチベーション的にも嬉しいんじゃないかってことを伝える。
「まあ、効率を考えるとそうよね。私たちは惑星調査がメインの仕事だし、調理して洗い物してっていう時間は、無駄といえば無駄ね」
セージは納得してくれた。
「でもさ、どうするの? こっちに食堂のおばちゃん連れてくるわけにもいかないでしょ?」
「確かにそうですね。誰かを雇うわけにもいきませんし……」
なぜか技術の申し子の2人が首をかしげて悩んでいるが……。
「えーと、そういうのってロボットとかに材料を突っ込んで作ってもらうとかできないんですか?」
俺が言うよりも、葵ちゃんがそのことを言うと。
「「「ああ」」」
と、セージも含めてポンと手のひらを打っていた。
「できるわね。料理番組とかネットの料理サイトのデータを使えば上手くいくわね。問題は食材だけど、買うか、複製機でコピーを作るかね」
「別に複製機の食材でも味は変わらないんだろう?」
「うん。代わらないはずだよ」
「ですが、本物ではないんですよ?」
「複製品を使うと犯罪になるんですか?」
葵ちゃんが首をかしげて問いかける。
俺もそういう話は聞いたことがない。
「ああ、何というか、私たちの知識じゃ本物が至高って言われているからね。コピーはどうしても劣化だと思ってしまうのよ」
「そうそう。葵ちゃんだって、好きなブランド品があると思うけど、それが偽物コピー商品だと嫌でしょ?」
「あー、そういうことですか」
「なるほど。コピー商品みたいなイメージになるのか。合法だけど」
服は服でも、有名ブランドか無名ブランドか。
確かに気になる人は気になるだろうな。
食べ物でも輸入元とか気になる奥さんとかは多いらしいし、最近は産地明記だしな。
「よし、それなら、経費で食材買い込むか。冷蔵で保管で長持ちはするか?」
「長持ちというか、劣化しないわよ。解凍も簡単」
「うん。そうでもしないと食材とか宇宙各地に運べないからね」
「じゃ、色々買い込んでおけば色々料理ができるってことですね。いいなー」
「そうですね。色々下準備もできるロボットを導入しましょう」
という感じで、拠点をより快適に過ごすために改善点を出し終えたところで……。
「ごはんのことは、午後に買い出しに行くとして、魔術の練習はどうなったの? 全員魔術は覚えられたの?」
ここでようやく午前中の話になった。
そういえば、セージだけは別行動で話してなかった。
「おう。全員ファイアーボールは覚えられた」
「ん? ファイアーボールだけ?」
セージは不思議そうに首を傾げている。
おそらく全部覚えられていると思っているんだろう。
うん、覚えられるとおもう。
何せ……。
「そう。ファイアーボールだけ覚えてそのあとは変化させてみたんだよ。これ、葵が面白いものを見せてくれてね」
そう言って、カカリアが葵ちゃんのファイアーボールを見せる。
セージはそれを真剣な目で見て。
「なるほど。予想はしていたけど、魔力量とイメージでってことかしら?」
セージはパッと見ただけで、なぜそのような変化が起こったか分かったようだ。
「その様子だと、セージも同じことをしていたのですか?」
「ええ。覚えた魔術の魔力量の計測をしながら、ちょっと変化をかけてみたわ。とはいえ、ここまで露骨に魔力を注ぎ込んだりはしてなかったわね」
「あううう……」
葵ちゃんは恥ずかしそうにしているが、セージたちにとっては大事な情報なので真剣な様子は変わらない。
「それで、他の実験っていうのは?」
「簡単だよ。形状を変えたり、威力を上げてみたりってやつ。ほら」
カカリアはそう言って、次の映像を見せる。
そこには、俺たちが映っていて色々な魔術を撃っている。
そう、色々な魔術だ。
「……ファイアーボールどころか、水とか、土とか、氷とか、どうなっているのよ」
「イメージしてやったらできたんだよね。電撃も」
カカリアの言う通り、あの後イメージで最初は炎系統の変化と威力を上げることをしていたんだが、そのあとは不意にほかの属性、つまり水とか土とかできるんじゃないかと思ってやってみるとあら不思議。
簡単にできてしまった。
魔術チョロいなおい。と思ってしまうのと同時に、なんでこんな簡単なことであれだけお金を取るのかと不思議に思ってしまう。
いや、安いのか?
そこら辺の価値はまあ後日調べるとして、そんな感じで俺たちは午前中で色々な魔術を使えるようになってしまった。
極めつけは……。
ズドーン!
タイミングよくその場面になったようで、撃った葵ちゃんはまた呆然としてしまっている。
「これ、どんなイメージで撃ったわけ?」
「えーと、爆弾です」
「火薬ってこと?」
「そうなるのかな?」
「……それって、火薬を生成しているってことよね? カカリア、どうなの?」
「うーん、どうなんだろう? そういう所は意識してなかったな~」
「あとで要検証ね。とはいえ、カカリアが岩を出しているし、複製機みたいに近くの分子をつかって生成していると考えれば別に不思議なことでもないのかしら?」
確かに、火は燃焼するモノがいるし、水も水素と酸素がいるわけだから、周りから集めてくる必要がある。
そこを考えれば、火薬が出来ても特に不思議でもないのか?
ボーン……。
掛け時計から音が鳴る。
気がつけば12時50分だ。
「さて、なんか仕事の話をした気がするけど、食器をかたずけて、料理の材料買い込みに行くか。セージと椿はそのロボットとかの設置頼めるか?」
「わかったわ」
「はい。わかりました」
「よし、じゃ俺たちも行くか」
「「おー!!」」
俺はカカリアと葵ちゃんを連れて村に戻ってから車をだして買い出しに向かうのであった。
正直、惑星調査の仕事が進んでいるのかといわれると首を傾げたくなるが、まずは働きやすい環境づくりというのは大事だと思うことにする。
食事が水ゼリーだけとか嫌だしな。
おっさんは田舎に引っ込んでなぜか宇宙に行った 雪だるま弐式 @thesnowman
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