レポート39:「少しだけわかったこと」
「少しだけわかったこと」
人形と石の関係を説明した後、葵ちゃんに人形を一つ触っては石を確認していくことをしたのだが。
ある事実が分かった。
どうやら、特定の人形を触ったから見えるというわけではなく……。
「なんか、うっすら見えるような見えないような……」
という葵ちゃんの最初の発言から……。
「あ、透明な石がありますね」
途中は半透明の石があるのが確認できたとはっきり答え。
「見えます。はっきりと見えますし、今は触れます。不思議だー」
最後には俺たちと同じように石が見えるようになり触ることもできたようだ。
つまりこの結果からわかることは……。
「特定の人形を触ると見えるというわけじゃなく、人形を触るごとに石が認識できるようになっているって感じかしら?」
「葵ちゃんの感覚ではそうなりますね」
「もっと被験者がいるよね~」
「いや、そう簡単に増やせないぞ」
葵ちゃん一人雇用するのにも大変だったのだ。
もっと人を集めるとかそう簡単じゃないと思っていると……。
「別に全部話す必要はないでしょ。記憶を消してしまえばいいんだからバイトでもいいのよ。人形の移動とか言って」
「ああ、そういう手もあるか」
と、納得していると、葵ちゃんとカカリアからストップがかかった。
「いや、駄目ですよ。その石が見えるだけが変化じゃないかもしれないですし。ほら、あの……」
「ホラー映画とかの定番だよね。被験者が一人一人消えていくってやつ」
ありそうな話で嫌だ。
まあ、そういう可能性は捨てきれないし……。
「まずは葵ちゃんのおかげで分かったことがあるから、それを使って調べてみるってことで良いんじゃないか? 確かに2人の言っていることは分かるし」
「……そうね。まだ、悪意がない物とはわかっていないものね」
「つまり、それって僕たちが何かしらの心霊現象に合うってことかな?」
「それはそれでいやかな。あははは……」
まあ、これ以上犠牲者を増やさない話だったから、つまり俺たちは犠牲者になるという意味である。
とはいえ……。
「まあ、バイタルデータは常に取ってありますので異常があればすぐに駆けつけますから大丈夫ですよ」
そう、椿が言うように俺たちには超科学のサポートがついている。
オカルトが相手ならこっちはオーバースペックのサイエンスというわけだ。
……まあどこまで通じるかわからないけどな。
「神経に異常をきたすような相手でも大丈夫よ。心肺停止をする怪異でもナノマシンで蘇生するし、怪力とかの怪異の場合は私たちのスペックならやりあえるわ。屋内に閉じ込められたとかなら家ごと吹っ飛ばしてもいいし」
「えーと、その場合私は家を吹き飛ばしてしまいそうなんで、なんとか制限かけてもらえませんか? 幽霊の前に寝ぼけて家を壊す方が怖いんですけど……」
「いや、そのぐらいの調整はしているわよ。そうしないと宇宙船自分で蹴破って壊すとかあるし」
ああ、確かにそうだ。
俺も内心ほっとしたのは内緒だ。
「で、これからどうする? 今日はもう終わりにするか?」
時刻はすでに4時。
明日は平日だし葵ちゃんは学校がある。
「そうね。今日はもう終わりにしましょう。とりあえず、明日の筋肉痛は我慢して、体を慣らすためにも必要だから。まあ、ひどいようなら連絡して、カプセルに入れて治療するから30分お手軽よ」
「わかりました。でも、えーと、その人形の件で何か起こらないですよね?」
「それは何とも言えないわ。というか、何かあれば進展するし教えて頂戴。そういうの興味あるんでしょ?」
「まあ、それはそうですけど……」
見るのはいいけど実際心霊体験をしたいっていう人は動画サイトを作ってる人達ぐらいだろう。
いや、でもオカルトサークルに入りたいとか言ってるしな。
そういうレベルなんだろうか?
「大丈夫だって。何かあればさっき椿が言ったようにわかるしさ。僕が助けに行くよ。ほら、力は知ってるでしょ?」
「そうだね。というか、私もスーパーパワーあるから一人でとっちめてやるか」
「うんうん。その意気!」
なんというか、カカリアと葵ちゃんは気が合うのかきゃっきゃっと話している。
仲が悪いよりはましだけどな。
とまあ、こんな感じで、葵ちゃんは帰って俺たちはそのままお休むことは無く……。
「うーん。意外と監視ってつらいな」
「監視じゃないわよ。バイタルの確認」
「そうです。葵ちゃんは初めての我が家以外で人形に触れた人です。何かある可能性はありますから、バイタルは確認しておいた方がいいでしょう」
「でも、僕も裕也に同意見。モニターばかり見るのって退屈。ゲームしていい?」
そう、俺たちは葵ちゃんの安全を確認するために、深夜になっても起きていたのだ。
いつもなら寝ているのだが、初めての事例だからこうして様子を見ているわけだ。
だから……。
「ゲームしたらカカリアは監視してないでしょう? 意味ないじゃない」
「ぶー。でも退屈だよ。ローテーションにしない?」
「うーん。初日ですから我慢しましょう。まあ、ゲームみたいに集中するだけじゃなくてテレビを見ながらぐらいならいいと思いますが、どうでしょうか裕也さん?」
「流石にゲームはどうかと思うが、こうしてモニターを見るだけじゃ退屈なのも確かだしな。テレビ、動画サイトとか見るのは許可しよう」
「やったー!」
流石にゲームは許可できないが、テレビぐらいはいいだろう。
そうでもしないと寝てしまう。
しかし、バイタルに変化は訪れない。
もうすぐ丑の刻だ。
つまり深夜二時、草木も眠る時間帯で幽霊が出るといわれる時間だ。
「じゃ、心霊見よう!」
「なんで心霊よ」
「だって時間帯的にもちょうどいいじゃん」
「まあ、調べているのはオカルトですから、そういうのはいいんでしょうか?」
「いいじゃないか? こういうのってそういう時に集まるっていうしな」
ということで、全員でなぜか動画サイトで心霊系を扱っている動画を見ることにする。
とりあえず、海外のを含めた心霊動画を集めているところのを見る。
「うーん。なんというかほとんど気のせいとか解像度が悪すぎるとか聞き間違いレベルよね」
「ですね。私もそう見えます」
「まあ、そういうモノじゃない? でもさ、あの絶対に居たって感じのやつも不思議だよね。とはいえ、映像編集したかもしれないけど」
「それはさすがにわからないからな。とはいえ、こういうのを俺たちもやってみればいいわけだ」
うん、いうのは簡単だが実際にその場に行くのは本当に勇気がいるよな。
そんな感じで見ていると、心拍数を計測しているところもあった。
俺たちと同じようにバイタルモニターほどではないが、計測をしているということだ。
それで平常時と調査時の心拍数に違いを載せているのでどれだけ緊張しているのかがわかりやすくなっている。
そこであることを思い出した。
「そういえば、葵ちゃんが人形を触って石を見れるようになる前のバイタルとか調査はしているよな?」
「ん? ええ、それはもちろん。どこの何が変化しているのかちゃんと調べてるわよ」
「となるとやっぱり見てわかる変化はないってことか」
「そうね。露骨に違う点っていうのは見当たらないわ。見てみる?」
「いいのか? 女性のデータだろう?」
「いいわよ。何のための調査なのよ。セクハラに使うならもちろん制裁するから安心して。あ、もちろん葵ちゃんに見たっていうのもセクハラだからね」
「わかった。それなら問題ない」
下手すると俺が逮捕される案件だしな。
ということで、送られてきたデータを確認する。
身長体重、スリーサイズも前後で変化はなし。
意外と大きいのなと思った。
スポーティーかと思ってたらグラビアモデルだったか。
まあ、それでも椿やセージと比べるとまだまだと言えるのだから自分が考えた容姿がどれだけぶっ飛んでいるかわかるのと同時に、なるほど無為な欲情をしないわけだと納得した。
自分の理想が隣にいて他所に手を出すというのは、そうそうないだろう。
よく考えられているなと思う。
って、違う違う、人形を触れる前と後の違いがないか確認だ。
改めてしっかりと写真やデータを見るが、特に変化はない。
詳しい数字の意味は分からないけど、それでも動きがほぼないのはわかる。
身長や体重、もちろんスリーサイズにも変化はなし。
いや、これが変化したら驚きだよな。
「うん。わからん」
「そうよね」
心霊動画を見つつ、セージはそう返す。
「で、明日からどうする?」
「ん~。とりあえず、異世界に行って魔術を教えてくれるところがないか探してみるか」
「まじゅつぅ~?」
なんかすごく胡散臭そうにセージがこちらに振り返る。
「いや、普通に佐藤さんも使ってただろう。ほかの星の技術って」
「あれはちゃんと解明された技術で不可思議な力みたいなものを使っているわけじゃないって、そういうことか」
「そう。俺たちのところでは解明されてないけど、あの世界では魔術を使っているからある程度技術体系ができてるってことだ。魔石をつかった道具もあるらしいし」
「つまり、その技術を調べることで何かわかるかもしれないってことね」
「ああ。まあ、当然の話なんだが」
「当然の話だけど、私はすっかり抜け落ちてたわ。交渉用の物持って行って確認しましょう」
ということで、人形と石の関係を調べるために惑星の調査を進めるということで話がまとまった。
オカルトを調べるために異世界へっていうのがなかなかすごいなーと思いつつ、心霊動画をみて俺たちは過ごした。
ちなみに、葵ちゃんはもちろん俺たちにも何もオカルト現象が起こることはなかった。
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