レポート45:「魔力感知について」

「魔力感知について」



不帰の森の中での拠点づくりは宇宙船で入力すればオートでやってもらえるので、その間に俺たちはもう一つのことに取り組むことになった。


「さて、建設はあと1時間ほどでできるからその間に、魔力感知のことを説明しましょうか」

「魔力感知?」


セージの宣言に理解が追い付いていない葵ちゃんが首を傾げいてる。

ああ、そういえば異世界のソノウ町で魔力関連の情報を集めているって話はまだしてなかったな。

なので、葵ちゃんにこれまでの経緯を簡単に説明する。


「はぁ、惑星調査っていうと岩と土だけの生物が死に絶えたってイメージでしたけど、そういえば戦闘訓練とかしたし人がいても不思議じゃないですよね。でも、映像の町ってどこの中世ヨーロッパですか?」

「残念ながら映画のセットとかじゃない。ああいう文明だそうなんだ。劣っているとかそういう評価はしないが、残念ながら衛生観念とかは全然ない。ついでに魔法、いや向こうじゃ魔術とかスキルとかがあるみたいだな。ついでに魔物も」

「うん。どこのRPGだよって感じですけど、ステータスはないからまだいいのかな?」

「ん? ゲームみたいに数値化したいなら、私がシステム作ってあげてもいいわよ。魔力の計測もできるし」

「セージさんすっげー。って、それはいいです。それで魔力感知を習得してあの人形というか、人形たちの秘密を調べようってことですね」

「はい。その通りです。これを解明しない限りは葵ちゃんは惑星調査にはいけないんですよ」

「え?」

「そりゃそうだよ。あっちの世界は魔力ってものがあちこちにあるんだから、葵ちゃんもあっちに行って何かが変わっても私たちじゃさっぱりわからないもん」

「ああ、そういう意味で私はいけないんですね」


こういう感じで、葵ちゃんに説明が済んだところで、魔力感知についてセージに説明してもらうことになった。


「じゃ、改めて魔力感知という技能についてだけど、習得に関しては私が昨日から半日で何とかなったから、多分スクロールを読めば全員習得はできると思う。まあ、それは個々の才能によるとは思うけどね。それで、実際何がどう変わるかっていうと、この魔力感知を使うと視覚が変わるのよ」

「視覚?」

「そう。魔力っていうものが視覚として見えるようになるの。具体的に言うと濃淡って感じかしら」


セージをそう言って、空中投影モニターを付ける。

そこにはなぜか俺たちの姿が映っている。

どこかの録画化と思ったが、これは……。


「これは、私の視界をリアルタイムで映像に映しているの」


なるほど、実況ってわけだ。

俺は試しに右手を挙げてみると、鏡と同じように動く。

タイムラグが出てくることもなく即座だ。

ネット回線っぽいのも圧倒的に上なんだろうな。

そんなことを考えているうちにセージの説明は続いていく。


「それで、今は魔力感知を使ってないから映像に変化はないわね。みんなも同じかしら?」


セージがそう確認を取ってくるので俺たちは頷いて肯定する。

今のところ、映像に変化はない。


「じゃ、今から魔力感知を使うわ」


そういってセージが目に力を入れてるような感じで目つきが鋭くなると、映っている映像に青い光が出てくる。

それも俺たちがまとっているような感じだ。


「おー、すごい。見える。この青い光が魔力ってやつ?」

「ですが、私たち全員同じようには見えませんね、どうにも薄かったり濃かったりするように見えるのは私だけですか?」

「いえ、私も椿さんと同じだと思います。裕也さんが濃くて、椿さんやカカリアが中間ぐらい、そして私が薄いかな?」

「ええ。私もそう見えます。裕也さんはどうですか?」

「俺もそう見える。セージ、これはどう考えているんだ?」

「確証はないけど、保有している魔力量だと思うわ。それで、この録画をちょっとつけてみましょう」


そういって、もう一個モニターが出てきて見てみると、そこには魔力らしき青い光が映らない俺たちの姿が映る。

間違いなく先ほどの俺たちだ。

右手を間抜けに上げている俺の様子があるが……。


「なんで、これは魔力が映ってないの?」

「これを記録した機械には魔力がないからね」

「魔力がない? しかしこの映像は先ほど同じものですよね?」


椿の言う通り、同じように空中投影モニターを使っているのだから、同じ機材かと思っていたんだが……。


「ああ、映しているシステムは同じだけど、記録媒体が違うのよ。えーと、裕也と葵ちゃんにわかりやすく言うと、同時にダビングしているってころかしら? 同じ映像を見ているパソコンでも魔力ありと魔力無しで分けているっていえばわかるかしら?」

「あー、なるほど。俺は分かった。葵ちゃんはどうだ?」

「なんとなくは……、動画配信を見ている機械が違うってことですよね?」

「その解釈でまちがいないわ。それで、見ての通り、魔力を介さないと映らないのよ青い光って。それで、人形を移してみたんだけど……」


次に人形の映像に切り替わると、俺たちと同じように個々の差はあれど人形すべてが青い光に包まれているのがわかる。


「うわ~。これ全部そうなんだ。ってちょっと待ってこれを触って見えたってことは、魔力って移るってことだよね?」

「そうだと思うわ。そこらへんはまだデータが少ないから何とも言えないけど。それで次が重要なんだけど。これわかる?」


セージはそういって、小箱を取り出してふたを開けると見覚えのある石が入っている。


「魔石だろ?」

「ええ、そうよ。これを先ほどと同じように魔力感知を使って魔力ありの媒体、魔力無しの媒体で記録したんだけど……」


そういって新しく映像が浮かび上がると、小箱の中に石が存在している映像と、小箱の中身が空の映像が映る。

石には俺たちと同じように青い光をより強くまとっているというか塊のようになっている。


「つまり、あの石は魔力が固形化したって感じなんだと思うわ。そしてこれ、魔力無効の粉をかけた時の映像だけど……」


魔石に魔力無効の粉をかけると、青い光を放っていた石は黒くなってしまうが、感覚的に30秒ぐらいすると再び魔力を放つようになる。


「多分、無効にするというよりも空気中に伝達することを阻害しているんだと思うわ。光が映らないから黒く見えているだけ」

「でも、青い光が出ているのに普通の石っぽくみえるのはなんで?」

「それはまだわかってないわ。ほかにも色々集めないとね。で、あとこの魔力の光を拡大すると……」


画面が青い光に向けてクローズアップする。

もう元の映像は何が何だかわからないぐらいまで拡大していくとあることに気が付く。


「粒粒が光っているんですか?」

「葵ちゃんの言う通り。この青い光って小さい粒が光っているの。サイズ的に1から2マイクロメートル。それで濃い、薄いの差はこの密度の問題ってわけ。私はそれを利用して、魔力を計測しようと思ったの」

「つまり、この粒粒を数えてってことか?」

「そう。パット見れば魔石の方が光が強いけど、それは魔力が集まっている場所が小さいだけ。裕也が持っている魔力をあの石に集めればもっと光りそうだと思わない?」

「いってることはわかるが、それはよくわからん。だから、数を数えるって方法になったんだろう?」

「その通り。すでに計測は終えているんだけど、問題があって、マイクロメートル換算で数えると数が膨大になるから、ある程度私の解釈で数字を変えているからそこらへんは納得してね。それでゴブリンの魔石だと大体100ってところね」

「100? ゴブリンで3桁って多くない?」


うん、俺もカカリアと同意見だ。

ゴブリンの魔石とか冒険者ギルドでの買取もパッとしないレベルだった。

それが3桁とかな。


「単位についてはドラク〇じゃなくて、F〇だと思って」

「「納得」」

「「?」」


セージの説明に俺とカカリアは即時納得。

椿と葵ちゃんは首をかしげている。

まあ、そういうモノだと思ってくれ。


「それでこの単位にした理由だけれど、この魔石を使って動く魔道具があるって話だから、単位を細かくしないと10が9になるより、100が98になったって方が分かりやすいのよ」


なるほど。

確かにその通りだ。

だから3桁表記か。


「まあ、これも今後の状況によって変わってくるから、今のところだと思って。それでこれをもとに、私たちのことも計測してみたんだけど……」


ということで、これから俺たちの戦闘力の……いや魔力量の発表が行われるのであった。


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