レポート38:「宇宙とオカルトどっちもあるよ」

「宇宙とオカルトどっちもあるよ」



俺たちは居間で休憩をしつつ、葵ちゃんの訓練の評価をしていた。


「正直あそこまで動けるとは思いませんでした」

「だよねー。いきなり無拍子打ちとかし始めるとか思わなかったし」

「あはは、親戚のおじさんに護身術だって教えてもらってたのを思い出してやってみました。でも、全然通じなかったですよ」

「最初はかなり入ってたから悪い方法じゃないと思うぞ。ただ、慣れてしまったからな」

「そうね。あの技って武器とかをもって相手を一瞬で倒すものだし、何度も受けるものでもないんでしょ」

「確かに、私と葵ちゃんのスペックが同じであれば昏倒していたと思います。格上、体力が多い相手には多用しない方がいいでしょうね」

「もともと無拍子打ちって対人だし。私たちみたいな相手が例外だよ。というか漫画みたいな動きが本当にできるって面白いよね。僕も練習してみよーっと」


そんな感じで、葵ちゃんの動きに関してはおおむね評価が高い。

俺よりも動けていたしな。

とはいえ……。


「葵ちゃん。それで明日か今日の夜になるかはわからないけど、筋肉痛が襲ってくる可能性が高い。今までにない動きをしていたからな」

「あー、確かにあれだけ全力で動いたのも久々の気がします。全力鬼ごっこみたいな感じで」

「ああ。だから気を付けてくれ。一応その痛みを感じて手加減を覚えてもらうっていうのがある」

「あれだけ力があると自爆もありますからね。その加減を覚えてもらうためでもあります」

「でも、葵は明日学校でしょ? いかないってのはダメだし、その時は僕たちを呼んでね」

「わかりました。その時はお願いします」


葵ちゃんは素直に俺たちの言うことを聞いて、通信の仕方を覚える。

意識だけで起動できる内臓コンピューターって便利だよな。

ナノマシンを投与してそういうことができるようにしているらしい。

脳にチップをつけるよりもましかなと思う。

で、次が本題だ。

本当の意味で葵ちゃんを雇った理由だったりする。


「どうしましたか?」


俺たちの雰囲気が変わったことを感じ取ったのか首を傾げている。

俺は一息ついてから……。


「葵ちゃん。あの人形のことって覚えている?」


俺はそう言って床の間に飾られている人形に視線を向けると、葵ちゃんも同じように床の間に視線を移して。


「あ、廊下から覗いていた人形! あれって、実は裕也さんたちが監視用に作っていたロボットなんですね!」

「「「……」」」


そうだったらどれだけよかったかという空気が流れていく。

そしてその雰囲気も感じ取った葵ちゃんには困惑した表情になっていく。


「あれ? 違うんですか? じゃあ、あの人形はなんであんなところに……?」

「結論から言うと、あの人形を意図的にあっちの廊下に置いた覚えはない。つまりあの人形があの場所に存在していた理由は分かっていないんだ」

「え? それって……」

「今の所該当するのは心霊現象ってやつだね」


カカリアがとりあえず明るくいうが、葵ちゃんの引きつった顔で……。


「え、宇宙で惑星調査をしようって時にですか?」

「残念だけど事実よ。というかこういう惑星特有の力ってやつね」

「それが心霊現象ですか?」

「本当にそうだとは限らないけどね。ちなみにあの人形ってね、葵ちゃんと話している時、本来は惑星調査をフォローしていた宇宙船にあったのよ。調べものが合ってね」

「え? つまり宇宙の果てにあったはずの人形が私が家を訪れた時にこっちに移動してきたってことですか?」

「その通り。不思議でしょ?」

「えーと、不思議というかおかしくないですか?」


セージの言葉に対して葵ちゃんの返事はもっともな意見だ。


「気持ちは分かるが事実なんだ。あの人形に何かある可能性は高い」

「ん? あの人形意外に何かあるような言い方ですけど?」

「まだあの人形が原因だと判断できたわけではないので。この屋敷に何かあるという可能性もあります。この家はまだ全部の部屋の掃除を終えていませんので」

「あー、そういえばこの家を買って掃除は終わってないって言ってましたね。だからほかに原因が合ってもおかしくないってことか……。んー? ちょっと待ってください! この家ってやばいんですか!?」


葵ちゃんは慌てて立ち上がるが、それを俺たちが優しく諭す。


「いや、やばくはない。かれこれ俺は1年ぐらい住んでるけど何もないしな。椿たちもここに住み始めて2週間ないぐらいだが……」

「はい。特に身の危険を感じることはないですね」

「ええ。そうね。不可解なことが起きたのはこの人形が初めてよ」

「うん。今も普通に夜はぐっすり寝られるしね。っていうか葵ちゃんは昔からここに住んでるんだからこの家の噂とか聞いてないの?」

「あ、いえ。そういうのは聞いたことはないです。ごめんなさい」


失礼なことを言ったのを自覚したのか大人しく座って誤ってくる葵ちゃん。


「いやいや、謝る必要はないよ。俺も普通に驚く。というかあの時は驚いた。人形が宇宙を越えて我が家に戻ってくるとは思わなかったしな」

「ですよね。でも、なんで宇宙船にあのお人形を連れて行ってたんですか?」


ようやく俺が言いたかった所に来たな。


「実はな……」


ということで、俺たちが惑星調査で発見した見えない石が見えるようになったことを話した。


「うへ~。あんな怪物がいるんですね。そりゃ肉体強化とかしないと駄目なわけだ」


葵ちゃんはその過程でソードニードルリザードとの戦闘を見てちょっと青い顔をしている。

後日、魔物との戦闘訓練もいるだろうなと思いつつ、セージがテーブルにあの石が入った箱を置く。


「これが、人形を触ってないと認識できない石なんだけど。見えるかしら?」

「え? いえ、何にも見えないです」


やはり葵ちゃんには石は見えないようだ。


「じゃ、次はコレ」


するとさらにセージは石を追加する。

これはゴブリンの魔石だ。

これも人形を触ってないと見えないのかというのを確認したかったのだが……。


「見えません。本当にあるんですか?」


そう言って石がある箱に手を伸ばすが、それを避けるようにセージが箱を回収する。


「うかつに触らないの。こっちも調べている途中だから」

「あ、ごめんなさい」

「それで、この石を見る方法はあの人形を触ることかもしれないっていうのは分かっているの」

「かもですか?」

「宇宙船の映像見て」


セージはそういうなり宇宙船内の一室を映すとそこには家から回収してきてた人形がずらりと並んでいるのが見える。


「うわっ。これって……」

「この家に、あの人形をまとめておいている部屋があったんだ。最初は掃除のつもりだったんだが、掃除のあと俺しか見えなかった石がこの掃除の後見えるようになったんだよ」

「それでうかつに触らない方がいいという判断になりまして。まずはどの人形を触って見えるようになったのかを確かめないといけないんです」

「ああ、だからあの人形かもしれないってことですか」

「ええ。早速だけど協力してもらっていいかしら? 好きなんでしょう? ああいうの」

「あはは、興味はありますけど、実際目にすると……」


まあ、確かにしり込みして当然だ。

見るのはいいが実際の被害者になるのはいやだもんな。

安全なところから楽しみたいってやつだ。

だが、葵ちゃんは少し頬をパンっと張ってから。


「いえ、触ります。こういうことも私興味がありましたし。こういうオカルトも一緒にできるっていいことだと思います」

「おー、葵ちゃん凄いね。ま、お化け見えないか墓場にいったりしたもんね。ついでに心霊系の動画配信でもやる?」

「いや、それは俺たちの顔が世間に知られるし問題じゃないのか?」

「どうでしょう? そういう心霊を調べるのはそういうことが一番情報が集まりそうではありますけどね」

「そうね~。でも有名になるとそれはそれで面倒なことにもなるし、対策とかきっちり考えてやるべきね」

「あ、そういうのなら私もやってみたいです! 実際どうやってるのか気になるし」


葵ちゃんは本当にオカルト系好きなんだなーってわかる。

まあ、それよりも今は人形を触って石が見えるか確認だ。


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