レポート49:「新しい魔術の習得へ」

「新しい魔術の習得へ」



昨日魔力感知を覚えたあとは、確認を多少してから仕事は終わりとなった。

魔法を仕えた興奮もあってファイアーボールとかを覚えたかったのだが……。


『葵ちゃんを差し置いて覚えようとするんじゃないわよ。明日は葵ちゃんも休みだし我慢しなさい』

『『はい』』


と、椿も一緒に怒られ、今日を待っていたというわけだ。

しかし、不思議なものだ。

人形に視線を向けるが、今は何もない。

だが、少し目に血液を集めるような感覚で集中すると、淡い緑色が見えてくる。

これが魔力かと思っていると……。


「なに? 魔力感知を発動しているの?」


セージが普通に声をかけてきた。


「ああ。って、使っているのわかるのか?」

「ええ。目に魔力が集まっているのがわかるわ。そっちはわかる? 私も使っているんだけど」

「え、そうなのか?」


俺はセージを改めて見るが、全身淡い緑色の光を放っているので、目に魔力があるとかはちょっとわかりずらい。


「調整してみるといいわ。活性している魔力、つまり魔術行使をしているところと平時の魔力の濃淡分け。わかる?」

「濃淡っていうと、薄くとか濃くとかか?」

「そうそう、魔力感知を切るから、平時の状態を確認して薄くするように意識してみて」

「わかった」


そういわれて俺はセージを改めてみて、まぶしいから少し光量を落とし薄くする感じにと考えるとそのようになった。

便利だなおいと思っていると……。


「その顔だとうまくいったみたいね。じゃ、それを覚えて魔力の動きを見ていてね」

「ああ」


そう返事をすると、セージの魔力は目に集まっているのが確認できる。

なるほど、この場合動いている魔力を明るくしたらいいのか。

そう考えながら見ていると濃淡の調整ができるようになった。


「……できた」

「それはよかったわね」

「しかし、感情、意識を読み取っているということでしょうか?」

「というか、自分の体だしある程度意識して動かすことはできるでしょう」

「むう、確かにそうですね。つまり魔力というのは私たちがある程度制御ができる分類なのでしょうね」

「そうね、血流とか心拍数とか新陳代謝とかとは違う、動作に分類するものだと思うわ」


動作な。

そう言われると多少は納得できるのか?

目に見えない体の一部。

それが魔力と魔術ということか。

そんなことを考えていると……。


「おはよーございます!」


と、葵ちゃんが元気よく挨拶してドアを開ける音が聞こえた。

どうやらもうそんな時間らしい。


「おはよう」

「おはようございます」

「おはよ」

「さあ、魔術の習得頑張りましょう!」

「おー、元気だねー。おはよー」


ちなみにカカリアは、畑仕事で土をかぶって風呂に入っていた。

いまちょうど上がってきたようだ。


「じゃ、さっそく今日の予定といいたいけど。その前に、葵ちゃん。ご両親に畑の土採取の件は伝えてくれた?」

「はい。いつでもいいって言ってましたよ」

「そう。じゃあ、明日、明後日どちらか都合のいい日がないか聞いてくれるかしら?」

「わかりました。時間帯はどうしますか?」

「基本的には小野田さんたちの希望に合わせるけど、こちらの希望を言うのであれば9時10時かしらね?」

「わかりました。それでお話してきますね」


どうやら葵ちゃんの畑の土採取に関しては許可を貰えたようだ。

農法についてはどこまで聞いていいかわからないからな。

元々の知識が空っぽだし。


「よし、じゃあ改めて今後の予定に関してだけど、昨日から引き続き、魔術の習得ね。昨日全員魔力感知を習得したから新しい、魔術の習得をして貰うわ」

「わかった。それで新しい魔術は何を覚えるんだ?」

「特に決めてないっていうか、私とカカリアは一日で買ったスクロールは覚えたのよ」

「そういえばそんなこと言ってましたね。そんなに簡単なのですか?」

「それを調べるためでもあるのよ。私とカカリアが上手く行っただけなのか、それとも普通はもっと遅いのかって話」

「正直な話、僕はみんな早く覚えると思うけどね。だって、ほら、スクロールの説明ってアレだし」

「あはは……。あ、そういえば魔術書っていうのも買っているんですよね? それを使っての勉強とかは?」


そうだ、葵ちゃんの言う通り魔術に関する本を多少買ってきたはずだが、それは使わないのか?


「あれはどちらかというと、魔力や魔術は何かっていう説明なのよ。しかも憶測とかで証明がされているわけじゃない。指導書、教科書というより論文に近いのよね……」

「そうそう。まあ、それが主流らしいから思想とかは影響しているんだろうけど、そういうのは最後かなってやつ」

「まずは何も前提の知識がない状態で覚えてほしいということですね」

「そういうこと。まあ、習得に時間が掛かるようなら本を使ってみようとは思っているけどね。あ、場所については、向こうでやってもらうわ。万が一もあるしね」

「あっち?」


葵ちゃんは首を傾げていたが、俺と椿はピンと来ていた。


「あっちていうと、調査中の惑星か?」

「そ。ついでに拠点の確認もお願いね。データ上は問題ないけど確認は必要だから」

「もちろん僕たちもついていくよ。こっちで魔術の練習ってリスクもあるからね」

「え、そうなんですか?」

「そりゃ、炎の魔法とかあるからね。畑燃やしたくないし、山ってみんなの土地だし」

「あー、確かに」


葵ちゃんが納得したところで、俺たちは宇宙船に乗って、惑星に向かう。

向かうといっても、既に現地のポイントを打ち込んでいるから、一瞬でワープをしてしまうので……。


「あれ!? 宇宙空間の冒険は!?」


葵ちゃんはショックですと言わんばかりの驚き方をしている。

俺も気持ちは分かるので、首を横に振りながら……。


「科学技術の発展でワープが可能になったんだよ」

「旅の移動という情緒は……」

「科学の進歩の影響だな」

「むきゃー!?」


ちょっと壊れた葵ちゃんを宥めつつ、帰りは宇宙を見ていこうということで落ち着いて、まずは拠点の確認をすることになった。


「さて、落ち着いたところで、私は別行動で魔術に関する調べもの。今日の指導役はカカリアね。じゃあね」


そう言って、セージは離れて、俺たちはまず拠点の確認をしてくことになる。

模型の3DMAPを展開して……。


「ここは作っておいたワープ地点ですね。拠点の真ん中地下にある場所です」


椿がそう言って指を刺すと、そこには青い点が3つ浮かぶ、ちょっと離れた通路にセージと思しき青い点が移動している。


「こうやって常に拠点内の行動は監視できていますので、危険があればすぐに駆け付けられます」

「便利ですね~」

「これぐらいないと、魔物とかの対処大変だしね~」


カカリアの言う通りこれぐらいないと湧いて出てくる魔物対処は面倒だよな。

そこで思い出したが……。


「そういえばこの拠点作ってから、魔物の出現とかはないのか?」

「そういうのは無いねー。条件が分からないんだよね。そういうのも今後調べていかないとね」

「不思議ですが、人が住むといなくなるというのが定説のようですね。こちらの世界では」

「どういう理屈なんでしょう?」

「まあ、そういうのはカカリアの言う通り追々調べるしかないな。さて、さっそく拠点の確認をして、魔術の練習を始めよう」


ということで、俺たちは拠点の中の確認をしていく。

基本的にコンクリートを使った頑丈な作りで、火事などにも強い。

そして一角は日本の住居のように板張り、畳がある居間のような場所も存在してる。

模型通りに作られていると言っていい。

個人の部屋も十分だった。

あとは……。


「小物関係が無いですね」


そう、葵ちゃんの言う通り、家具などはそろっているがコップや皿、その他の細かい備品などはまだそろっていない。

というか、わざと入れていない状態だ。

何が必要なのかは実際使ってからだよなってことになっていた。


「それは魔術の習得練習後、そうですね午後にやりましょう」

「だね。今は拠点の確認ついでに練習場にもいって、さっさと魔術習得しよう」


ということで、拠点の内部の確認を終えた後は畑予定地をみて、次に練習用の広場へと足を運ぶ。


「えーと、拠点作りに協力しましたけど、こうして本当にできてるとびっくりです」

「うん。そうだよな」


俺もできるだろうとは思っていたがこうして実際拠点がビシッとできているのは驚きだ。

本当に宇宙人の技術すげーと思う。

ただ画面を操作しているだけだったしな。


「はいはい。呆けてないで魔術の練習するよ」

「そうですね。これが一応予定のスクロールです」


そう言って、机の上にひろげられたのは、ファイアボール、フレイムピラー、ウォーターボール、ウォーターピラーのモノだ。


「4つもですか」

「大丈夫かな?」


椿と葵ちゃんはその量に驚いているようだ。


「別に全部覚えなくてもいいだろう。できるかどうかって話だし、出来るやつから覚えてみればいいさ」

「うん。裕也の言う通り。でも、すぐに覚えられると思うよ」


カカリアのその発言はどこから来るのかはわからないが、とりあえずファイアボールのスクロールを広げて内容を確認してみると……。


ファイアーボール:炎の玉を浮かべて相手にぶるける魔術。

習得方法:炎を思い浮かべよ。球体を思い浮かべよ。それを浮かばせ目標にぶつけることを思い浮かべよ。さすれば発動する。声に出すと意識が集中しやすいだろう。


「「「……」」」


あまりの内容に俺たちは絶句するしかなかったのは言うまでもない。

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