レポート46:「魔力量と新しい道具を」

「魔力量と新しい道具を」



セージが即席で作った魔力計測器で俺たちの魔力量を調べた結果……。


裕也:3.1万

椿:1.2万

カカリア:1.5万

セージ:1.6万

葵:0.4万


以上の結果となった。

ゴブリンの魔石が100だったので、全員がおよそ100倍以上。

納得の結果なのか首をかしげるべきなのかはよくわからない。

この人数だと少ないのか多いのかわからない。


「ま、これは今後ソノウの町で調べて情報を集めましょう。それで人形の魔力なんだけど……」


そして次に俺たちに石を見せる結果になった日本人形たちの数字だが。


人形平均:20万


んー、こっちは驚きだ。

なんかインフレが進みすぎてないか?

単独でワープしているから納得するべきか?

というか、なんというか数字だけで言えば物凄い物がこの家にあったってことになる。


「これも経過を観察する必要があるわね。あとは、魔力の消費なんだけど、この魔力感知を使うと一回の発動で約100。持続時間は約10分ってところね」

「え? ゴブリンの魔石吹っ飛ぶじゃん」

「そうね。不慣れによる消費量なのか、これが普通なのかもさっぱり。だからそこらへんも調べるために魔術師ギルドにいっていくつか魔術を教えてもらうって魔道具とかも買ってこようと思ってるんだけど、どうかしら?」

「私はいいと思います。葵ちゃんはどうですか?」

「え? あ、うん。私もいいと思います」


葵ちゃんは自分がこういう話を聞かれるとは思ってなかったようで多少驚いているが賛成といってくれる。


「俺も賛成だけど、カカリアに覚えさせるって件はどうする?」

「ああ、それも並行で行いましょう。はい」


セージはそう言ってカカリアにスクロールを渡す。


「それが魔法を覚えるアイテムですか?」


そう言って葵ちゃんはまじまじとスクロールを見るが、カカリアがおっとという感じで背中に隠す。


「ダメだよ。葵は詳しいことが分かるまで魔力に関係するモノとは接触禁止だし」

「えーって、そういえばそう言ってたね。はい。我慢します。でも、今の状況を考えるとそこまで時間はかかりそうにないですね」

「多分ね。で、こっちに残る椿と葵ちゃんはこのままこの模型を使って家具とかの配置も決めておいて。ああ、自室部分は個人でやるから。物資に関してもまとめておいて」

「わかりました。頑張りましょう葵ちゃん」

「はい」


ということで、方針は決めたので、その日は解散して夜を迎える。



「あー、食べた食べた。そういえば、作った拠点って誰もいないけど大丈夫なの?」


カカリアは膨らんだお腹をなでながら思い出したようにそういう。

確かに、まだ家具とかを入れてないから作って放置状態だな。


「大丈夫よ。まずはバリアを展開してからその中に建物を作っているから」

「魔物とか湧いたりしてないよな?」


確かにバリアなら生物とかの侵入は防げるだろうが、魔物の出現に関してはいきなり現れたのだからいても不思議じゃない。


「その心配はあるから、ちゃんとさっきの魔力感知を使って確認しているわ」

「そういえば機材に魔力を付与したみたいなことを言っていましたよね? それはどうやって?」


あ、そういえばそんなこと言ってたな。

どういう風にやっているんだろう?


「別にそんなに難しいことじゃないわよ。魔力を視覚としてとらえられるようになったから、手で触れて流し込むって感じかしら? 多分人形に触れた時も同じように魔力が私たちの中に移動したと思っているわ」

「そういう感じでいいのか」

「ですが、人形が触れてというのであれば、この屋敷全体魔力に包まれていなければいけないのでは?」

「あ、そうだよね。なんで今の所人形だけなんだろう?」


だな。不思議な話だ。

今の所魔力が確認できるのは人形だけってことだしな。


「そこまでは分からないわよ。とりあえず人形が魔力を保持していて、それを触れた私たちも同じように魔力が宿った、それとも移った。としか今は言いようがないわ。これから調べて解明するしかないわ」

「確かにそうだな」


分からないことだらけなのは間違いない。

セージに聞けばなんでも答えがでるわけじゃないんだ。

そのために情報を集めに行く。

そう改めて確認して、俺たちは眠りにつく。



翌日俺たちは相変わらずさわやかな朝を迎えて、畑の手入れをした後、異世界へと向かう。

既に拠点はあるのだが、そこであることに気がついた。


「なあ、ソノウの町にまた行かなくちゃいけないのに、昨日出たばかりだろう? 違和感ないか?」

「あー、そういえばそんなこと言って出てたよね」

「別に忘れ物してたっていえばいいじゃない。ドスアンさんの宿でまた宿泊するわけじゃないし」

「そういうもんか?」

「そうよ。気にしすぎ」

「ま、別に悪いことするわけじゃないからいいのかな?」


そういうもんかと思い、俺たちは再びソノウの町に戻ってさっそく魔術師ギルドへと足を運ぶと……。


「あら、いらっしゃい」


そう言ってレイナさんが出迎えてくれる。

よかった、前回と同じ相手だと色々とやりやすい。


「今日はどうしたのかしら? コツでも聞きに来たのかしら?」

「いえ。魔力感知は私が無事に使えたから、ほかに安くて覚えやすい魔術はないかと思ってね。あとは、魔術に関する知識書みたいなものがあればと思って」

「へぇ、たった数日で。才能があるのね」

「そういうモノなの?」

「そうよ。まあ、分かりやすく書いてあるとはいえ、内容に関してふわふわしている感じだったでしょう? コツをつかむまで時間が掛かることが多いのよ」

「納得ね。で、言ったものはあるのかしら?」

「そうねちょっとまって……」


そう言ってレイナさんは奥に引っ込んでいき、俺たちだけがか残る。


「そういえば、外に人がいないな。前もそうだったよな?」

「うん。前も人がいなかったよね。なんでだろう?」

「人が混む時間帯じゃないんでしょ。冒険者ギルドだって朝を過ぎたら静かなものだし」

「まあ、そういわれるとそうか」

「でも、流石に人がいなさすぎじゃない? 冒険者ギルドは職員さんが何人かしたし」


カカリアの言う通り、あっちは静かではあったが人はいた。

だが、こちらはレイナさん以外誰もいないようだ。

そう思っていると……。


「魔術師ギルドは基本的に魔術を教えること、薬品、道具の販売が主だからね。仕事を常時提供している冒険者ギルドとは違ってそこまで人はいないのよっと」


レイナさんはそう言いながら持って来た荷物をテーブルに置く。


「それで商売が成り立つの?」

「別に一般相手だけじゃないからね。冒険者ギルドにも卸しているわよ。回復薬とか買ってない?」

「うん。買った。それって魔術師ギルドが製造なの?」

「半分正解。薬剤ギルドと共同ね。ほかにも魔道具の制作と販売とかもあるから、一般人相手の商売はむしろ少ないって感じね。一応窓口を作っているだけ」

「一応か、魔術を使える人ってやっぱりそんなにいないのか?」

「一般魔術は使える人は多いけど、攻撃に仕えるような魔術まではない人が多いわね。そういう一般向けのレクチャーもやっていることはやっているわね。と、そういう話はいいとしてご希望の物を色々選んできたわよ」


そういってテーブルに置かれた物の説明を始める。

魔術に関しては水をぶつけるウォーターボール、そして炎をぶつけるファイアーボール、ちょっと上のフレイムピラー、ウォーターピラー。

薬品については解毒薬とか回復薬。これは冒険者ギルドに会ったものと同じで価格も同じだ。

これは販売価格統一のルールでもあるんだろう。

そして、魔道具。これはこの前手に入れた魔石を利用した道具で、2つでランプと水生成器だ。

魔石を入れることで稼働するようだ。

まあ用途はそのままなので割愛。

そして、最後は魔術の説明が乗っている本。

魔術入門と書いてある本がなぜか数種類あるが、著者によって書き方が違うので多数の本を読んで理解する方がいいという話だった。


「で、これは全部で幾らなのかしら?」

「そうね~。普通の価格なら大金貨2枚金貨3枚ってところね」


このテーブルの上だけで23万円相当か。

物凄い価格だな。

どういう割合かはわからないが、ランプが数万単位だったら笑うしかない。


「でも、あなたたちからは面白い話を聞いたし、値引きして大金貨2枚でどう?」


あっさりと3万円値引いてきた。

ああ、そうか、こっちの世界は購入には交渉ありきってやつなのか。


「もう少し。経過報告をしてもいいわ」

「トラップのことかしら?」

「他にも不帰の森に戻るつもりだし」

「ふーん。なら、大金貨1枚と金貨9枚」

「わかったわ。それでお願い」


こうして、俺たちは目的の物を仕入れて家に戻るのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る